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加藤一二三・九段引退 数多くの記録残し、伝説に終止符 「ひふみん」の愛称で親しまれる

6/20(火) 21:15配信

産経新聞

 将棋界の「生きる伝説」として長い歴史を刻んできた加藤一二三・九段が20日、数々の記録を残して63年間のプロ棋士生活に終止符を打った。

 昭和29年、当時最年少の14歳7カ月でプロデビュー。順位戦では毎年昇級を続け、18歳で最高峰クラスのA級に昇級し、八段に昇段。驚異的なスピード出世記録は今も破られていない。“神武以来の天才”として将棋界に一時代を築く一方、アンパンマンのような顔立ちに愛くるしい振る舞いから、「ひふみん」の愛称で親しまれている。

 対局に際しては独特のスタイルを持つことでも知られる。長いネクタイの着用もその一つ。盤の前に正座すると、座布団に届くほどの長さ。熱心なクリスチャンで、対局の休憩時間には賛美歌を歌うこともしばしば。寒い時期にはどこからか対局室に電気ストーブを持ち込み、「相手も寒いだろう」と気遣ってストーブを向けたこともあった。

 対局中、相手の後ろに立って敵陣から自陣を見直すスタイルも有名だ。これがいつのころからか、「ひふみんアイ」と呼ばれるようになり、インターネット中継でも見られるようになった。

 60年以上の棋士人生を通し、居飛車党を貫き、定跡の進歩にも貢献してきた。中でも棒銀戦法は研究に研究を重ね、「加藤棒銀」と呼ばれる攻撃が有名。一つの戦法を突き詰め、徹底的に真理を求める姿は、多くの棋士に影響を与えた。妥協を許さない長考派で知られる。わずか6手目で長考に沈んだ時は、「こんな段階でいったい何を考えているのか」と相手はいぶかしがったが、加藤九段は「気力が充実してくるのをじっと待っていた」と明かした。

 昨年12月には、最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)のデビュー戦で対局し大きな話題を呼んだ。“62歳差対決”に敗れた加藤九段はこのとき、「攻めが強いし寄せが早い。大局観がすばらしいし受けもしぶとい」と、“天才少年”の快進撃を予言するかのように絶賛していた。

 「今度は勝つ自信があります」。藤井四段との再戦を熱望していた加藤九段だが、20日をもってそれも叶わぬ夢となった。

最終更新:6/20(火) 21:15
産経新聞