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<英EU離脱>不透明さ増す交渉

6/20(火) 21:15配信

毎日新聞

 19日に始まった英国の欧州連合(EU)離脱に向けた交渉。英国では先の総選挙(下院選)でどの政党も過半数に届かないハングパーラメント(宙づり国会)となり、メイ首相の求心力が低下している。離脱方針の転換を迫る声も出る中、交渉終了までメイ政権が続く保証もない。両者が折り合うのが難しい課題の数々を前に、交渉期間は約1年9カ月しか残されておらず、先行きは不透明さを増している。

 ◇メイ政権かじ取り不安

 「悲観主義者はいかなる好機においても困難を見いだし、楽観主義者はいかなる困難の中でも好機を見いだす」。初交渉を終えた英国のデービスEU離脱担当相は記者会見でチャーチル元首相の言葉を引用。「私は断固、楽観主義者だ」と述べ、従来の方針に変更がない考えを示した。

 メイ首相は、移民の受け入れを制限し、EUの単一市場と関税同盟からは撤退する方針を示し、経済を犠牲にしてでも「主権」の回復を優先する「ハード・ブレグジット」(強硬な離脱)を訴えてきた。しかし、自らの離脱方針の信任投票と位置づけた総選挙は、過半数割れまで議席を減らす予想外の結果に。北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の閣外協力で政権を発足させたい考えだが、与党内からは単一市場や関税同盟に残る柔軟路線への修正を迫る声が出ている。

 過半数に満たない少数政権のまま離脱交渉を乗り切れるかも不安視されている。下院(650議席)でメイ首相が確保する議席数はDUPの10議席を入れても過半数ぎりぎりの328。重要局面で保守党から造反者が出れば政権はその時点で立ち往生する。

 イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁は20日朝、ロンドン市内で、今後の交渉を「散策」になぞらえ「EU離脱がどの程度、緩やかな(道の)散策になるのかいずれ判明する」と述べた。交渉が「時間切れ」で決裂すれば、関税の発生などで経済は混乱する可能性があり、カーニー氏は交渉の行方次第で「企業は緊急対応を迫られる可能性がある」と警告した。【ロンドン三沢耕平】

 ◇18年秋には大筋合意必要

 EU基本条約の第50条で定められた交渉期限は原則2年。英国が今年3月29日に離脱通告した時点から時計の針は進んでいる。残り約1年9カ月の交渉は2段階で行われる。一つ目は約1000億ユーロ(約12兆4000億円)ともいわれる「手切れ金」など離脱条件についての話し合い、二つ目は貿易交渉を含む将来の関係についての協議だ。

 双方は19日の初交渉で、離脱条件を巡る交渉に「十分な進展」があれば第2段階に進むことで合意。EU側は「進展」を経た上で、早ければ今年秋の首脳会議で貿易交渉入りを政治決定したい考えだが、英国が「手切れ金」の支払いに消極的な姿勢を貫く限り、この判断は先送りされる公算が大きい。

 双方が望む「円滑な離脱」を実現するには、英議会での承認にかかる時間を逆算して、2018年秋には大筋合意につなげる必要がある。一方、英国が求めるEUとの自由貿易協定の締結には数年かかるとの見方も強い。経済活動への影響を最小限にとどめる移行期間を設けて、離脱後も自由貿易交渉を継続する可能性もある。

 交渉期間は全加盟国と英国が合意すれば延長も可能だ。その場合、英国は加盟国の立場にとどまり、19年5月の欧州議会選挙を英国でも実施する必要が生じてしまう。【ブリュッセル八田浩輔】

 ◇各国は穏便合意求める

 【ベルリン中西啓介、ウィーン三木幸治】英国の欧州連合(EU)からの離脱交渉が始まったことを受け、加盟各国からは、穏便な形で合意に至るよう求める声が相次いだ。

 ドイツのメルケル首相は19日、「交渉初日の段階で結果を予測することは時期尚早」と論評は控え、その上で「良い合意に達することが、(EUと英国)両者の利益になる」と述べ、交渉決裂などの事態は避けるべきだとの考えを示した。

 英国は19日の初交渉で、EU単一市場から離脱する「ハード・ブレグジット」(強硬な離脱)路線を改めて表明したが、ガブリエル独外相は19日、「英国がいわゆる『柔軟な離脱』について交渉することを望む」と述べ、単一市場への残留を視野に政治的・経済的影響を最小限にするよう求めた。

 中・東欧諸国も交渉の「軟着陸」を望んでいる。英国には東欧出身の移民が多く、移民の権利が保障されるか懸念があるほか、離脱に伴う英国の「手切れ金」問題などがEUの財政に影響を与え、東欧諸国がEUから受け取る補助金の減額につながらないか不安視しているからだ。

 ハンガリー、ポーランド、チェコ、ルーマニアの4カ国は、今後もEUと英国の関係を緊密に維持するため、離脱交渉を「英国を罰しない内容」にするようEUに要請。ポーランドのシドゥウォ首相は19日、英国のメイ首相と電話協議し、両国が在英ポーランド移民の権利を守るために共に行動し、両国の良好な関係の維持を再確認した。

最終更新:6/20(火) 23:54
毎日新聞