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「すごく悲しかった」避難所への物資提供、全て断られ…イスラム、「顔」の見える関係に

6/20(火) 11:50配信

西日本新聞

 「イスラム」と口にした途端、相手の声色が変わった。熊本市に住むインドネシア人のマーロ・スイスワヒュさん(41)は昨年4月、熊本地震に遭遇した。その衝撃もさることながら、仲間が避難所に電話したときのショックも大きかった。

 イスラム教の礼拝堂「モスク」。市内には1カ所あり、代表を務める。地震直後、全国の教徒から支援物資が続々と寄せられた。県内に300人ほどいる教徒には十分すぎる。そこで避難所への提供を申し出た。

 数カ所に電話し、全て断られた。「イスラムのせいだったのだろうと思うと、すごく悲しかった」。試しに「外国人コミュニティーですが」と名乗ると、すんなり受け入れられた。複雑な思いを抱えながらも連日、手分けして物資を運んだ。カレーの炊き出しにも取り組んだ。

 10日ほどたったころだった。「イスラム」と口にしても相手の顔色が変わらなくなった。顔の見える関係の大切さを改めて実感した。

「地道に関係を築いていくしかない」

 顔の見えない関係の住民たちが、また遠ざかってしまう。福岡市東区のモスクで運営委員を務める公務員の山根郷史さん(42)は、世界でテロが繰り返されるたびにやるせなくなる。

 この地にモスクが建ったのは2009年。01年の米中枢同時テロから風当たりは強まり、当時も住民に建設反対の動きがあった。

 町内会と十数回の協議を重ね、3年かけて建設にたどり着いた。その後も定期的に交流し、今年5月にも戒律に従って豚肉などを使わないハラール料理の体験会を催した。直後の31日、アフガニスタンで90人以上がテロの犠牲になった。

 翌日、住民からは「福岡でもテロが起こるかもしれない」(30代女性)「過激派と教徒の違いが分からない」(40代男性)など不安の声が聞かれた。さらにテロ等準備罪を新設する改正組織犯罪処罰法が成立し、東京五輪が近づけば…。

 「また暮らしにくくなるのか」。それでも山根さんは「地道に関係を築いていくしかない」と思う。

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最終更新:6/20(火) 11:50
西日本新聞