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大洗研被ばく また「慣れ」「甘さ」 専門家集団、教訓生かせず

6/20(火) 4:00配信

茨城新聞クロスアイ

日本原子力研究開発機構「大洗研究開発センター」(大洗町)の作業員被ばく事故は19日、現場にいた5人全員の内部被ばくが確定的となった。「原子力の専門家集団」を自負する機構だが、事故やトラブルのたびに指摘されてきた「安全への慣れ」「想定の甘さ」が今回も露呈。過去の教訓を生かせず、事故を繰り返す組織の姿が浮かび上がる。

「専門家でも、基礎知識を十分に持っていないのではないか」

19日夕方に県庁で機構の児玉敏雄理事長と面会した橋本昌知事は、専門家集団の対応力の低さを指摘。トラブル続きの組織に「一体どうなっているんだというのが県民の思いだ」と不満を隠さなかった。

機構は事故後、いったんは職員の肺から2万2千ベクレルのプルトニウムを計測したと発表した。しかし、その後、内部被ばく量は当初の値を大幅に下回る可能性が高いと判明。最初の検査は体表面に付いた放射性物質を測定したため被ばく量を過大評価した。

橋本知事は事故後の対応のずさんさも挙げ、「2万2千ベクレルが独り歩きして風評被害が起きている」といらだちをあらわにした。

児玉理事長はこの日、原因究明と合わせ、全力を挙げると強調したのが「水平展開」。再発防止策の中で機構が度々使う4文字。国へ同日提出した報告書にも盛り込んだ。

今回の事故は放射性物質が入る樹脂製の袋が破裂したため起きた。機構は今年1月の時点で、東海村の別の施設で放射性物質入りの袋がガスの発生によって膨れたことを把握していた。

機構はこの件を「組織内で水平展開した」と説明するが、実態は各拠点に事案の内容を送り付けるだけで具体的な指示はなかった。このため現場は、袋の破裂を「想定外」のまま作業を進めた。

事故後、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「プルトニウムに慣れすぎていたのでは。慣れが一番危ない」と苦言を呈した。

全く同じ内容の指摘は20年前にもあった。旧動力炉・核燃料開発事業団(現原子力機構)のアスファルト固化処理施設(東海村)での火災爆発事故だ。放射性物質が外部に漏れ、作業員37人が被ばくした。

国に対し、旧動燃は「過去の試験やトラブルで得た知識を訓練に反映しなかった」と報告。事故調査委員会は「安全への慣れが引き起こした事故」と意識改革を求めたが、体質が変わっていないことが今回の事故で裏付けられた。

橋本知事から「十分な体制ができないと周囲は納得しない」とくぎを刺された児玉理事長。面会後、報道陣の取材に「これまでの安全が、今日の安全を保障するものではないという意識改革が必要だ」と疲れた表情で語った。 (戸島大樹)

茨城新聞社