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<小池知事>「折衷案」歯切れ悪く 双方に市場機能

6/20(火) 23:46配信

毎日新聞

 築地市場(東京都中央区)を豊洲市場(江東区)に移転する計画の延期表明から10カ月。移転問題に決着をつけるため、小池百合子知事が20日に開いた記者会見はわずか30分で打ち切られた。「豊洲への移転」をベースにしつつも、将来的に築地に市場機能を持たせて「再開発」するという独自案だが、都議選告示を間近に控え、豊洲移転派と築地再整備派の双方に配慮した「折衷案」とも言え、市場関係者からは「本当にできるのか」と知事の方針をいぶかる声が上がった。

 ◇質疑は4分

 「石原慎太郎元知事が豊洲への移転を決定してから、ロングタームの明確な計画はなかった」。小池知事は記者会見で得意の英語を交えながら、市場の移転延期と、これまでの見直し作業の正当性を強調した。

 だが、具体策についての説明は一切なく、約30分間の会見時間のうち26分間は一方的な発言に終始。手元の資料を淡々と読み上げるなど、歯切れの良い「小池節」は鳴りを潜めた。

 不明瞭な説明に対し、記者から「市場が二つになるということか」といった質問が飛んだが、小池知事は明言を避けた。

 会見で質問できた記者は3人だけ。小池知事が質疑を4分で打ち切ろうとしたため、記者から「質疑応答をもうちょっとやりませんか」と声が上がったが、足早に立ち去った。

 この後、小池知事は同日午後8時過ぎに再登庁して報道各社の個別取材に応じる異例の対応を取った。毎日新聞の取材には、収支の見通しについて「築地はこれからお金を生むところ」と答え、都が試算した50年の定期借地で賃料収入を得る方策が基軸となる認識を示した。【柳澤一男】

 ◇関係者戸惑い・疑念

 市場業者にも困惑の色が広がった。小池知事の記者会見を受け、業界3団体が築地市場内で相次いで会見。このうち、これまで多くの組合員が「豊洲反対、築地存続」を訴えていた仲卸業者でつくる東京魚市場卸協同組合の早山(はやま)豊理事長は「仲卸の意見を集約し切れておらず、(組合としては)賛否を判断できない」と、基本方針表明のタイミングと内容に戸惑いを隠せなかった。

 築地市場存続を訴えてきた仲卸業者にとっては、自分たちの意向が一定程度反映されたようにみえる。さらに、仲卸業者の「目利きの技」を核とした「築地ブランド」の維持も盛り込まれた。

 だが、早山理事長は「目利きはものの良しあしだけでなく、(食中毒などの)危険性を察知して生産者や消費者を守る仕事でもあり、市場全体の流れの中で形成されている」と指摘し、築地市場を部分的に存続させる場合は賛同できないとした。

 豊洲移転を推進してきた築地市場協会の伊藤裕康会長は「比較的バランスが取れている。都との間で一つ一つ話を詰めて理想的な市場に近づけたい」と評価しながらも、「二つの市場というのはあり得ず、成り立たないと思う」と疑念も示した。【芳賀竜也】

 ◇東京五輪森会長「正直やれやれ」

 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は20日、小池知事が豊洲移転に伴い、環状2号線を大会前に開通させると表明したことを受けて「正直やれやれという気持ち」と述べた。

 環状2号線は東京都中央区晴海の選手村と新国立競技場を10分で結ぶ大会輸送の主要な幹線道路。さらに、築地の跡地は大会輸送の大型バスの駐車場とする計画だ。

 森会長は今月末に予定される国際オリンピック委員会との会合までに環状2号線を含めた具体的な整備計画をまとめるように要望した。【田原和宏】

 ◇小池知事の発言要旨

 豊洲市場は6000億円かけてつくられたが、「豊洲ありき」で移転後の計画が不十分だった。石原慎太郎元知事が豊洲移転を決定してから、行政や議会から長期的な計画は聞こえてこなかった。私は豊洲で累積する赤字を残してはならないという思いと、世界に誇る「築地ブランド」からの食の魂を込めて、築地を再開発する基本方針の判断に至った。

 築地跡地の再開発にも課題は山積している。老朽化している今の築地で今後、高い確率で予想される首都直下地震への対応も考えなければいけない。築地ブランドを今後50~70年と更に育てるため、しっかりとした手を打つべきではないか。新たな一大拠点をつくるという希望があれば必ず実現できると考える。

 基本方針だが、一は築地は守る、豊洲を生かす。「築地の後は築地」とも言える。二は、豊洲はITを活用した総合物流拠点となる中央卸売市場に。三は、都は事業者、都民の信頼回復に徹底的に取り組む。これらの方針を基に、早急に具体的な方策を詰めるよう事務方に指示した。豊洲、築地の両立が最も賢い使い道ではないか。豊洲への移転、築地への復帰ということはそれぞれの方々が選択することになると思うが、特に仲卸業者への経営支援は検討したい。

最終更新:6/20(火) 23:49
毎日新聞