ここから本文です

社会的大妥協に向けた金属労組の決断

6/20(火) 11:46配信

ハンギョレ新聞

通常賃金滞納額など活用する方針 「基金として下請労働者の条件を改善」  使用者側、グループ共同交渉に難色 専門家ら「雇用創出のために 政府が対話の場を作るべき」

 民主労総の全国金属労働組合(金属労組)が正社員の賃金(債権)から2500億ウォン(約244億円)を拠出し、下請け会社や非正規労働者のために使うと宣言したのは、労働市場の二重構造を改革するため、労働界から先に手を差し出した、意味ある進展だと評価される。「財閥から先に取り分を減らさなければならない」という「先使用者責任論」から一歩ひいて、「正社員労働組合の責任論」を一部受け入れた形であるからだ。これによって5000億ウォン(約489億円)台の「雇用連帯基金」が現実化し、韓国社会の集団的労使関係の模範が誕生するかに注目が集まっている。しかし、連帯基金が現実化するためには、現代・起亜車の協力が不可欠だが、使用者側はグループ社の共同交渉に難色を表明しており困難が予想される。

 金属労組の今回の提案は、労働者らが受けるべき通常賃金債権と毎年賃金団体交渉の合意の際に労働者らがもらう賃金引き上げ分の一定額を財源としている。「チョン・モング会長とチョン・ウィソン副会長の株式配当金の一部」をシードマネーにすべきと主張していた昨年とは全く異なる。正社員自らの賃金を差し出しただけに、雇用連帯基金はさらに劣悪な境遇にある下請け会社の労働者たちのために使われるものとみられる。金属労組の関係者は「現代・起亜自動車の場合は、昼間連続2交代制(昼間組8時間、夜間組8時間勤務)を通じて、労働時間が短縮されたが、協力会社や下請け会社の場合、10時間ずつ勤務したり、昼夜間交代で働いているところも多い」とし、「連帯基金を下請け会社の労働時間を減らし、雇用を拡大するのに使うこともできるだろう」と話した。

 しかし、金属労組の提案が現実化するためには、乗り越えなければならない課題が多い。まず、現代・起亜自動車がこれに応じるかどうかだ。金属労組は、系列会社の賃金・団体交渉が事実上、現代自動車本社の主導の下に行われてきたことを挙げ、系列社の共同交渉を要求してきたが、これまで会社側は応じなかった。

 第2の課題は、雇用連帯基金造成の核心のシードマネーである未払いの「通常賃金」の支給開始時期と規模を労使が合意できるかどうかだ。現代・起亜自動車系列会社の17社のうち13社で訴訟が進められており、原告の数も9万2千人を上回る。労組は労働者1人当たり平均賃金債権額を2100万~6600万ウォン(約205~645万円)と推算する。すでに2013年末、大法院(最高裁判所)は賃金の相当額を占める「定期ボーナス」が通常賃金に含まれると判決したが、現代・起亜自動車はまだこの基準に基づいた賃金体系に改編していない。金属労組の関係者は「昨年基準で1人当たり700万~1200万ウォン(約68~117万円)の賃金未払い問題が持続的に発生しているにもかかわらず、会社側は通常賃金に合意せず、訴訟を推し進めている」と話した。韓国労働研究院のチョ・ソンジェ労使関係研究本部長は「訴訟費用を負担しながら社会的対立をもたらすよりも、労使が妥協するのが望ましい」とし、「労組が(雇用連帯基金という)前向きな処置を提案したからには、経営界も大企業労組の利己主義を非難するだけの受動的な対応ではなく、両極化の解消に向けた方策を積極的に提示する必要がある」と指摘した。

 しかし、現代自動車側は労組の提案に否定的な反応を見せた。現代車の関係者は「通常賃金訴訟で会社側が2審まで勝訴した状況で、労組が1人当たり数千万ウォンを受けることで訴訟を終わらせようとすること自体が無理押しだ」とし、「2500億ウォンは労組が主張する賃金債権の3%にすぎない金額だが、これは労組が先制的に犠牲にするのか疑問」と反論した。現代車は2審まで会社側が勝訴したが、起亜自動車は1審が6年間進行中で、労組側が勝訴する可能性が高い状態だ。 起亜車の場合、通常賃金訴訟額も遥かに大きく6000億ウォンで、遅延利息を含めると1兆ウォンに上る。

 金属労組は政府に雇用連帯基金の運用に関するコンサルティングを要請するなど、議論のテーブルに政府を引き出す計画だという。すでに文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、雇用創出に向けた正社員労組の譲歩と社会的対話・妥協の重要性を再三強調した。イ・ビョンフン中央大学教授(社会学)は「政府は金属労組の提案を労働市場の二重構造を解消する良いシグナルとして歓迎し、社会的対話と協議の場を作るのに積極的に取り組むべきだ」と提言した。

パク・テウ、チョン・ウンジュ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:6/21(水) 11:38
ハンギョレ新聞