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江戸の医書今に生かす 富山大民族薬物研究センター

6/18(日) 5:00配信

北日本新聞

 富山大和漢医薬学総合研究所民族薬物研究センター(所長・小松かつ子教授)は、救急医療の処置法を記した江戸時代の医書「広恵済急方(こうけいさいきゅうほう)」のデータベース化を進めている。治療に用いられた生薬や食品など300種類を紹介する。年内に公開する予定で、同センターは「現在の知見と比較して効果を科学的に検証し、植物性医薬品や新たな治療法の開発につなげたい」としている。 (文化部次長・近江龍一郎)

 古典籍(江戸時代末までに日本人によって書かれた書物)を利用した国文学研究資料館(東京)との共同研究の一環。富山大和漢医薬学総合研究所の「民族薬物データベース」に入れるため、2015年度から準備を進めている。国内外の研究者に公開し、研究に活用してもらうのが目的だ。

 「広恵済急方」は、急病やけがなど、応急処置の方法を症状別にまとめた庶民向けの医書。11代将軍・徳川家斉の命を受け、かかりつけ医の多紀元悳(もとのり)が編さんし、1789年に全3巻が完成した。内容は医師の経験や伝承に基づく民間療法が中心。脳卒中や吐血、熱中症、切り傷、食中毒、出産に伴う体調不良など、身近な病気やけがを幅広く取り上げ、症状に応じて効果のある生薬や食品の使用法が記されている。

 例えば「心腹卒痛(胸と腹の急な痛み)」に効くのはサンショウの一種「朝倉山椒(さんしょう)」。使用法は「炒て酒に浸し、其酒を飲てよし(火であぶって酒に浸して飲むのが良い)」とある。ほかにも、打撲ならハコベラ、かっけなら黒豆、尿に血が混ざっていたなら益母草(やくもそう)など、当時、手に入れやすかったものが多い。

 富山大の研究所は「広恵済急方」に収録された約300種類の生薬、食品に関する記述を編集し直し、これらに適応する疾患と症状、使用法をまとめた。中には薬用ニンジンや熊胆(ゆうたん)(乾燥させたクマの胆のう)など現代でも薬効が知られているものもあるが、伏龍仁(ぶくりゅうじん)(焼いた粘土)といったなじみの薄い生薬も少なくない。小松所長は「この中から現代の病気に対して効果のある生薬が見つかるかもしれない。がん治療薬や機能性食品の開発に結びつけたい」と話している。

北日本新聞社

最終更新:6/18(日) 5:00
北日本新聞