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日本企業、タイへの投資再注目 ハイテク産業誘致など「EEC」構想に参加

6/20(火) 8:15配信

SankeiBiz

 タイに日本企業の注目が再び集まっている。「タイ投資シンポジウム」が7日に都内で開催され、メーカーや大手商社、サービス関連の約1000人が、タイのソムキット副首相(経済担当)らのハイテクによる新産業開発「東部経済回廊(EEC)」構想に熱心に耳を傾けた。ここ数年の経済停滞などで新規投資意欲は薄れていたが、新政策への関心は高い。タイ政府は新政策を起爆剤とし、経済停滞で先進国入りできない「中進国のわな」を脱したい考え。実現には東部に集積する日本企業の協力が欠かせないと期待を寄せるが、日本企業はタイ政権の本気度と実行力をうかがっている。

 ◆今後5年で4.8兆円

 タイ政府が今年に入り最優先と打ち出したEEC構想は、首都バンコク東部のチャチュンサオとチョンブリ、ラヨンの3県に今後5年間、官民合計で約4兆8000億円を投じ、ハイテク産業の誘致やインフラ整備を通じて同地域を次世代ハブに育成する構想だ。既にトヨタ自動車や三菱自動車、ブリヂストン、いすゞ自動車なども進出する。

 インフラ整備ではラヨン県の軍民共用のウタパオ国際空港を拡張し、バンコク北のドンムアン空港とバンコク南のスワンナプーム国際空港とを高速鉄道などで結び、利便性を高め、東部近郊のレムチャバン港の拡張などでアジアや海外向けの玄関口に育てる狙いがある。

 ソムキット副首相は「ハイテクへの投資はタイ東部に進出する日本企業のためでもある」とアピール。タイの産業高度化を「日本の投資家と手を携えて作り上げたい」と期待感を示した。これに応えて7日、世耕弘成経済産業相もタイのウッタマ工業相と同地域への日本企業進出を後押しする覚書を結んだ。

 産業高度化転換に向け税制優遇も打ち出す。対象産業には農業・バイオエコノミー、次世代自動車・部品、電子、ロボット、航空機、メディカルなどを挙げ、「最長15年の法人税の免除」や「法人税免除後、5年の法人税の50%減免」といった大盤振る舞いも表明した。

 ◆EV実証試験も

 日本貿易振興機構(ジェトロ)のバンコク事務所などが今月実施した進出日系企業への緊急アンケートでは回答28社のうち24社がEECに進出済み。この拠点を広域での戦略拠点とする企業が15社、今後EEC内で投資拡大を予定する企業数も10社に上った。ジェトロの三又裕生バンコク事務所長は「裾野産業の集積もあり、インフラに加え、日本でやりにくい電気自動車(EV)の実証試験など商機はある」と話す。

 実際に動き出す企業もある。タイのロジャナ工業団地の運営に参画する新日鉄住金物産は現在EEC内の2工業団地に加え、2つを造成中。さらに新たな土地取得も検討中と鼻息は荒い。「日本企業の打診に加え、米国の関税障壁を回避したい中国企業の実需もあり、工業団地需要は堅調だ」(林邦亮・インフラ事業推進部長)と企業進出の受け皿づくりに余念がない。

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 ■実効性担保する公約実現が鍵

 日立製作所もスマートシティ建設などに参画し「タイの新たな産業高度化にイノベーションパートナーとして協力したい」(田辺靖雄執行役専務)と歓迎する。

 産業高度化を先取りするのはブリヂストンだ。昨年12月に初の航空機用タイヤの新工場をタイに建設すると発表した。小型電気自動車(EV)開発ベンチャーのFOMM(神奈川県川崎市)も生産販売を計画する。

 タイの危機感の背景にはタイ高官も公言するように、経済成長が足踏みしたままで先進国入りできない「中進国のわな」に陥っているとの認識がある。積極的な外資誘致策で東南アジア諸国連合(ASEAN)随一の工業大国となり、2011年11月に日系企業450社が被災したバンコク周辺の大規模な洪水被害後もその優位性が揺らがず、企業進出数も約5000社に上った。

 だが、ここ数年は人件費の高騰による投資減退や経済鈍化、クーデターによる政権交代も重なり競争力が低下。1人当たり国内総生産(GDP)は5899ドルと、中国にも抜かれた。このまま成長鈍化が続けば、先進国入りは遠ざかる一方だ。

 この足踏み感から脱するには、直接投資残高で約36%と圧倒的な存在感のある日本企業の協力なくしては達成できないというのがタイの本音ともいえる。

 タイ国トヨタ自動車の岡山豊シニアエグゼクティブアドバイザーは、最大の課題は「優秀な高度人材をどこまで確保できるかに尽きる」と指摘する。人づくりは一朝一夕にはいかず、高度人材の採用をめぐる争奪戦も予想される。他にも物流分野の外資規制撤廃や手続きの透明性を求める声もあり、日本企業は実効性を担保するタイ政府の力強い公約を見守っている。(上原すみ子)

最終更新:6/20(火) 8:15
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