ここから本文です

コンゴの野生ゴリラ、観光客誘致に心の準備は?

6/20(火) 17:22配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

【カフジ・ビエガ国立公園(コンゴ民主共和国)】体重約230キロのゴリラ「ムプングエ」を人種差別主義者だと非難するのはフェアではないだろう。

 しかし、ムプングエは最初に白人を見たとき、森に逃げ込み、ストレスからくる発作的な下痢に見舞われてた。ゴリラを人間に慣らす責任者、ロバート・マリンビ氏はムプングエを安心させるためにマニラ封筒で作った白人風のマスクを着け、深いやぶの中に入って行かなければならなかった。

 マリンビ氏のアシスタントを務めるサンドロ・マスンブコ氏は「そのアイデアが浮かんだときには冗談のように思えた」と笑いながら話す。「でも、結果は上々だった」

 マリンビ氏は、カフジ・ビエガ国立公園のゴリラたちを観光客に慣らすことを任されている。国立公園当局者は野生のゴリラを観察できるトレッキングツアーで裕福な欧米人観光客を呼び寄せたいと考えている。ゴリラたちにこれを受け入れさせるのがマリンビ氏の役目だ。

 カフジ・ビエガ国立公園があるコンゴ民主共和国の東部は、1990年代半ばにルワンダ虐殺が国境を越えて広がって以来、断続的な戦争や移動しながら活動する民兵組織などに悩まされてきた。

 しかし、同国立公園は世界最大のゴリラを観光客が野生で見ることができる唯一の場所であり、当局者は比較的平和な期間が継続することで冒険好きな人々のバケツリスト(死ぬ前にやっておきたいこと)に入ることを望んでいる。ゴリラツーリズムには2つの役割があるという。国立公園と野生動物を保護する資金の獲得に加えて、近隣の住民にも収入がもたらされるのだ。そうした収入がないと、近隣の村人たちはゴリラを食用にしようと考えるかもしれない。

 1995年、コンゴには約1万7000頭のグラウアーゴリラが生息していた。そのうちの約77%が戦闘中に殺されてしまい、米国に本部を置く野生生物保護協会(WCS)によると、今やそのゴリラは近絶滅種に指定されている。ユネスコ世界遺産にも登録されている約6000平方キロのカフジ・ビエガ国立公園内で人の存在に慣れていたゴリラの群れは5つあったが、そうしたゴリラは戦争中にほぼ全て殺されてしまった。

 密猟者たちが近づいてもゴリラたちは警戒しなかったとマリンビ氏は言う。「彼らは密猟者たちのことを観光客だと思ってしまった。だから殺されたのだ」

 戦闘が沈静化したことで、公園当局は今こそカフジ・ビエガをゴリラツーリズムの穴場として売り込めると考えている。ウガンダのブウィンディ原生国立公園ではゴリラを見るための許可証が1日1人当たり600ドルとなっている。ルワンダは最近、ボルケーノ国立公園でゴリラを見る料金をそれまでの倍となる1500ドルに引き上げた。

 カフジ・ビエガの許可証料金は400ドルで、かなり割安となっている。

 同公園の責任者ジュベナル・マンガンガ氏は「他の公園のゴリラがわれわれのゴリラよりもすごいとは思えない」と話す。昨年の訪問者数は1124人で、その多くは政情不安や貧困を抱えるコンゴに滞在している援助活動従事者、国連平和維持部隊、その他の人々だった。コンゴ在住の外国人には許可証の料金に割引が適用される。

 公園当局者は、より多くの観光客を呼び寄せるのに十分な数のゴリラを人に慣れさせる一方で、人への慣れがもたらす危険にさらされるゴリラの頭数を必要最低限にとどめている。公園を守っているのは、自動小銃「AK47」で武装した約200人のレンジャーだ。

 人に慣れたゴリラの中でわずかに生き残ったうちの1頭が「チマヌカ」だ。今やシルバーバックに成熟したチマヌカと妻3頭、子供15頭は公園のスターとなっている。

By Michael M. Phillips