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7号車トヨタがリタイアした原因は、偽“マーシャル“であったと判明/ル・マン24時間レース

6/20(火) 20:22配信

motorsport.com 日本版

 7号車トヨタTS050Hybridの小林可夢偉は、木曜日の予選でレコードラップを記録してポールポジションを獲得した。決勝レースもクラッチトラブルを抱える前までは、盤石なるペースを発揮し、トップを走行していた。

写真:偽“マーシャル“となってしまったキャピラリーが所属している45号車アルガルヴェ・プロ・レーシング

 小林がクラッチのトラブルを抱えたのは、レース開始から10時間を経過後に出動したセーフティカーの間だった。チームメイトのマイク・コンウェイからドライバー交代した後、小林はセーフティカーが周回するトラックに出るタイミングを信号横のピットレーン出口で伺っていた。

 小林はコースインのタイミングを知らせてくれた“マーシャル“を見つけ、いざクラッチスタートをするも、チーム無線で止められた。それが、後の7号車トヨタが被ったクラッチトラブルの引き金となった。

 トヨタのテクニカルチーフであるパスカル・バセロンは、『Eurosport』に対し次のように語っている。

「それまでトップだった7号車は驚くべき問題を抱えていたのだ」

「セーフティカーでコースインのタイミングを見計らっている時、マーシャルらしき人物が7号車トヨタのスタートを促したのだ」

「しかし、ピットレーンの信号はまだ赤だったため、我々は慌てて彼がスタートしてしまうのをやめさせた。それを2-3回ほど繰り返したと思う。これは全く予想だにしていなかった。そしてクラッチはオーバーヒートしてしまった」

 レース後、クラッチトラブルを引き起こした元凶である”マーシャル”の正体が、LMP2クラスのドライバーであるビンセント・キャピラリーであったことが明かされた。彼が所属するアルガルヴェ・プロ・レーシングのピットガレージは、小林がセーフティカー中に停車していた場所にかなり近かったのである。

 キャピラリーは自身のFacebookに次のように投稿している。

「土曜日のレース中、僕はヘルメットを被ってドライバー交代の時を待っていた」

「僕たちのガレージの数メートル前にトップのクルマ(7号車トヨタ)が止まっていた。僕はそれを励ましたかっただけなんだ。なんの意図もなくて、ただ励ましたかっただけだった。その時の僕のジェスチャーはスチュワードから違反判定を受けて、罰金を科された。今思えば僕の行動は不適切だった。後悔している」

 LMP2クラスに参戦している26号車Gドライブレーシングのロマン・ルシノフは、小林が混乱してしまったのは納得できると証言し、予選でも同様のことが起きていたと述べた。

「予選でも似たような出来事が起こった。私が抜き打ち車検に呼ばれた時のことだ」

「ピットレーンを走行中に彼らに呼ばれたら抜き打ち車検だ。我々はそのままテクニカルゾーンへクルマを持っていき、検査し終わったら、コースに復帰するという流れだ」

「その時も突然、“マーシャル“が私に手を振ってきたから、私は車検が終わったと思い、テクニカルゾーンを出た。しかし、それは間違いだったのだ。彼らはその後、合図があるまではコースに戻ってはいけないと私を戒めた」

「このような状況は看過しがたい。車内の視界は本当に悪いし、ドライバーは大抵エンジニアと会話しているんだ。おまけにクルマの周りには大勢の人が歩いている。その中で人の手がOKサインを出していると認識したら、スタートするのが普通だろう」

「小林にも同じようなことが起きた。ドライバーがクルマに乗っているときは、場所に関係なく、本能でクルマを動かしている。トラックやガレージ、ピットレーンなど関係なくだ」

「ガレージに入る時も、どこにいくべきなのか、いつブレーキをかけるべきか、ハンドルをどれほど回すべきなのか指示する誘導役が必ずいる。それは無意識的なものだ。誰がその誘導役なのか認識する必要はなくて、ただ視界に入る彼の手かグローブの動きだけを見ている。そういうものだ」

「トヨタの場合もそうだ。クルマの近くに誰かが来て、ジェスチャーをとる男がいた。私がマシンに乗っていたとしても、それをマーシャルだと勘違いするだろう」

「とにかく車内は視界が制限されているから、だからレッドシグナルの前にいて、誰かがGOサインを出したのであれば、ドライバーはそれに従うまでだ。信号機が壊れているかどうかなんて、ドライバーはどうやって知ればいいんだ」

 仏新聞の『L'Equipe』のインタビューで、バスールはトヨタが勝利を逃した責任として、そのドライバーに謝罪するよう望んでいると付け足した。

「彼の行動に悪意がないということは理解したが、彼は自分が行なったジェスチャーによって何が起きるのか考えていなかったのだろう」

「少なくとも、私は彼が謝罪に来てくれることを願っている」