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米BLUのスマホを調達 ソフトバンクC&SがSIMフリースマホを取り扱う理由

6/20(火) 6:25配信

ITmedia Mobile

 「SoftBank SELECTION」などのスマートフォン用アクセサリーメーカーとしておなじみの、ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンクC&S)だが、実はSIMロックフリースマートフォンの流通にも大きな役割を果たしている。家電量販店やY!mobileショップなどで取り扱いのある一部の端末は、同社を経由して、店頭に並べられている。

【GRAND X LTEのスペック】

 ディストリビューターとして、ある意味裏方に近い存在だったソフトバンクC&Sだが、新たな取り組みにも着手している。その成果が、米メーカーBLUのスマートフォン「GRAND M」と「GRAND X LTE」だ。GRAND Mは6月16日に発売され、GRAND X LTEは6月30日に発売される。これら2機種は、ソフトバンクC&Sが総代理店としてローカライズなどを手掛けており、日本のユーザーの窓口の役割も担う。

 今、BLUの端末を日本に導入する狙いはどこにあるのか。また、この事業をどう育てていきたいのか。同社の事業開発統括部 MD部 課長代行の本間忠氏と、同部 戦略課の牧戸達哉氏に話を聞いた。

●SIMロックフリー端末の取り扱いを始めた理由

―― はじめに、一般のユーザーにはソフトバンクC&Sが何をやっている会社なのか、なじみがないと思います。ディストリビューションの事業について、解説していただけないでしょうか。

本間氏 (創業時の)ソフトバンクは、孫が始めたディストリビューションの会社です。ソフトウェア、ハードウェアの取り扱いだけでなく、最近ではSoftBank SELECTIONの商品を、量販店、EC、法人などに出しています。グループ会社でいうと、われわれソフトバンクは通信会社を持っています。そこと組み合わせて、新しいソリューションを、内外問わず世に提供していくことをしています。

―― SIMフリー端末に取り組み始めたきっかけを教えてください。

本間氏 流通業なので、市場のあるところには、いろいろなメーカーさんのものを出していくというのがミッションです。SIMフリーは、MM総研さんの調査で、2020年に570万台まで伸びるという話もあります。そうなると、規模は今の2倍、3倍です。そこに対し、流通としてビジネスをしていくのがミッションです。

 また、BLUのケースがそうですが、SIMフリーでは総代理店もやり始めました。これが何かというと、技適の取得のサポートやローカライズ、カスタマーサポート、安全性やフィールドテストなどの検証をこちらで行い、ワンストップで日本に端末を出せる体制になります。今後は、IoTに関しても、もっと加速していくと思っています。

―― SIMフリーとして取り扱っているのは、具体的に、どういったメーカーなのでしょうか。

本間氏 日本で流通しているASUSさん、FREETELさん、Motorolaさんなど、一部のメーカーを取り扱っています。われわれでやっているY!mobileのオンラインショップなどで販売していますが、Huaweiさんに関しては、強みである量販店とタッグを組み、市場拡大に取り組んできました。

 ちょうど先週、「P10 lite」が発売になりましたが、シェアではようやくASUSさんを抜き、1位になることができました。これはグループ会社に通信事業者がいる強みですが、Y!mobileの支援もあり、あれだけの売り上げになりました。量販店に行くと分かりますが、手で売っているのがY!mobileのスタッフですからね。

―― シェアや、他のディストリビューターと比べたときの強みを教えてください。

本間氏 MVNOを含めた実績はありませんが、Huaweiさんの比率が高く、弊社調べでは3割を超えています。家電量販店さんの扱いは、われわれだけになりますので。加えて、われわれとやることで、グループ会社のY!mobileショップにも、SIMフリー端末としてラインアップできます。

※シェアについて、データの提供元から削除要請があったため、データの出典名を削除しました(6/21 16:57)。

 強みは、先ほど申し上げたように、やはりグループ会社に通信事業者がいることで、これはほかのディストリビューターには絶対にない強みです。また、取引先とも強いパイプを持っています。店舗を回るエリア営業が全国にいて、それを専門部隊として持っているのは、われわれの大きな強みです。量販店さんとは、30年以上の付き合いがありますからね。ここに加えて、日本市場にワンストップで端末を持ってくることができる総代理店機能を強化しています。

●BLUのスマートフォンを選んだ理由

―― その総代理店機能ですが、実際にやってみて、いかがでしたか。

本間氏 実は今までもやっていて、(ウェアラブルの)MISFITがそうです。私自身がMISFITをやっていたわけではないので、比較はできませんが、技適を取ったり、ローカライズしたりするのは、やはり大変です。ローカライズについてはマニュアルもそうですし、ブランドサイトも全て弊社で制作しています。また、海外ではなかったことですが、APNの設定マニュアルも、全てこちらでやりました。

―― 確かに、日本のMVNOだと、SIMカードを挿すだけで自動設定というわけにはいかないですからね。総代理店として、BLUを選んだ理由を教えてください。

本間氏 伸びているSIMフリー市場に対し、ベンダーさんの数はたくさんあります。何かないかと探していたときに、米国は日本と似た市場だと気付きました。日本と同様、米国も9割ぐらいがSIMロック端末(キャリア端末)の市場です。日本もちょうど今、10%ぐらいというデータがあり、そこは似ています。その米国のSIMフリー市場でナンバー1だったのが、BLUでした。

 シェアでいうと、SIMフリーが大体1割ぐらいで、その中の35%ぐらいを持っています。これは2105年度のデータですが、2016年度もナンバー1です。日本ではニュースになっていませんが、欧州のバレンシアというサッカーチームのスポンサーにもなっています。

 BLUを調べていくと、商品にこだわっていて、デザイン、品質やトータル的なコストパフォーマンスの高さが特徴になっていました。例えば、背面も1万円以下だとプラスチックのものが多いのですが、これはメタルです。バッテリーの安全性も、うちの基準をクリアできていました。これなら日本でもいけると思い、導入した経緯があります。

 われわれも、通信会社がグループにいるので、これを導入するにあたり、安全性のテストは慎重にやってきました。また、フィールドテストもやり、新幹線や高速道路での移動中に使えるかも全て検査し、合格点を取れました。

―― なるほど。確かに、1万円以下のスマートフォンというと、品質や質感は諦めることが多い気がします。ただ、BLUといえば、幅広いラインアップを持っているメーカーで、CESなどの展示会でも常連です。なぜ、この2機種だったのでしょうか。

本間氏 米国で強い理由は、やはり価格です。1万円前後の価格帯がBLUさんの中でも強みになっています。それをまず日本に投入したかったというのが、2機種を選んだ理由です。ただ、SIMフリー市場は、これからまだ広がっていきます。今はアーリーアダプターで詳しい人が使っている中で、月額料金を抑えたいということで徐々に一般層の方も移ってきています。

 また、Y!mobileもそうですが、料金プランが多様化していて、フィーチャーフォンを使っていた方がスマートフォンに乗り換えたり、料金が安いので2台持ち、3台持ちという方も出てきたりしています。ここに入ってくるユーザー層を広げたいという意味もあり、2機種を持ってきました。あとは、おじいちゃん、おばあちゃんへのプレゼントですね。1万円ぐらいだったら、「最悪、渡したあとに使わなくなってもいい」と考えられるので、そういった需要も取り込めます。

―― 7980円のGRAND Mは、そういった通話オンリーの需要も踏まえているということですね。

本間氏 そうですね。

―― Y!mobileショップで取り扱うことも、考えられているのでしょうか。

本間氏 今、調整しているところです。ただし、GRAND Mについては、Amazon専売になっています。

―― Y!mobileのキャリア端末に採用されるような働きかけをしていくということもありますか。

本間氏 そこもミッションだとは思っていますが、一方でオープン端末はいち早く世に出せることもメリットです。キャリアだと検証が大変で、キャリアグレードの仕様も求められます。その辺はY!mobileショップなどでテストマーケティングをしながら、不具合がなければ、うちからご紹介することはあると思います。

―― GRAND Mについては、なぜAmazon専売なのでしょうか。

本間氏 3Gモデルを一般に広く出すというところに、抵抗がありました。SIMカードも、MVNOの中には3Gに対応していないところがあります。われわれもそこは間違えないように、Webなどでは必ず、「3Gに対応したSIMカードをお使いください」と訴求するようにしています。

●BLUの第2、3弾の端末も検討している

―― 順番が逆になってしまいましたが、あらためて、GRAMD MとGRAND X LTE、それぞれの特徴を教えてください。

本間氏 先ほど申し上げたデザインのところが1つ。どちらも、裏面がメタルになっているのが、大きな特徴です。面白いのが、自撮り用のインカメラにフラッシュがついているところで、設定の中にも美顔モードがあり、美白やシワ取りを選べます。そういった遊び心があるところも、特徴ですね。

―― 日本に導入するにあたり、周波数対応はどうされたのでしょうか。

本間氏 周波数に関しては、ドコモとソフトバンクのバンドを入れ込んでいます。これは、こちらから要望を出させていただきました。

牧戸氏 GRAND Xという端末は米国にもありますが、もともとは、LTEに対応していませんでした。

本間氏 海外では、GRANDシリーズは、全て3Gなんです。

―― なるほど。ただ、3Gオンリーだった端末を、LTEに対応させるのはさすがに大変だったのではないでしょうか。同じボディーなんですよね?

本間氏 コストが上がってしまうので、そこ(ボディー)は共通にしています。ただ、若干は変わっています。

―― そのカスタマイズを日本市場のためにするという判断は、なかなかできないと思います。

本間氏 今回は、その関係を築けたのが大きいですね。BLUの端末は第2弾、第3弾も考えています。われわれとしてもあれが初めてなので、市場のニーズを踏まえながら、どんなものがいいのかは検討していきます。先ほど申し上げたように、BLUさんはアイテム数が多く、レンジも広い。低価格なものだけでなく、ミドルレンジなども検討していきたいところです。

 GRAND MとGRAND X LTEは初めてなので、受け入られるかどうかのテストも含めて出しています。ただ、広げられる可能性は十分あると思います。それぞれのニーズに当てはまる機種は必ずありますし、それをスピーディに持ってこられるのが、BLUの特徴ですからね。

●BLUが日本進出を決めた理由

―― サポート体制については、いかがでしょうか。

本間氏 現状だと、弊社BLUのサイトにお問い合わせ専門のフォームがあり、そこからメールで返すようにしています。修理に関しては、製品自体に1年保証がついているので、1年以内に規定に基づいてお使いいただいたにもかかわらず故障した場合は、無償で交換しています。

―― 液晶を割ってしまったというようなときはどうでしょうか。

本間氏 そのようなときは、有償交換ですね。これも、基本はWebからです。

―― 家電量販店など、リアルな窓口を作っていくことはしないのでしょうか。

本間氏 数が伸びてきたり、お問合せの内容を聞いたうえで、サポートの体制も変えていきたいと思っています。現時点ではトライということで、最低限からスタートしています。

―― 冒頭のシェアのお話に戻りますが、海外全体で見ると、米国以外だとあまり名前を聞かない印象もあります。BLU側の事情として、なぜ日本展開を決めたのかご存じでしょうか。

本間氏 最近だと、香港に大きな物流センターを構え、世界中に展開を始めています。多いのが、インドや東南アジアなどですね。この価格だと、やはり受けるのが途上国ということで、そちらでもシェアを取りにいっているようです。

牧戸氏 BLUもちょうど世界展開しようとしているところで、先ほどのスポンサーの話も、その一環です。香港に物流センターを構えたのも、去年(2016年)の今ごろですね。

本間氏 そういう意味だと、タイミングがよかったのかもしれません。これだけご協力いただけたのも、タイミングが合致したからということはあると思います。

●BLU以外やアクセサリーにもトライしたい

―― 今後のことをうかがいますが、BLUの機種を増やしていくだけでなく、BLU以外のメーカーも代理店として取り扱っていく可能性はあるのでしょうか。

本間氏 そこは流通として当然だと考えています。日本に受け入られる、市場を興せそうな商品には、トライしていきたいですね。海外だと、例えば自撮りの方が画素数の高い商品など、面白いものがいっぱいあります。そういったものを、流通として持ってくることができたらと考えています。

―― 取り扱った端末のアクセサリーを作るということもあるのでしょうか。SoftBank SELECTIONとしてメーカーの機能もあるので、そこを充実させることもできるのでは、と思いました。

本間氏 アクセサリーで一番多いのがケースやフィルムになってきます。BLUさんの端末についても、そこでのビジネスは考えていましたが、企業ポリシーとして、製品にそれらを絶対に付けるということで、2つの製品にはケースが付属しています。ただし、数がもっと出るのであれば、アクセササリーを作ることも視野に入ってきます。1万9800円、2万9800円ぐらいの端末であれば、SoftBank SELECTIONともコラボして、面白いものができると思っています。

―― 先ほど、IoTのお話もしていましたが、こちらについてはいかがですか。

本間氏 具体的に何かというのはまだですが、デバイスが中心にくる時代になると見ています。SIMフリーで強化した総代理店の機能を発揮して、IoTも世界を見て、探したものの中から、持ってこられるものがあればと考えています。グループ会社に通信事業者があるので、そこを活用しながら、新しいものを生み出していきたいですね。

●取材を終えて:ソフトバンクC&Sは、ソフトバンクの原点に近い会社

 もともと、ソフトバンクは孫正義氏がソフトウェアの卸売業者として始めた会社で、社名の由来もここにある。その意味で、ソフトバンクC&Sは、むしろソフトバンクの原点に近い会社といえるだろう。普通であれば、ソフトバンクだけでなく、Y!mobileと直接競合するMVNOで使える端末は取り扱わないという発想になりがちだが、むしろSIMロックフリー市場の拡大を商機と捉えていることがうかがえる。いい意味で、ソフトバンクらしい抜け目のなさといえるだろう。

 BLUの販売を開始したのは、今後への布石という意味合いもありそうだ。この取り組みがうまくいけば、まだ日本に上陸していないメーカーの端末が、ソフトバンクC&S経由で発売されることになるかもしれない。Huawei、ASUS、FREETELなど、顔ぶれが固定化されてきたSIMロックフリースマートフォンメーカーだが、ここに新風を吹き込む存在として注目しておきたい。

最終更新:6/21(水) 21:19
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