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<復興CSR>起業家精神 変革の鍵

6/19(月) 14:57配信

河北新報

◎トモノミクス 被災地と企業[47]第10部 展開(3)そだてる/人材

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 ある日の教材は偉人の伝記だった。自らに置き換え、決断の是非や理由を徹底的に議論する。自分ならどう考え、どう行動するか。正解はない。

 東日本大震災が発生した翌年の2012年4月、仙台市内に「グロービス経営大学院仙台校」が開校した。マーケティング、ファイナンス、人材マネジングなどを実践的に身に付け、経営学修士(MBA)を取得できる。

 「正解を教えてもらう場ではない。答えがない課題を生徒それぞれが互いに考え抜く『スポーツジム』のような鍛錬の場所だ」

 仙台校リーダーの梶屋拓朗さん(36)が説明する。

 総合人材サービス「NEO STAFF」(仙台市)の大矢敦男社長(41)は同校に4年近く在籍した。「なぜ会社を大きくしたいのか、何を大切にしたいのかを考え続け、見えてきた答えが『取引先、従業員、地域のために』だった」

 入校したのは創業8年目の12年。経済団体の勉強会に出席した際、講師を務めた大手企業の社長が言った「若手経営者が復興をけん引すべきだ」という激励が胸にあった。

 本業と雇用で被災地を支援したい。学びの日々を通し、「事業の拡大が、自分ができる復興への貢献だ」と強く認識していく。

 売上高は今、入校前の数倍に拡大した。仙台を拠点に東京や海外への進出を視野に入れる。大矢社長は「いつか仙台を代表する企業に成長し、復興の旗振り役を担いたい」と決意する。

 グロービスは震災前、東京、大阪、名古屋の3校体制だった。仙台進出のきっかけは11年秋、経済人らの議論の中で、堀義人学長(55)が耳にした「東北には起業家精神がない」という一言だった。

 堀学長は震災直後から復興支援策を模索していた。「起業家精神は育てられる」という思いが揺さぶられ、たんかを切った。

 「教育機関がないだけだ。12年中にグロービス仙台校を設立する」

 開校から5年。入校した東北の経営者や会社員らは約200人に上る。被災地でベンチャー事業を興し、地域を活性化させている企業も少なくない。

 堀学長は「経済のダイナミズムを起こす起業家マインドを持った人材の育成が仙台校の役割だ。卒業生たちが本業で地域に関わり、東北の創造と変革を進めてくれると信じている」と期待を込める。

 復興は長い時間軸で進む。被災地の経済が持続し、復興のエンジンであり続けるには、志ある企業人が必要だ。長期的視点で被災地を見つめる経営者の育成。それは被災地の願いであり、復興CSR(企業の社会的責任)の原点になる。

最終更新:6/19(月) 16:32
河北新報