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<復興CSR>民間部門が担い手に

6/20(火) 11:15配信

河北新報

◎トモノミクス 被災地と起業[48]第10部 展開(4)ひろがる/公益

【復興CSR】起業家精神 変革の鍵

 公共は行政の専売特許ではなくなりつつある。復興を担う主役は誰か。「私」である企業のパワーが「公」の領域で存在感を放つ。

 東日本大震災からの自立的な復興を目指す経営者らが設立した「東北未来創造イニシアティブ」が3月、5年に及ぶ活動を終えた。

 代表発起人は大山健太郎アイリスオーヤマ社長(71)と大滝精一東北大大学院教授(64)。「創造と自立への挑戦が被災地のテーマ」を活動理念に、民間の立場から復興まちづくりへの参加と人材育成に関わった。

 経済同友会が協力し、釜石、大船渡、気仙沼各市などに企業人35人を送り込み、市職員と地域再生につながるテーマを探した。

 大船渡市では有数の水揚げを誇るサンマに焦点を当てた。発送するサンマに子どもたちの手紙を入れたり、生サンマ1260匹を並べギネス世界記録に挑むなどして地域を活気づけた。

 「人材育成道場」と名付けた塾は大手監査法人の社員らが指南役を務め、被災地の事業者150人以上の経営手腕に磨きをかけた。

 気仙沼市の卒塾生らは「気仙沼水産資源活用研究会」を設立した。14年、水産関連会社約30社が共通ブランド「kesemo(ケセモ)」を創設。サメのコラーゲンを使った化粧品などを全国に発信している。

 一企業の枠を超えた連合型の復興CSR(企業の社会的責任)だった。

 大滝教授は「復興を担う中心は企業人。行政、企業などセクターの壁を越え、地元のリーダーを輩出した。卒塾生は地域を変革するエンジン役になりつつある」と成果を語る。

 震災は企業が公の使命を自覚する転換点になった。

 行政、企業、NPO、財団など異なる組織が共通の目標を掲げ、特定の課題解決に当たる「コレクティブインパクト」という取り組みがある。互いの得意分野を生かし「公」に参画する、欧米で広がる手法だ。

 被災地支援を続けるNPO代表や起業家ら約70人が16年に旗揚げした「新公益連盟」(東京)は、その萌芽(ほうが)だった。

 駒崎弘樹代表理事(37)は病児保育事業を展開するほか、仙台市などで待機児童解消に取り組むNPOフローレンス(東京)の代表を務める。事務局長には被災地と企業の橋渡し役を担う一般社団法人RCF(東京)の藤沢烈代表理事(41)が就いた。

 駒崎代表理事は「震災を機に個々の団体が孤軍奮闘するのではなく、企業などさまざまなアクター(役者)と手をつなぐ機運ができた。一過性に終わらせず、社会変革を加速させたい」と未来を描く。

 「災後」に芽生えた新しい公共、新しい公益。成熟社会の公共像は、着実に形を見せ始めている。

最終更新:6/20(火) 17:41
河北新報