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神楽アイドル、突然の解散 運営とメンバー、方向性違い

6/19(月) 8:23配信

朝日新聞デジタル

 三作(みつくり)神楽(山口県周南市和田地区)を全国にPRしようと誕生したアイドルユニット「みつくりーむ」が、デビューを目前にして事実上「解散」した。運営側とメンバーとの方向性の違いが理由だ。斬新な発想が注目を集める中での突然の解散。何があったのか。

【写真】イベントに初出演した「みつくりーむ」(左からCHIHO、MEI、YUMIKA、SAHO)。デビューへの夢を語っていた=周南市

 5月3日、市内の永源山公園であった「つつじ祭り」。舞を披露した三作神楽保存会のメンバーと一緒に、「みつくりーむ」はステージに立った。

 今年は6年に1度の式年祭が11月に地元であり、23の舞が奉納される。「ぜひ見に来てください!」。来場者に呼びかける彼女たちの表情は屈託がなかった。

 「MEI」「CHIHO」「YUMIKA」「SAHO」。県内に住む中高生と大学生の4人で結成されたユニットは、普通のアイドルとは違う「特別な使命」を担っていた。

 1300年も続く国指定重要無形民俗文化財の担い手を増やし、新たな観光資源につなげる――。だが、その使命を果たす前に4人は去り、デビュー前のこのイベントが、最初で最後の舞台になった。

 「つつじ祭り」から1カ月が過ぎた8日、ユニットを運営する市内のNPO法人「まなびデザインラボ」が、デビューの見送りと活動の中止を発表。「神楽アイドル」という新ジャンルを開拓したい運営側と、既存のアイドル活動にあこがれる4人との間の方向性の違いが明らかになったことを理由にあげた。ラボの小松範之理事は取材に「方向性の違いを抱えたままデビューすると、お客さんや神楽保存会にも良くない影響を与える」と話した。

 1月にあったオーディション。審査員の前で歌やダンスを披露した参加者たちは、地元出身で伝承活動に加わっているMEIを除けば、神楽のことはほとんど知らなかった。AKB48のように華やかな舞台に立ちたい。純粋にそんな夢を描いていた。ただ運営側もそれは織り込み済み。いずれ神楽への理解を深めてもらえればと期待していた。

 普通のアイドルにあこがれる彼女たちにとって神楽の復興は重荷だった、と小松さんは明かす。「特別な使命」を帯びたアイドルとしてマスコミに取り上げられるたび、自分たちに果たせるのだろうかと、プレッシャーを募らせるようになった、という。

 神楽保存会にも様々な思いがあった。「わしらは神事をやりよるんじゃ」と、アイドルとの「連携」に難色を示す年配者もいた。

 「保存会とNPOとメンバーの思いが、それぞれに違っていた」と、伊藤禎亮(ていすけ)会長(72)は振り返る。「神楽のためにアイドルをどうやって打ち出そうとしているのかもよく分からなかった」

 「みつくりーむ」は、市が地域づくりのために創設した補助事業の第1弾として採択された、「神楽でまちづくりプロジェクト」の目玉企画だった。ラボは今後も様々な角度から神楽のPRを進めていくという。

 市地域づくり推進課の担当者は「デビューの見送りは残念だが、アイドルと運営側が協議した上での結論。これからの取り組みに注目し、しっかり支援していきたい」と話している。(三沢敦)

朝日新聞社

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