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<大分地割れ>避難勧告1カ月、解除めど立たず

6/20(火) 23:08配信

毎日新聞

 棚田が広がる大分県豊後大野市の山あいで多数の地割れが報告され、地元住民に避難勧告が出されてから21日で1カ月を迎える。地割れはじわり拡大を続け、人の身長を超える段差も出現。全面的な避難勧告解除のめどは立っていない。本格的な梅雨を前に大規模な地滑りにつながらないか警戒が続いている。

 「梅雨は農作物の成長に必要だが、今年は怖い季節になった」。地元の米農家、工藤良孝さん(81)が顔をしかめる。地割れ後、許可を得なければ立ち入りできない制限区域内に約2ヘクタールの田を持ち、例年通りの作業が進まない。避難を続ける住民の中には夜も眠れない人がいるという。

 同市朝地町綿田地区で最初に地割れが報告されたのは5月16日。南北約400メートル、東西約300メートルのエリアは北から東にかけ半円の弧を描くように地割れが生じ、5月下旬には亀裂が1時間に20ミリ超広がる場所もあった。最近は1~2ミリ程度に収まっているが、そのエリアの南側を流れる平井川付近では砂防ダムや護岸の一部が、北側から動いてきた地面に圧迫され損壊するなどの被害も出ている。

 これまでに2回現地調査した国の土砂災害専門家は、地下水の増加に伴う地中の地滑りが地割れの原因とみている。地下水を抜いて地面を安定化させるため、県は現在、3カ所で横向きにパイプを差し込んで地中から地下水を排出するなど応急工事をしている。

 ところが、梅雨が本格化して地割れの亀裂などから大量の雨水が地中に染み込めば、排水が追いつかずに地割れの拡大や地滑りにつながる可能性もある。

 豊後大野市は5月21と23の両日で9世帯17人に避難勧告を出し、23日は付近を警戒区域に指定した。6月1日には警戒区域内を立ち入りの禁止区域と制限区域に分け、17人は地元公民館や親類の家などで避難を続けている。

 県と同市は今後、直径3.5メートルの大きな井戸を7本掘って地下水を効果的に排出し、鋼管のくい140本を地下の岩盤に打ち込んで地盤を安定させる本格的な対策工事を計画している。同市は梅雨明けにも6世帯7人の避難勧告解除を検討するが、残る3世帯10人は工事が終わる来年度末まで戻れない見通しという。【田畠広景、池内敬芳】

 ◇地下水豊富な土地で多発

 現場で地割れを確認した九州大大学院付属アジア防災研究センターの池見洋明助教(応用地質学)は「棚田は過去に斜面崩壊が起きた緩斜面に作られることが多く、地形的に水分が豊富に含まれることから地滑りが起きやすい」と説明する。

 大分県などによると、同じ地区では1964年7月にも地滑りが起き、農地に被害が出た。その際は井戸を掘って水を抜くなどの対策を実施したという。

 国土交通省は土砂災害を土石流、地滑り、崖崩れの3分類で統計をとっており、地下水などが原因で発生する地滑りは、2016年は53件▽15年44件▽14年77件▽13年89件▽12年76件--が全国各地で発生している。

 1985年7月には長野市で大規模な地滑りが発生し、老人ホームが巻き込まれ26人が死亡した。同省担当者は「棚田に限らず地下水の多い所は地滑りが発生しやすい」と本格的な梅雨を前に警戒を呼びかけている。【山下俊輔】

最終更新:6/20(火) 23:23
毎日新聞