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患者の状態踏まえた肺がん手術 進行度や細胞の種類で方針決定

6/19(月) 10:35配信

山陽新聞デジタル

 肺がんの手術について、岡山済生会総合病院(岡山市)の片岡正文診療部長呼吸器病センター長に寄稿してもらった。

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 他の多くの悪性腫瘍と同じように、肺がんについても診療ガイドラインが日本肺癌学会により策定されています。肺がんの治療の中心は手術と放射線治療と化学療法の三つで、個々の患者さんにどの治療を選択し、組み合わせていくのかをこのガイドラインに従って考えていきます。

 方針を決める上で重要なのが、がん細胞の種類と進行度です。最近ではがん細胞の遺伝子情報も大きな要素となっています。肺がんのうち小細胞肺がんはその特徴から化学療法が優先されますので、本稿では手術が重要な役割を果たす非小細胞肺がんについてお話しします。

 がんの進行度を示す基準は病期分類で0期からIV期に分けられています。このうち手術の適応となるのは通常0~IIIA期の一部です。IB期以上では手術の前後に化学療法や放射線治療を組み合わせる場合もあります。

 肺がんに対する標準手術は、病巣のある肺葉の切除と病巣に近いリンパ節の摘出です。それより切除範囲が広くなる場合を拡大手術、少ない場合を縮小手術といいます。

 縮小手術には、早期の場合に行う(1)積極的適応と、肺機能低下など患者さんの要因で行う(2)消極的適応があります。ガイドラインでは、2センチ以下で画像所見が適切であれば(1)、体力的に問題のある場合は(2)を考慮してもよいとしています。それぞれの患者さんの状態や希望を踏まえて治療の方針を考えていきます。

 入院中はクリニカルパスという標準的な計画表に沿って治療を行います。クリニカルパスには点滴やレントゲン、食事、リハビリテーションなどさまざまな計画が盛り込まれています。当院では肺切除を受けられる患者さんに対し切除の範囲や状態に合わせて、予定入院期間が4日、7日、9日となるA、B、Cの三つのコースを設けています。

 ほとんどの方はこの標準計画内で退院となりますが、経過が標準でない場合はその都度治療計画を変更していきます。クリニカルパスを用いることで、患者さんは回復過程の確認や心積もりができますし、私たちも治療方針をよりわかりやすく共有できるというメリットがあります。手術後は、順調な経過でもしばらくは創部の痛みや咳(せき)などの症状が続くこともあります。これらの症状は徐々に減少し多くの場合1カ月程度でほぼ安定した状態に回復していきます。切除範囲によっては以前よりやや息切れしやすくなるなどの症状が残る場合もあります。

 退院後1、2週の間に外来で、術後の状態のチェックと切除した肺がん組織の種類やリンパ節転移の有無など最終的な病理結果の説明を行い、その後の治療や検査の計画を立てます。再発を抑制するための補助化学療法が必要な場合は、術後4週から8週の間に開始します。その後は進行度にもよりますが最初は3カ月後、その後は半年から1年ごとに外来にて血液検査や、胸部レントゲン、CTなどの定期検診を手術後5、6年目まで行います。

 次回は肺がんに次いで呼吸器外科的治療の機会が多い、気胸と膿胸についてお話しする予定です。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)