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【上州この人】養蜂家・小野幸広さん(64) 「おいしかった」の言葉が支え

6/19(月) 7:55配信

産経新聞

 低カロリーで健康にもよいと国産蜂蜜の人気が高まっている。養蜂家として花を追い、利根・沼田地区を中心に利根川の河岸段丘と豊かな自然を利用して蜂蜜の採集に取り組んできた。その苦労やミツバチとの関わりについて考えを聞いた。 (橋爪一彦)

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 --養蜂の仕事とは

 「蜜の採取とポリネーション(蜂に果樹などの花の受粉をさせる)です。私は蜜の採取がほとんどで、今は最盛期のアカシアの花からアカシア蜜を集めている。すっきりとした上品な甘さが特徴で人気がある。他にリンゴやサクラ、トチなどから採れる百花(ひゃっか)蜜がある」

 --どんな場所で採取を

 「県内の河川敷などのアカシアが多い。今年は5月18日から前橋で始め、徐々に標高の高い北部に向かい、咲いていくアカシアを追って、みなかみ町や片品村へ巣箱を移動しながら7月まで蜜を採る。7カ所に分散し、それぞれに30個くらい設置します」

 --蜜はどうやって採るのですか

 「ミツバチが集めてきた蜜を巣の中で別の蜂が蓄え、夜間に羽で風を送り余分な水分を蒸発させる。4日後の早朝、ミツバチが蜜を集め始めて水分の多い蜜と混じらないうちに遠心分離器で蜜を搾る。すると、長期間保存のきく濃厚で完熟した蜜が。早朝に絞り、夜に巣箱を移動するから寝る時間がないほど忙しい。一斗缶で500本が今年の目標です」

 --蜂に刺されない?

 「滅多(めった)に刺さない。ただ蜂の性格は飼い主に似るって言われていて、うちの蜂は気が荒いみたい(笑)。だからアレルギーのある次男は完全武装して作業します」

 --何が一番難しいですか

 「巣箱には約4万匹の蜂が働く。その確保のため、多くの卵を産み続けるいい女王蜂を育てること。働き蜂の寿命は約1カ月だが、女王蜂は5年くらい生きる。ただ、年をとると卵を産む数が減るので、いい女王蜂の卵から育てた新たな女王と交換する。若い蜂が作るロイヤルゼリーを食べた幼虫だけが女王になれるのです」

 --心配なことは

 「自然界で蜂が激減しており、果樹や野菜の受粉のため屋外でも巣箱を設置しなければならない深刻な状況。理由のひとつとしてネオニコチノイド系殺虫剤の影響があると考えられる。欧州では、既に使用停止の試みが行われている。日本でも生態系を守るため規制を望みたい。また、8月から暑さに弱い蜂に夏越しさせるため涼しい山中に巣を置くが、熊やオオスズメバチに襲われることがある。電気柵で熊は撃退できるが、オオスズメバチは見回るしか打つ手がない」

 --他に楽しいことは

 「蜂蜜はほとんど直販しているが、『おいしかった!』の言葉かな。今は父親と私たち夫婦、そして息子2人の3代で働くが、いつの日か孫と一緒に働けたら最高」

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【プロフィル】小野幸広

 おの・ゆきひろ 昭和28年、沼田市生まれ。47年、利根農林高卒業後、沼田市農協に勤務。平成4年、家業の養蜂業を継ぎ、9年、花みつばち館を開業。小野養蜂場代表取締役、利根沼田養蜂協会長、県特産協会副会長。農林水産大臣賞、県知事賞、日本はちみつ養蜂協会長など受賞。趣味は読書、スポーツ鑑賞。家族は父母と妻、長男夫婦、次男夫婦、孫3人。

最終更新:6/19(月) 7:55
産経新聞