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離島の中学スポーツ事情 少子化進み多人数競技できず 五島・崎山中、伝統の野球部廃部へ

6/18(日) 11:19配信

長崎新聞

 離島と本土の中学校の大きな違いの一つに、団体スポーツの部活動がある。毎年、長崎県内各市町で中学校総合体育大会(中総体)が開かれるが、五島市では少子化の影響で運動部の数が減り、相手不在で実戦のないまま県大会へ出場したり、対戦できても1、2勝で優勝したりといった場合がほとんどだ。島に、やりたい競技を当たり前にできる環境はない。そんな中、市立崎山中の軟式野球部が来年度で廃部になると聞いた。取材すると、子どもたちを取り巻くさまざまな現状が見えてきた。

■50年で13分の1

 崎山中の生徒数は33人。最多だった1963(昭和38)年は421人だったので、約13分の1まで減ったことになる。今の運動部は四つ。球技は軟式野球と女子のソフトテニスだけだ。

 同校軟式野球部出身の村上富憲校長(59)は「昔は運動場が狭い上、バスケットボールやバレーボールも屋外で練習していた。打球が女子に当たって先生にこっぴどく怒られた」と懐かしむ。「私が校長になって部をつぶすことになるのは断腸の思いです」

 村上校長が中学1年時の71年にも廃部の危機に直面しことがあったが、その理由は生徒減少とは真逆で、他部との運動場使用の競合。存続への絶対条件だったという下五島中総体(現・市中総体)で初優勝を果たし、翌年も連覇するなどして長い歴史を刻んできた。

■小学校から続く

 だが、その後は少子化が進み、運動部数は減少。同校は、校区内の児童数の推移や児童、保護者アンケートなどを基に、どの部を廃部・存続するか検討を続けてきた。そして今年、来年夏をめどに軟式野球部を廃部し、代わりに以前廃部したバスケ部を、構成人数が少なくて済むため再び創部することが決まった。

 こうした部の改廃の影響を受けるのは当然、子どもたちだ。例えば崎山中1年の片山利久さん(12)は、小学3年でソフトボールを始めたが、児童減少でチームがつぶれ、5、6年はバスケ。そして中学入学後は軟式野球。来年は廃部のため、またバスケをやる。3年の道脇健太郎さん(15)は中学から軟式野球を始めたが、「正直、小学時代にしていたバスケを続けたかった」。でも最後は主将として軟式野球部を引っ張った。こうした状況は、島のあちこちである。

■ 地域への恩返し

 そんな逆境の中でも日々懸命に汗を流す生徒たちのため、卒業生も支援に動きだした。同校軟式野球部OBの中村康弘さん(65)が音頭を取り、寄付金募集や試合の応援を企画。遠征費などを助成して少しでも実戦を積んでもらうのが目的だ。先月の市中総体は惜敗したものの、球場には老若男女が詰め掛け「さっきゃま」と盛大な声援を送った。

 廃部まで残り1年。部員は3年が抜けると1、2年でぎりぎりの9人。一層厳しい環境になるが、チームが目指すのは来年の市中総体で40年ぶりに優勝し、有終の美を飾ること。2012年度には同校女子バレー部が市中総体を制した後、廃部になっている。

 軟式野球部を指揮する納富真司監督(38)は「やるからには勝たせてあげたい。けがに気をつけてあと1年間、支えてくれる地域に頑張る姿を見せて恩返ししたい」と意気込んでいる。

長崎新聞社

最終更新:6/18(日) 11:19
長崎新聞