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アップルからセンサーへ。TDKの大胆なビジネス転換は成功するか

6/19(月) 8:35配信

ニュースイッチ

M&Aに2000億円、電子部品メーカーの殻を破る

 TDKは2016―17年の間に総額2000億円を投じ、センサーメーカーなど5社の買収を実施した。主導したのは、月内に就任1年を迎える石黒成直社長だ。買収と同時に好調な高周波部品事業を米クアルコムへ売却するなど、取捨選択を進めて“石黒色”を強めている。センサーメーカーとして舵(かじ)を切る中、成長を確かなものにできるか。石黒社長の真価が問われる2年目となる。

 TDKは5月、センサーメーカーの米インベンセンスの買収を完了した。買収額は約1500億円で、08年の独エプコスに次ぐ大型買収となった。

 狙いは成長戦略に位置付けるセンサー事業の強化だ。これに伴い、事業のセグメントも刷新した。20年度には同事業の売上高で16年度比約5倍の2000億円を目指す意向だ。

<インベンセンス買収の評価>

 ただインベンセンスの買収については「少し高すぎたのでは」(外資系アナリスト)と懐疑的な意見もある。5月には得意先としていた米アップルからの受注が減り、競合他社が供給することになったと報道され、株価の下落が続いた。TDKの販売網を活用し中国のスマートフォンメーカーにも展開するものの、石黒社長は「17年度の業績への貢献は難しい」と懸念を示す。

 だがシナジーについては、速効性に乏しいことは織り込み済みだ。インベンセンスは売上高460億円程度のファブレスメーカーであり、その魅力は企業規模ではない。工場を持たないながら高い設計力を持ち、センサー製品を組み合わせたモジュールの開発などで大きく貢献するとみられている。

 その他の買収した企業についても設計力に強みがある企業が多く、将来に向けて研究開発など事業基盤を強化する思惑がうかがえる。

 直近のTDKの業績はクアルコムへの高周波事業の売却により、約1444億円の売却益を計上した。高周波部品は高い収益が見込める事業だが、業界関係者からは将来を見据えた経営判断として評価する声が聞かれる。

 ゴールドマン・サックス証券の高山大樹アナリストは「事業ポートフォリオを大胆に変えようとしている」と話す。

 17年度の売り上げ予想は16年度比5・8%減の1兆1100億円と、高周波事業の売却の反動は否めない。それでもTDKは高周波部品を捨て去り、センサーメーカーとして歩むことを決めた。20年度には売上高1兆5000億円を目指し、躍進を狙う。

 センサー事業に攻勢をかけるTDK。同事業は単品販売だけでなくソリューションとして展開できる側面があり、従来の電子部品のビジネスとは一線を画している。

 TDKは2016―17年に総額2000億円を投じ米インベンセンスなど5社の買収を行ったが、買収した企業の技術力や製品を組み合わせ、新たなソリューションを生み出そうとしている。また、センサー専門の組織を立ち上げるなど企業統治の面でも体制を整えつつある。

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最終更新:6/19(月) 8:35
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