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丸ごとそのままの姿で保存 琥珀に閉じ込められた恐竜時代のヒナ鳥発見

6/20(火) 18:20配信

THE PAGE

 時折、琥珀の中に閉じ込められたいろいろな生物が話題になります。そして先日、骨格ばかりでなく皮膚や羽まで、ほぼそのままの姿を残した恐竜時代の鳥のヒナを納めた琥珀を紹介するレポートが学術雑誌に掲載されました。

【より大きな写真】恐竜時代のタイムカプセル 琥珀にヒナ鳥そのままの姿で発見

 とても1億年前の生き物とは思えない化石標本の発見は何を伝えたのか。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が報告します。

ミャンマーの発掘現場より再び

 以前ミャンマーの山中にある白亜紀前期の化石発掘現場から琥珀(=化石化した樹液のかたまり)の中に閉じ込められた羽毛の化石を紹介した(「白亜紀からのタイム・カプセル 琥珀の中に閉じこめられた恐竜の羽の発見」)。


 見事に保存されたおそらく小型の獣脚恐竜のものと考えられる、琥珀内に完全に保存された羽毛化石。約1億年前のものとはとても思えない、見事な保存状態。こうした奇跡的な化石記録の不思議さに魅了された私は、「タイム・カプセル」として記事の中で取り上げてみた。(注:下記のCNNのニュースにおいて、この実物の羽毛化石の写真をチェックできる。)

 しかし先日、この羽毛化石を凌駕(りょうが)する驚くべき化石標本がGondwana Researchという(主に中生代の古生物学や地質学の研究をテーマにする)学術雑誌において発表された(Lida Xing等, In press)。

 Lida Xing, Jingmai K. O'Connor, Ryan C. McKellar, Luis M. Chiappe, Kuowei Tseng, Gang Li, Ming Bai. In press (Available online 6 June 2017). “A mid-Cretaceous enantiornithine (Aves) hatchling preserved in Burmese amber with unusual plumage”. Gondwana Research.
 

 まず上の写真を見ていただきたい。小さな鳥が半透明な黄色いガラス状のようなものに納まっているのが分かる。これはなんと恐竜時代(白亜紀前期)のヒナだ。口ばしから頭、首、胴体、前足(羽)など、体が「ほぼ丸ごと」あるのが分かる。普通の恐竜時代の化石と、一目瞭然に大きく異なるのは、骨格だけではなく体の表面の大部分が、羽や皮膚に覆われている点だ。まるで今朝亡くなったばかりの、路上に転がっているスズメのヒナのようないでたち。とても1億年前の死骸には見えない。

 この黄色いガラス状のものが、化石化した木の樹液 ── いわゆる琥珀だ。どうして琥珀は、このように太古の生き物を生存時のような姿のまま、完全に腐ってなくなる前に、瞬間保存することが可能なのだろうか?

 樹液は(テルペンなど)の天然樹脂で構成されるが、長大な地質年代を通し、熱や化学変化(重合反応など)、そして地中に埋もれている期間を通し発生する高圧力などを加えることによって、岩石のように硬質な化石 ── 「琥珀」 ── へと変化する。

 ちなみに琥珀という言葉は中国語から派生しており、もともとは「生きたままの姿を残して岩になった虎」の意味を差すそうだ。英語のAmberはアラビア語のAnbarからなり、マッコウクジラの脂に似ていた事実に由来するとのこと。

 恐竜羽毛の記事で紹介したように、琥珀の中には時々いろいろな生物 ── ほとんどは小型の動物 ── が混じっていることがある。森林などにすんでいた昆虫が最も多いようだが、何万年と経っても生存時そのままの姿を残していることがある。そのため化石研究者にとって、骨格だけでなく皮膚や体全体の構造など直接知ることのできる可能性のある、貴重なデータ源となりえる。

 ちなみに優れた化石の保存能力をもつ琥珀だが、DNAは「680万年くらい前までのものしか残らない」という研究結果が報告されている(Kaplan 2012)。約6千6百万年前に滅びた(鳥類を除く)中生代の恐竜を、映画「ジュラシック・パーク」のように復元することは、今のところ今のとこ技術的に難しいようだ。

 Kaplan, Matt. 2012. “DNA has a 521-year half-life.” Nature. doi:10.1038/nature.2012.11555.


 今回は幸運にも研究者の方からたくさんの写真を、気前よくこの記事に使わせていただく許可を得ることができた。こうした貴重な化石標本は、一古生物学者から言わせてもらうなら、ピカソの絵画やロダンの彫刻のように、自然が我々に残してくれた「偉大なアート作品」だ。長々と御託(ごたく)を並べて言葉で説明するより、今回はあえてたくさんの写真やイメージを使って、この驚くべき鳥の化石標本にじっくり迫ってみたい。

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最終更新:6/23(金) 5:58
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