ここから本文です

“反日的”中国地方都市でも浸透する日本式 「ジャパンクオリティー」の街づくり進む

6/19(月) 8:04配信

SankeiBiz

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の中で順調に推移していると評価されているものに観光振興策がある。日本政府観光局によると2016年の訪日観光客は2400万人を超え、20年には4000万人を目標にしている。17年は5月上旬までに累計で1000万人を突破し、昨年より20日以上早い過去最速での達成となった。

 17年1~4月期の訪日旅行客(総計912万人)の国別トップは227万人の韓国(前年同期比30.8%増)で、中国は218万人(9.6%増)の2位となっている。中国人の韓国への旅行者は、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備などによる中韓関係の悪化に伴い、中国政府が韓国への団体旅行の販売を中止させたため、1~4月期の累計で前年同期比61万人減(35%減)となった。

 台湾への旅行客も両岸関係を反映し、1~4月期は前年同期比64万人減(74%減)と大幅に落ち込んでいる。日本への中国人客の伸び率をみると、韓国や台湾への旅行の代替地とはなっていないようだ。中国人の日本への旅行経験者が増えるにつれ、中国国内でも日本食レストランや温泉施設など日本式サービスを体験できる施設も目立つようになっている。

 筆者が仕事でたまに出かける東北の遼寧省の瀋陽市も同様だ。瀋陽市は遼寧省の省都ではあるが、同じ省内の大連市には在留邦人が6000人近くいるのに対し、700人とかなり少ない。その瀋陽市でも、日本食レストランが中心部で結構目につくようになった。日本の建設会社が建設しているビルも多く、瀋陽市政府が移転した渾南新区では、日本の住宅メーカーが開発する日本と同等の安全・快適性を実現する「ジャパンクオリティー」の街づくりも行われている。

 瀋陽は毎年9月18日に「九・一八事変」の記念式典が開催される都市で、1931年のこの日は満州事変の発端となった柳条湖事件の日である。同市内には「九・一八」歴史博物館があり、抗日戦争関連の展示が行われているが、反日を想起させる同市でも日本式のサービス施設が増えているのである。

 例えば温泉施設「大江戸」もその一つである。大江戸は瀋陽市内で既に2軒目を営業しており、かなり盛況のようだ。筆者は平日の午後3時過ぎに利用したが、結構客が入っていた。日本のこの手の温泉施設同様「露天風呂」「ジェット風呂」「ミストサウナ」など各種の風呂があり、温泉気分を堪能できる。

 風呂上がりには浴衣に着替えて、リラックスした雰囲気で日本食などの食事を楽しむことも可能だ。入浴料は大人68元(約1100円)で、通常のこの手の施設と比較するとかなり割高だが、日本式サービスを受けられ、家族で半日過ごすこともできることを考えると、リーズナブルな価格のようだ。

 商品購入目的で日本に旅行に来ていた中国人の一部は、商品をインターネット経由で販売する越境電子商取引(EC)の利用にシフトしている。日本式体験型サービスも中途半端なものだと、中国国内のサービスでも代替可能と思われてしまうケースもありそうだ。

 16年の訪日客の4分の1の640万人が中国人である。日中関係は韓国、台湾以上に政治の影響を受けやすい。4000万人達成のためには、この「移り気な」中国人旅行客をいかにして安定的に取り込んでいくかという難しい問題をクリアしなければならない。

                  ◇

【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年から遼寧中旭智業有限公司、旭リサーチセンター主幹研究員。59歳。大阪府出身。

最終更新:6/19(月) 8:04
SankeiBiz