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【夢を追う】マッちゃん会長・合瀬マツヨさん(1)「泥臭さ」求め考え抜く

6/20(火) 7:55配信

産経新聞

 佐賀市北部の山間部に、年間30万人が訪れる直売所「マッちゃん」がある。新鮮な農作物や加工品を売る店は、直売所ブームの先駆けであり、農業6次産業化のモデルケースだ。農家の嫁から一念発起し、40代で創業した合瀬マツヨさん(68)は「大好きな村の魅力を伝えようと、がむしゃらに走り続けた。これからも、お客さんの満足度を上げたい」と語った。

 《福岡県から、脊振山地を越えて佐賀県側に向かう。三瀬トンネルを抜けると、右手に大きな駐車場が見えた。マッちゃんだ》

 平成3年、自身も含めて5軒の生産者の野菜を売るところから始めました。今は佐賀県内や福岡市内の1千軒近い農家から、品物が届くまでに成長することができた。農家の人々が作った加工品も置いています。

 遠くからわざわざ車でいらっしゃるお客さんのことを考えて、味はもちろん、値段でも喜んでもらいたい。

 常に「安いな」と思ってもらえるように、値段を付けています。生産者にも「自分が買うつもりで、値段を設定してほしい」と伝えています。

 おかげ様で、多くのお客さんが通ってくださる。中には、開店当初からのお得意様もいる。顔を合わせると、話に花が咲きます。楽しい瞬間ですね。

 《朝収穫した新鮮な野菜が並ぶ。中でも合瀬さんが手塩にかけた旬の野菜は人気を集める》

 私はずっと百姓です。50年以上になります。畑仕事のノウハウには自信がありますよ。

 約5ヘクタールの畑で、20種類程度の野菜を作っています。畑は昔、夫と2人でやっていました。今は従業員2人と、忙しいときはパートの方に手伝ってもらいます。朝から晩まで、店と並行して農作業をしています。社長を息子に譲ってからは、畑仕事をする時間が増えましたね。

 野菜を泥付きのまま、店頭に並べることに、こだわっています。

 新鮮な野菜には、泥が付いています。さっきまで、土の中で育っていたわけですから、当然ですよね。

 百姓は、泥の中に足を突っ込んで仕事をしています。私もずっと、そのように働いてきた。その魅力を伝えたい。私は「泥臭さ」と表現しています。

 また、マッちゃんの魅力は、自然に囲まれていることです。このイメージを大切にしたい。きれいな野菜でなく、土が付いた野菜でなくてはいけないのです。他の店との差別化を図る上で、しっかり計算しています。

 《マッちゃんには、イートインスペースもある。売り物の野菜を使い、スタッフが腕によりをかけた料理が、大皿に盛られる》

 野菜はなるべくその日のうちに、売り切るように心がけています。翌日に新たな野菜が運ばれてくるからです。夕方以降、大きく値引きすることもある。

 それでも、余ってしまうことはあります。農家が丹精して作った野菜です。無駄にしたくない。私が売値の半額で買い取ります。

 買い取った野菜は、私が漬物にしたり、総菜コーナーで出す食材にします。

 総菜の味付けは、地元育ちの主婦に任せています。メニューもすべて、考えてもらう。

 この野菜は、こんなふうにして食べたら、もっとおいしい。こんな使い方もできますよ-。野菜をよく知る地元の人が、総菜を通じて食べ方を提案するんです。

 リピーターの方から「新しいおかずがある」と喜んでもらえると、やってよかったと思いますね。

 《40歳を過ぎて起業した。がむしゃらに働く中、商才が開花した》

 実家も、嫁ぎ先も農家です。先祖代々、百姓をしていました。商売には縁がない。

 それでも、お店をやろうと決めた以上は必死です。家族以外、頼る人はいない。どうすれば良いか、自分で考えるしかない。

 考え抜けば、良いアイデアは必ず生まれます。

 「アイデアが思い浮かばない」という人がいます。それはぼけっとして、本気で考えていないだけです。

 そして思いついたアイデアは、やってみる。走りながら、また考える。その繰り返しです。

 とにかくお店を広げて、継続しようという思いで、いっぱいでした。

 《起業の動機は、自分の思うままに行動したいとの思いだった》

 今は女性でも働いて、お金を稼ぐことが普通の世の中です。そして、稼いだお金は、自分の考えで使える。しかし、昔は違った。

 私が結婚した頃は、女がお金を扱うことはなかった。農家で、お給料をもらうわけではなかったのもあります。当然、自由に使えるお金などなかった。

 欲しい物があれば、お舅(しゅうと)さんにお願いをします。「何に使うとや?」と聞かれて、いちいち説明しないといけない。

 良い悪いではなく、それが当たり前でした。お舅さんや姑(しゅうとめ)さんも、そう育ってきたのです。

 ただ私は、自分が思うままに、何かをしたいと感じるようになった。それが、お店を始める原動力になりました。

 《夫婦2人で始めた店は、今や20人以上のスタッフを抱える大所帯に成長した》

 スタッフの教育には力を入れています。

 自分が扱っている商品に誇りを持ち、責任を持つ。それは当然です。お客さんに、気持ちよく買い物をしてもらうことも大切です。

 陳列一つにしても、混み合う店内で、品物が棚から落ちないように積む。汚くなっていたら、きれいにする。そんな基本から、教えます。

 それから、言われた仕事をするだけではなく、スタッフ自身が、しっかり考えてもらいたい。

 どのように工夫すれば、損をしないか。どうやったらより売れるのか-。

 私の考えを押しつけているだけでは、だめなんです。ヒントを出して、考えてもらう。売り方も、総菜のメニューも同じです。

 時には、怒ることもあります。でも、基本的には自由に泳がせながら、良いアイデアが生まれる環境作りを心がけています。

 スタッフの仕事は、定期的に変えています。レジや総菜、豆腐、陳列といった、ずっと同じ部門の仕事ばかりやっていると、マンネリになってしまうからです。

 人間は得てして、自分の所が一番しんどいと思いがちです。でも、そうじゃない。自分の知っている仕事だけで、マッちゃんが回っているわけではない。

 いろんな仕事を経験することは、スタッフのためにもなると思います。

 みんなで店を支えている。そう気付いてもらえたら、うれしいですね。

最終更新:6/20(火) 7:55
産経新聞