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「パナマショック」の中台関係 習近平政権が勝負に 断交の台湾 世論反発で逆効果も

6/20(火) 10:16配信

産経新聞

 中国と台湾の亀裂を決定づける動きとなるのか。中米パナマが13日、電撃的に台湾との国交断絶に踏み切り中国と国交を樹立した。「一つの中国」原則を認めない与党・民主進歩党の蔡英文政権に業を煮やした中国の習近平指導部が「勝負をかけた」(米華字メディア)との見方もある。ただ中国側の露骨な外交圧力は台湾世論の反発を生み、関係打開が一層遠のく危険性もはらむ。

 「一つの中国原則は国際社会の普遍的な認識だ。中国とパナマの国交樹立は人心の向かうところ、大局のおもむくところだ」。中国国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光報道官は13日に出した声明で、パナマの選択は“当然の帰結”だと勝ち誇った。

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報も14日付の社説で「パナマ側は長年、大陸(中国)との国交を望んでいた」と言及。対中傾斜を強めた国民党の馬英九前政権の8年間、中国側は台湾側の感情に配慮してパナマ側の提案を断ってきたと主張した。中国がその気になれば、いつでも国交樹立は可能だったというわけだ。

 では中国はなぜ今、カードを切ったのか。習指導部は今年秋に最高指導部メンバーが大幅に入れ替わる中国共産党大会を控えている。「中華民族の偉大な復興」の核心テーマである祖国の完全統一(中台統一)に向けて具体的成果が必要だが、2016年5月の蔡政権発足以降、中台関係は大きく後退したまま。対中政策の「現状維持」を掲げる蔡氏へのいらだちが募る一方だ。5月にジュネーブで開かれた世界保健機関(WHO)総会で、中国側は圧力をかけて台湾当局の代表団をオブザーバーとして出席させなかった。

 舌戦も激しい。北京の民主化運動が武力弾圧された天安門事件から28年の6月4日、蔡氏はフェイスブックに「両岸(中台)間の最大の隔たりは民主と自由だ」と書き込んだ。「台湾は民主化の経験を対岸(中国)と分かち合いたい。中国大陸は台湾の経験を生かすことで、民主改革の生みの苦しみを緩和できる」と中国側に呼びかけたのだ。

 未来志向で中台関係を論じたともいえる。だが中国当局は挑発と感じたのか、台湾事務弁公室の馬報道官はロイター通信に送った声明で「大陸のことについては大陸の中国人だけが語ることができる」と反発。「蔡氏の政党が推進した『価値観や考え方』が台湾に混乱を引き起こした」と民進党を批判し、「われわれは歴史上、中華民族の偉大な復興の目標に最も近づいている」と統一を迫った。

 北朝鮮の核・ミサイル開発への対応をめぐって中国との協調姿勢を見せる米国も、台湾問題で譲歩する兆しはない。マティス米国防長官は6月3日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議での演説で中台問題に触れ「台湾が必要とする防衛装備品を供与するため、台湾と引き続き協力していく」と発言。中国代表団を率いる何雷中国軍事科学院副院長は緊急記者会見を開き、「中国政府と中国人民は台湾への武器売却に断固として反対する」と反論し、同科学院の別の幹部も「台湾は中国の一部であり、この場で台湾問題を持ち出すのは不適切だ」と不快感を示した。

 中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会のトップである陳徳銘会長は5月下旬、就任1年を迎える蔡氏について台湾メディアに問われ「期待はない。何もない」とそっけなく応じた。習指導部の本音をある程度反映しているだろう。台湾で蔡政権の支持率は低迷しており、習指導部は1期目の任期が終わる3年後を見据えている。

 先の環球時報の社説は「この1年間で台湾の国際空間はたちまち縮小した。台湾民衆にとって深刻な教訓となっただろう」と論じた。「パナマショック」は蔡英文氏に向けた圧力というより、台湾の有権者に向けたメッセージという側面が強い。ただこうした“脅迫”が、台湾人の中国観に負の影響を与えるのは確実だ。

最終更新:6/20(火) 10:16
産経新聞