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横浜F・マリノスの新司令塔、天野純…記念すべき初ゴールに込められた想いとは?

6/19(月) 11:48配信

GOAL

巡ってきたチャンスボールは利き足とは逆。だが、最高のリターンパスに迷いなく右足を振り抜くと、トリコロールの新司令塔は一目散にゴール裏に向かって走り出し歓喜を爆発させた。

横浜F・マリノスがFC東京とのアウェイゲームに臨んだ明治安田生命J1リーグ第15節。0-0で迎えた88分に試合を決めるゴールをマークしたのは、エリク・モンバエルツ監督から新たにトップ下を託された天野純だった。

相手の連係ミスから左サイドでスローインを得ると、ボールを受けた扇原貴宏がタッチライン際から中央へパス。天野はこれを左足で前方へ軽く流し、富樫敬真がヘディングで巧みに落としたところへ走り込んで右足を撃ち抜く。ボールは横っ飛びで防ごうとしたFC東京GK林彰洋の指先をかすめ、左ポストギリギリのコースを抜けてゴールネットを揺らす値千金の決勝弾となった。

「敬真のヘディングの落としがすごく良かったので、いい落としが来た瞬間に狙おうと思いました。利き足じゃないことも気にしていませんでした。チームは連勝していましたけど、僕のパフォーマンスはサポーターの方々にストレスを溜めていたと思うので、やっと恩返しができたというか……。(自分のパフォーマンスが悪くても)ずっと応援してくれていたので、気づいたらゴール裏へ行っていました」

両手を広げ、胸のエンブレムをアピールしながらゴール裏へ駆け寄る天野。サポーターへの感謝の気持ちが自然とゴール裏へと足を向けさせた。そしてチームが連勝する中で自らのプレーに納得していなかった自分自身の溜飲をも下げる一発は、彼にとって記念すべきリーグ戦初ゴールでもあった。

順天堂大から加入4年目。トップ下を本職とする左利きのチャンスメーカーだが、当時の横浜FMは中村俊輔(現ジュビロ磐田)や兵藤慎剛(現北海道コンサドーレ札幌)、藤本淳吾(現ガンバ大阪)らに加えて実績ある外国籍選手を補強するなど選手層が厚く、なかなか出場機会を得られない時期が続いた。順天堂大時代に“大学ナンバーワンレフティー”と称されていたことを考えれば、この期間に他クラブから移籍のオファーが届いていた可能性は高い。それでも彼は横浜FMに残り、臥薪嘗胆の思いで我慢と努力を続けた。

持ち前のキック精度を評価されて昨シーズン終盤からボランチに定着すると、天皇杯ではアルビレックス新潟との4回戦、ガンバ大阪との準々決勝で2試合連続ゴール。ベスト4進出の立役者となり、これがモンバエルツ監督から強い信頼を受ける契機となった。

今シーズンも開幕からボランチとして出場を続け、出場停止やケガ人の影響もあって第8節柏レイソル戦で初めてトップ下としてスタメン出場。この試合は敗れてしまったが、第15節清水エスパルス戦から再び司令塔のポジションを託されると、チームは一気に3連勝をマーク。FC東京戦の勝利で勝ち点を26に伸ばして5位浮上に成功し、首位まで勝ち点5差に迫った。

トップ下のポジションに入って、自らのゴールで導いた勝利。彼にとっては、それこそが大きな意味を持つ。

「昨シーズンの後半からずっとボランチをやっていますけど、やっぱり自分はトップ下の選手だと思っているので、今日はそれを示せたかな。(これまでは)チームの足を引っ張るくらいのパフォーマンスしかできなかったので、ようやく勝利に貢献できて良かったですけど、これに満足しないでもっともっと得点したい」

正確な左足キックと縦への推進力を武器とするだけに、ボランチでプレーしながらも彼が自分の適正として考えていたのは、やはりトップ下のポジションだった。

チームの中心に天野を置き始めた指揮官も殊勲の活躍を見せた背番号14を評して「プレーの流れを作れる非常に重要な選手。フィジカル面では豊富な運動量でチームに貢献していますし、戦術的な役割でも非常に高いものを出してくれている」と語り、「彼の得点を非常にうれしく思う」とリーグ戦初ゴールを手放しで喜んだ。

トリコロールの司令塔という役割を考えた時、やはりかつて10番を背負った中村俊輔はあまりに偉大な存在だ。天野自身も周りから「比較されることが増えてきた」という実感はあり、「僕自身も気にします」と認める。特にプレースキックの精度は気にするところ。FC東京戦後にも「今日もセットプレーのキックが何回か引っ掛かってしまった。そういう部分で違いを見せられれば、チームはもっと楽に勝てると思う。早く追い越せるように頑張ります」と反省しながらも前を向いた。

ようやく手にしつつあるトップ下のポジションは、まさに彼が積み上げてきた努力の上にある。司令塔としてはまだまだ歩み始めたばかり。とにかく伸びしろは大きい。FC東京との一戦は彼のトップ下としてのストーリーに新たな、そして確固たる1ページを刻んだゲームとなったはず。果たして背番号14は、これからトリコロール軍団の中でいかなる存在感を発揮していくのだろうか。

取材・文=青山知雄

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最終更新:6/19(月) 11:48
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