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日本ツアーNO・1の飛ばし屋が挑んだ全米オープン

6/18(日) 10:18配信

日刊スポーツ

 6月15日から開幕した今季メジャー第2戦の全米オープン。日本からは松山英樹、池田勇太、谷原秀人、小平智、今平周吾、宮里優作の6人が出場している。

【写真】全米オープン日本人6選手/第2日ダイジェスト

 出場権をかけて争われた日本での最終予選、最後の1枚を勝ち取った宮里優作がプレーオフを8ホール目まで戦ったことで話題となった。この予選会で唯一アメリカ人として全米オープンの切符を手に入れたのは、日本ツアー参戦3年目のチャン・キムだ。

 キムは韓国生まれハワイ育ちの27歳。188センチ、105キロという恵まれた身体を活かした飛距離を武器にしている。昨年、日本ツアーでのドライバーの平均飛距離311.29ヤードは、歴代の最高記録だった。

●初優勝、そして全米オープン出場へ

 そして22日に行われた予選会の調子をそのままに、その週に行われたミズノオープンで日本ツアー初優勝を果たし、全英オープンの出場権も手に入れている。

 今季、2つのメジャーの出場権を手に入れ波に乗るキムに、優勝翌週の日本ゴルフツアー選手権で話を聞く機会があった。そのワイルドな風貌とは裏腹に、物腰は柔らかく非常に紳士的な選手である。そして大きな体格にもかかわらず、ボールをリフティングしてからクラブの裏面に乗せる高難度の技を行うことができる手先の器用さも持ち合わせている。

 日本ツアーに参戦したきっかけは、ハワイで師事していたデビッド・イシイの影響だそうだ。

 「もともと腰に持病を抱えており、昨年は腰痛でかなり苦しみました。そんな時に出会ったのが今のコーチ、アンディー・パットノウです」

●スイング改善でつかんだ+30ヤード

 キムのスイングはダスティン・ジョンソンを彷彿とさせる。スイング自体に力感があるわけではなく、ゆったり振っているように見える。しかし球筋は重く鋭い。ゆったりしたスイングから、ズドンと繰り出される直進性の高い球筋はジョンソンンそっくりだ。

 飛距離も日本ツアーでは群を抜いており、時には同伴の日本人選手を30ヤード以上もオーバードライブすることがある。ウッドはドライバーとスプーンのみで、その下の番手に2番アイアンを入れるが、この2番アイアンで280ヤード近いキャリーを稼ぐ。

 この飛距離を武器にメジャーの出場権を手にしたキムだが、昨年まではまったく違ったスイングだったという。

 「今のコーチのパットノウとはPGAの下部ツアーに参戦しているアンドリュー・ユーを介して知り合いました。彼と出会う前は体重移動に重点を置いたスイングでした」

 体格を生かす上でもそれが最適なスイングだと思っていたという。

 「でも飛距離は出るが、インパクトが安定せずプルフック(チーピン)も頻繁に出ていました。ツアーで安定的な成績を残すためには不向きだと気付きました」

 そこでパットノウと取り組んだのが体重移動ではなく、回転を意識したスイングだった。

●コーチとの取り組み

 「最初に会った頃、彼は大きく体重移動をしてボールを強く打つことに重点を置いたスイングをしていた」

 こう語るのはキムのスイング改造を手掛け、今シーズンもキムのコーチング手掛けているパットウだ。

 「ボールを必要以上に強く打っていたのでスピン量が安定せず、結果フックボールが出てしまうことに悩んでいた」

 そこでパットノウが行ったのが上半身や腕の動きを極力制御して、下半身の回転を増やすスイング改造だ。

 「もともとは飛距離を重視したスイングだったが、タイミングとリズムを一定にしてより正確性を重視するスイングを目指した。だから今キムは、ラウンドで100%の力量でスイングすることはない。常に80%の力で振ることを心掛けている。結果、体に負担の少なく最後まで振り切れるようなスイングを手に入れることができた」

 自身初めての海外メジャーとなった今回の全米オープン。PGAツアーのトッププロにも引けをとらない飛距離を生かして初日のパー5では2つのバーディを奪ったが、2日目「76」とスコアを崩して予選落ちとなった。

 スポットで海外メジャーに参戦する日本人選手と同じように、キムもまた日本ツアーとは違ったフィールドに苦戦し困惑しただろう。しかし良いコーチに出会い、体への不安がなくなった今、キャリアの中でも自身が感じたことのない急成長と手応えを感じているはずだ。キムにとって海外メジャー2戦目となる全英オープンにも注目したい。

 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

最終更新:6/18(日) 11:00
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