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社説[性犯罪厳罰化]声を上げられる社会に

6/19(月) 7:30配信

沖縄タイムス

 性犯罪を厳罰化する改正刑法が成立した。

 明治時代に制定されて以来約110年ぶりとなる大改正に盛り込まれたのは、人間の尊厳に対する罪の重さである。

 改正の柱は、強姦(ごうかん)罪の名称を「強制性交等罪」に変え、法定刑の下限を懲役3年から5年に引き上げたことだ。被害者の告訴が起訴の条件となる「親告罪」規定や「加害者は男性、被害者は女性」といった性別規定も撤廃された。

 「魂の殺人」と言われながら現行の強姦罪は強盗罪の懲役5年以上より軽く、不均衡だとの指摘が以前からあった。心身ともに深い傷を負い、その影響が長期に及ぶことを考えれば当然の流れである。

 告訴がなくても加害者を起訴できる非親告罪化は、被害の潜在化を防ぐ狙いがある。実際、性犯罪被害の申告率は2割に満たず、周囲の目を気にして沈黙を強いられている人が多い。被害の潜在化は、被害の継続と新たな被害を生むことにもつながりかねない。

 今回の改正では男性の被害に加え、年少者の被害という実態も重く見ている。

 家庭内の性的虐待の加害者の多くは親など「監護者」の立場にある人だ。

 新設された「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」は、監護者が立場を利用して18歳未満の者に性的な行為をした場合、「暴行や脅迫」がなくても適用される。

 自ら訴えることが難しい子どもの被害を救い上げる確実な一歩としたい。

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 積み残された課題もある。

 監護者が加害者のケースと違い、強制性交等罪には暴行や脅迫の要件が残された。被害者が抵抗できないよう暴行や脅迫を受けた場合でなければ罪に問えないのである。

 突然の出来事に「恐怖で抵抗できなかった」という人も少なくないが、被害者は強く抵抗すべきという偏見がまだあるのだろうか。だとしたら被害者が泣き寝入りするケースはなくならない。 

 子どもへの性的虐待は、監護者と同じような力関係にある教師やスポーツ指導者にも起こりうることが指摘されている。

 被害を訴えることができない間に時効が成立してしまうなど、公訴時効の規定が残されたのも懸念材料だ。

 付則には施行3年後の見直しが盛り込まれており、要件緩和や対象拡大は次の大きな論点となる。

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 1世紀以上も変えられなかった刑法を動かしたのは、つらい体験を実名で語り、性暴力撲滅を訴えてきた被害者たちだ。

 同じ思いをする人を少しでも減らしたいと、訴え出やすい環境を整える活動を続けてきたのである。

 「被害者は悪くない。裁かれるのは加害者」という認識を社会全体で共有していくためにも、性暴力被害への理解が欠かせない。

 声を上げやすくする仕組みづくりには、ワンストップ支援センターの充実など被害者ケアも同時に進めていく必要がある。

最終更新:6/19(月) 7:30
沖縄タイムス