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祭りの夜、聞こえた猫の声 命を救った子猫が大きく変えた、その後の人生

6/18(日) 10:00配信

sippo

 ホーヤネ、ホヤホヤホーヤネ……盆踊りの掛け声やお囃子が、少し開けた窓から聞こえてくる。2005年6月11日。金沢は年に一度の「金沢百万石まつり」でにぎわっていた。だが、証券マンの廣瀬章宏さん(当時40)は「祭りなんて気分じゃない」と家にこもっていた。

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 廣瀬さんは東京出身。3カ月前に金沢に赴任したばかりだった。その日は土曜で、仕事は休みだったが、疲れ果てていた。横になってウトウトしていると、祭り囃子に混じって、どこからか「ミャ~」という高い声が聞こえてきた。

「猫の声がしないか?」。起き上がって妻に声をかけた。

 だが、妻には「聞こえないわ、気のせいじゃないの」と言われた。

 マンションの3階から階下に降りて見回してみた。だが、何もいなかった。部屋に戻ってしばらくすると、再び「ミャ~」と、窓の外から聞こえてきた。外は雨が降り出している。

「やっぱり猫の声だ。行ってくる」

「あなた本当に疲れているんじゃない?」

 心配する妻の制止を振りきって、廣瀬さんは再び階下に降り、声の主を探した。そして植え込みの中を覗いて、はっと息をのんだ。

「いた、いたよ、ほらやっぱり!」

 そこには、生まれて間もない子猫が1匹、横たわっていた。濡れて瀕死の状態だった。野良猫が生み落としたのではなく、人の手で置かれたようだった。

 廣瀬さんは子猫をポケットに入れて部屋に戻り、タオルで拭いて必死に温めた。

「こいつ死んじゃうのかな……なんのために生まれてきたんだよぉ」

 寿司に付いていた小さな醤油さしにミルクを入れて吸わせ、猫を箱に入れて自分の布団の横に置いた。何日も寝る間も惜しんで世話をした。やがて猫はペースト状のフードを食べられるまでになった……。

 あの時の猫は、今年6月で12歳になった。6.8キロの立派なオス猫だ。名前は「ねこぺん」とちょっと変わっている。猫を保護した廣瀬さんの様々な思いが、そこに秘められている。

「生後1カ月くらいになるまで『ねこぺん』の写真はありません。転勤が多いので、最後まで面倒を見られないかもしれない。それなら責任を持って最後まで飼ってくれる人に委ねたいと思いました。うちにいるのは、元気になるまでの間だけ。写真を残すと、後でつらくなるので撮影せず、情がわかないように名前もつけず、『ねこちゃん』と呼んでいました」

 廣瀬さんはそれまで犬や猫を飼ったことがなかった。父も転勤族で社宅暮らしが長く、母も動物が苦手。「犬猫はだめ」と幼い頃から言われて育った。だが廣瀬さんは動物好きで、捨てられた犬や猫を拾ってしまう。すると、「元の場所に置いてくるまで、家に入れませんよ」と親に言われたという。飼育した経験があるのは、小さなミドリガメだけだった。

「“ねこちゃん”の成長とともに、僕の心も変化しました。世話をすることが生きがいになり、他の人に渡すことができなくなってしまったんです。かわいくて、かわいくて」

 廣瀬さん夫妻には、子どもがいなかったこともあり、子育てをしているように感じたのだという。正式に猫を家に迎えようと決め、名前を考えようとしたが、呼び続けていた「ねこちゃん」が、いつの間にか「ねこぺん」になっていた。猫もその呼び名に一番反応したため、そのまま名前にした。

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最終更新:6/18(日) 10:42
sippo

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