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【MX-5カップジャパン 第3戦】マツダ、チーム、ドライバー…それぞれのレースへの思い

6/21(水) 12:15配信

レスポンス

米国で2006年から始まったワンメイクレース『グローバルMX-5カップ』。マツダがサポートして世界同一仕様車、世界統一ルールで行われる人気のレースシリーズだ。

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2017年から日本でも『グローバルMX-5カップジャパン』として全5戦が開催されることになり、6月18日に第3戦がツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で実施された。世界同一仕様車によるレースのため、参加するすべてのチームが北米仕様の2.0リットルエンジンを搭載した左ハンドル車の『Mazda MX-5(日本名 マツダ ロードスター)』を利用する。

MX-5は通称“カップカー”と呼ばれている。エンジンは量産車と同じものを積むが、専用ロールケージを設置したり、足回りに専用部品を採用することでレース専用車として販売。グローバルMX-5カップはトップレーサーへの登竜門カテゴリーに位置付けられていることもあり、レース専用車でありながら車体価格は788万4000円(税込)に抑えられている。

今回はレースに関わるマツダ、チーム、ドライバー、それぞれの思いを聞いた。

◆人間がいかに能力を発揮するかを問うレース

「毎回違うサーキットで、同じクルマ、同じチームだけど走りが変わるアスリート型のモータースポーツです。サーキットに応じて各チームのチャレンジが続くので、それを少しでもサポートしたい」。

そう語るマツダ商品本部でロードスターアンバサダーを務める山本修弘氏は、「モータースポーツという以上は“スポーツ”なんです。人間がいかに能力を発揮するか。クルマという道具を使って、ドライバーだけではなくチームのスタッフやメカニックが一緒になって大きな成果につなげるのです」と続ける。



各チームが同じMX-5を使うが、シリーズ戦で異なるサーキットを転戦するため、条件がレースごとに変わってくる。直線が長くスピードが出せるコースがあれば、ストップアンドゴーの続くコースもある。チームとドライバーは協力して戦略を練っていく。

「みんなでレースを組み立てたり、想像したりできる。そういう、人とチームの戦いが毎回あることが醍醐味だと思うんですよね。そういう魅力がもっと出てくるといい」。

クルマの性能差で勝敗が決まるのではなく、人間の戦いになるのがグローバルMX-5カップなのだ。山本氏は一般向け量産車のロードスターもレース専用車のMX-5も「スピードやコーナーリングのGは違うけど、やっていることは一緒」と話す。

「MX-5を運転する楽しさは、コンビニへ買い物に行くシーンから始まり、サーキットでも走れるシーンにまでつながっていく。それがこのクルマの大切なところで、お客様に知ってもらいたいし、伝えていかなければならないと思います」。



量産車とMX-5の開発は同時進行で行われている。2006年に先代ロードスター(NC型)を使って米国でレースが始まった。2016年から現行モデル(ND型)に変わり全10戦が開催され、開幕戦は40台が出場した。

「僕たちと米国のチームが一緒になってこのクルマを育てていこう、という想いがありました。開発時からトム・ロング氏(開発ドライバー)に見立ててもらい、どういう方向にMX-5を育てていったらいいのか一緒に考え、プロトタイプが完成した時点で乗ってもらいました」。

当初はエンジンを日本展開のロードスターと同じ1.5リットルにするか、それとも米国展開の2.0リットルにするか悩んだという。2種類の車体を用意してロング氏に試乗してもらうと、「1.5リットルのハンドリングが抜群だ。これにしたい」という言葉が返ってきた。しかし、1.5リットルでは米国ユーザーの期待に応えられないかもしれない懸念があった。

「アメリカでは2.0リットルだから、それよりも遅くなってはお客様の期待に添えない。最後は、アメリカの量産車が2.0リットルだから、2.0リットルで開発する判断をしました」。

一方で専用パーツは登竜門カテゴリーでの使用を想定しているために、車体価格が上がらないように考えられた。

「スリックタイヤを履いているのにサスペンションはラバーブッシュです。普通だったらスリックを履いているならピロボールにしろって言われそうなんだけど(笑)。フロントキャリパーも量産のストックなんです。そこは先のことを考えて、お客様に負担をかけられないし、このクルマは登竜門になるのでイコールコンディションでちゃんと走るクルマを作ることが狙い。性能を良くするための仕事はそんなに必要じゃない。そういう思いで作っています」。



グローバルMX-5カップジャパン第3戦のエントリーは11チーム。うち2チームはメディアのスポット参戦だ。山本氏は「メディアのクルマを使わない状態で15台は欲しかったな」と少し残念そうな顔を見せたが、まだ1年目のレース。これから米国のような人気シリーズになっていけばいい。

マツダ本社のある広島県から「HM RACERS」チームが参戦している。そのことに触れ、「地元チームを地元のディーラーが支える。そういうのがもっと広がるといい。そうすれば関係者がいっぱい観に来てくれるし、家族の応援もある。地域をあげて応援していこう、人に対してのサポートにつながります」と期待を寄せる。

ロードスターの世界観をより広めていくレースシリーズ。第3戦は20歳の吉田綜一郎選手(No.740、KOTA RACING)が初優勝を成し遂げた。シリーズチャンピオンは米国での世界一決定戦に挑戦できる。若手選手がこのレースをステップアップの場として世界へ羽ばたいていけば、日本でも人気は高まっていくはずだ。

山本氏もそんな未来を描いているのだろう。表彰式では「これからも盛り上げていきたいです」と力強い宣言をした。

◆オール広島で参戦するHM RACERS

広島発のチーム「HM RACERS」には、広島マツダのグループ会社であるカーエース広島が、クルマの違う楽しみ方を社員に感じてほしいという願いからメカニックを送り込んでいる。

カーエース広島の永田康郎会長は、「整備業界は新入社員を募集しても思ったほど人数が集まらない。そういうこともあり広島マツダなら整備の仕事はもちろんあるけど、モータースポーツにもタッチできる部分もあることをアピールしたかったのです」と教えてくれた。



普段はディーラーで働くメカニックたちだが、レースがあればサーキットに出向くのだ。グローバルMX-5カップジャパンでは専従メカニック1名の他に、開催地ごとに2~3名を希望制で集めている。ツインリンクもてぎには合計4名のメカニックで乗り込んだ。

「色々なことを経験してもらって、お店に帰ったらお客様に伝えたり、店舗の中で共有してもらいたいです。レースがないときは広島マツダの店舗でレース車両を展示しています」。

売ることが仕事のディーラーだけに最終的には販売につなげることが目的だが、地元への思いもある。

「ロードスターを地元のマツダが作る。我々も広島のディーラー。ドライバーも広島出身、広島在住の桧井(保孝)選手でオール広島です」。



ボディには広島マツダが建設・運営に携わった広島市の複合ビル『おりづるタワー』のロゴマークが掲出されている。スポンサーも地元なのだ。7月2日に開催される第4戦は岡山国際サーキット(岡山県美作市)で開催される。広島のお隣だけに「次回は会社でバスをチャーターして応援団を作りますよ」と永田会長は笑った。

第1戦は8位、第2戦は4位と順位を上げてきた。第3戦ではスタートまもなくリタイアとなったが、地元も近い岡山での活躍を期待したい。

◆米国進出を目指す若きドライバー

高校生時代にレンタルカートを始め、2年で本格的なレースの世界へ足を踏み入れた吉田綜一郎選手。20歳の青年は「KOTA RACING」のハンドルを握る。

第1戦スポーツランドSUGO(宮城県村田町)は4位、第2戦鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)は3位とグローバルMX-5カップジャパンで着実に存在感を示し、第3戦では初優勝を成し遂げた。その結果、ポイントランキングでリーダーに浮上。残り2戦で初代シリーズチャンピオンを狙う。



「クルマも自分もちょっとずつ進化してきていると思う」とはにかみながらも自信を見せる吉田選手。これまではナンバー付きのクルマでレースをこなし、N-ONEオーナーズカップのシリーズチャンピオン獲得など結果を残しているが、スリックタイヤのレース専用車での戦いは今シーズンからだ。

「MX-5カップはイコールコンディションのレースで、成績が良ければ海外のレースにもつながる。若手のステップアップにはちょうどいいカテゴリーだと思います。でも、クルマが難しいので腕が一番だなと感じます。どれだけクルマの情報を感じ取って、(サーキットによって)セッティングを変えるかも実力になります」。



吉田選手の目標は米国のレースだ。「NASCARとか観客の多さに憧れます」と目を輝かせる。第3戦では漫画『サーキットの狼』で知られる池沢早人師(さとし)先生もピットから吉田選手のレース運びに注目していた。育ち盛りのドライバーに期待も大きい。

「とにかく吉田選手の若さは大きいです。米国はMX-5カップが盛んだから、あっちで揉まれてほしいですね。色んなスポーツで本場の環境で活躍する日本人選手がいます。そこからスターが生まれる可能性があると思う。吉田選手はオーストラリア留学の経験もあるし、英語が話せる。日本でチャンピオンを獲って、かっこよく米国に行ってほしい。そこで頭角を現してほしいです」。



第3戦を終えた直後、「まずテストに行きたい」と吉田選手は早くも7月2日の次戦を見据えていた。セットを合わせる力が不足していることを自覚し、そこを伸ばすことでこれまで以上にトップ争いが可能になる。

第4戦の岡山国際サーキットと9月24日の最終第5戦の富士スピードウェイ(静岡県小山町)は好きなコースだという。「得意な分だけ上に行けると思います」と意気込みを見せた。

シリーズチャンピオンになれば米国カリフォルニア州のマツダレースウェイ・ラグナ・セカで10月に行われる世界一決定戦への出場権も獲得できる。吉田選手のレース歴はまだ3年だが、素質は十分に備わっていると言えるだろう。



マツダ、チーム、そして選手とそれぞれが三者三様の立場で挑むグローバルMX-5カップジャパン。日本のモータースポーツシーンをより熱くするレースとして根付くよう、今後に期待したい。

《レスポンス 五味渕 秀行》

最終更新:6/21(水) 12:15
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