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“一発勝負”中国から騒音が消えた日 若者の人生を左右するは国家的行事「高考」

6/20(火) 9:11配信

産経新聞

 中国全土で年に一度、一斉に実施され、若者の将来を“一発勝負”で決めてしまうといわれる大学入試「高考(ガオカオ)」が6月7、8日(一部では9日も)に行われた。超学歴社会の中国での高考をめぐっては、毎年世界中に話題を振りまくことでも知られている。高考の復活から40周年となった今年は約940万人が受験した。「人生を左右する」と評される試験だけに、もともと「受験生ファースト」な目線で行われるビッグイベントなのだが、今年はさらにエスカレートした環境整備が進められたようだ。国営通信の中国新聞社によれば、試験会場周辺は街ごと“マナーモード”を強制され、受験生を運ぶバスは、少々の交通違反なら処理は後回しで「とにかく試験会場に向かえ」との指令が出されたという。

 高考は、日本の大学入試センター試験に相当するともいわれるが、中国では日本のように各国公立大の2次試験のようなシステムはない。正真正銘の一発勝負であり、現代の「科挙」とも呼ばれるこの高考の結果で将来が決まるため、国を挙げて盛り上がる。日本のセンター試験の志願者数57万人と比べても、人口の違いはあってもその規模は破格で「世界最大規模の大学入試」なのだ。

 中国各地の試験会場では、会場周辺で交通規制が敷かれたり、試験に遅れそうな受験生をパトカーが運んだり、といった配慮もおなじみだ。試験会場には親や親戚、教師らが大挙詰めかけ、試験前には激励し、試験中は祈り、試験後はいたわるといった光景が繰り広げられる。ちなみに、同じような光景は韓国の大学受験でもみられる。

 中国新聞社が報じたところでは、試験会場となった重慶市の中学校には、縁起をかついでチャイナドレスを着た母親たちの集団も登場。わが子を応援し、周囲も盛り上げたという。

 日本でも入試は一大イベントだが、それはあくまでも受験生本人とその家族、学校や塾の関係者に限った話である。しかし、中国ではこの高考は国家的行事であり、政府が環境整備にも直接乗り出す。そして、今年はさらに「受験生ファースト」な取り組みが強化された。中国共産党機関紙、人民日報のウェブサイト「人民網」が中国新聞社の報道として伝えたところでは、高考の期間中は、試験会場があるエリアなどでは騒音を出さないよう、建設工事などが禁じられたという。

 北京では期間中、騒音を生む夜間工事を禁止。試験会場周辺の半径500メートル以内にいたっては、建設工事などが24時間禁止された。さらに、この“騒音禁止命令”を徹底させるための監視員まで投入する力の入れようだ。違反すれば摘発・処罰の対象となる。また、受験生の試験会場への移動についても特段の配慮がなされた。

 それは、受験生を乗せた専用バスが軽微な交通違反をした場合、その場では厳重注意にとどめ、まずは受験生を会場に送り届けろ、というもの。事件処理は「後からでいい」ということだ。交通事故を起こしても、事故処理は後回ししてとにかく会場へ、との措置のようで、まさに「受験生ファースト」な対応が義務づけられた。

 一方、高考をめぐっては、入試の不正、カンニングの話題も毎年注目を集める。中国新聞社などによると、各試験会場では、金属探知機も使った持ち物検査をはじめ、監視カメラの設置などのカンニング防止対策を講じている。不正の手段も、替え玉受験という古典的な手口から、超小型カメラとワイヤレスの通信機器を使って外部と連絡をとるハイテク・カンニングにいたるまで多岐にわたる。

 このため、取り締まる側も数年前から対策の練度を上げており、不正な通信などは遮断・妨害し、不審な電波を探知するためにドローンを投入したケースもああった。また、替え玉防止で本人確認を徹底させるため、虹彩(こうさい)認識システムを導入した地域もある。

 試験当日以外でも、準備段階から採点にいたるまで不正の芽を摘む対策がとられている。肝心要の試験問題については、作成段階から配送や管理、そして当日の試験実施、その後の採点まで、すべての段階で抜き打ち検査が実施されるのだ。また、カンニングが敢行された場合には、試験監督の担当者まで責任を追及される。

 刑法の改正で、カンニングは計画したり呼びかけたりしただけでも懲役刑が科されるようになったといい、今年は試験前の段階ですでに50人以上が摘発されたという。

 今後の人生が一回の試験で決まるだけに、受験生へのサポートは惜しまない中国。国を挙げた「親心」は感動に値するが、その分、カンニングなどの不正行為や、受験生の環境を乱す行為には厳しい態度で臨んでいるようだ。

最終更新:6/20(火) 9:11
産経新聞