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エンゲル係数が示す「生活水準の低下」 生鮮野菜価格の上昇による一時的押し上げ

6/21(水) 17:20配信

ZUU online

経済的なゆとりを示す「エンゲル係数」が、我が国では2015年から急上昇している。特に2016年には総務省「家計調査」の勤労者世帯ベースで前年に比べて+0.6ポイント高い24.2%となっている。この背景には、家計の節約や食料品価格の上昇があるといわれている。

■エンゲル係数で示される生活水準の低下

エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食料費の割合であり、食料費は生活する上で最も必需な品目のため、一般に数値が下がると生活水準が上がり、逆に数値が上がると生活水準が下がる目安とされている。

■エンゲル係数は相対価格と所得と消費性向に分解可能

エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食料費の割合とされているが、その変動には、いずれも数量と価格が関係している。つまり、消費者物価(総合)に対して相対的に食料品価格が上昇すれば、エンゲル係数の押し上げ要因となる一方で、相対的に食料費以外の支出抑制もエンゲル係数の押し上げ要因となる。

また、分母の消費支出は可処分所得と平均消費性向、すなわち家計が自由に処分できる所得と世帯の消費意欲に分解できる。そして、可処分所得は実収入すなわち世帯の現金収入を合計した税込み収入に左右される一方で、非消費支出すなわち税金や社会保険料など世帯の自由にならない支出にも左右される。

従って、こうした要因に分解すれば、エンゲル係数がなぜ上昇したかを分析できる。

エンゲル係数=(実質食料費×食料費価格)/(実質消費支出×消費者物価)
=実質食料費×(食料費価格/消費者物価)/(実質可処分所得×平均消費性向)
=実質食料費×食料費相対価格/((実質実収入-実質非消費支出)×平均消費性向)

■エンゲル係数の上昇は家計の節約行動が主因

2016年のエンゲル係数は前年比で+0.6ポイント上昇し、2014年から累計で+1.8ポイントの上昇を記録した。しかし、食料品の値上げが相次いでいる一方で、食料品の消費量は減っているように見える。そこで、2014年からのエンゲル係数の上昇率を食料品の消費量と相対価格および可処分所得、平均消費性向に分けて要因分解してみる。すると、食料品の相対価格が+0.9ポイントの押し上げに働く一方で、平均消費性向の低下要因がそれを上回る+1.0ポイントの押し上げ要因になっていることが分かる。

一方、可処分所得の内訳では、実質実収入の増加と非消費支出の増加が相殺され、トータルで▲0.1ポイントの押し下げ要因となる。また、実質食料品消費の要因は+0.0%ポイントの押し上げに止まる。つまり、家計の可処分所得の低下ではなく、食料品の相対価格上昇と消費者の平均消費性向の低下が、近年のエンゲル係数上昇の実態だ。

■食料品価格の上昇は為替よりも天候不順が主因

まず、相対価格上昇の主因を探るべく、総務省「消費者物価指数」を用いて2015年以降の食料品価格上昇率を品目別に寄与度分解してみると、野菜・海藻の押し上げ寄与が最大となる。一般的には、日本の熱量供給ベースの食料自給率は近年39%で推移していることから、アベノミクスで円安が進み、これが食料品の輸入物価上昇をもたらし、食料品価格上昇に結びついていると言われている。

しかし、2016年における飲食料品の輸入物価はむしろ円高で前年比▲11.8%も下落している。そして、野菜・海藻の押し上げ寄与度1.1%のうち1.0%分が生鮮野菜価格の上昇で説明できる。野菜の国内自給率が8割であることからすれば、食料品価格上昇の主因は円安ではなく、天候不順に伴う生鮮野菜価格が上昇した要因が大きいと推察される。

次回は、平均消費性向が低下している背景について分析し、エンゲル係数上昇の本当の理由を解明する。

永濱利廣(ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部卒、2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年4月第一生命入社、1998年4月より日本経済研究センター出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部、2016年4月より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使。

最終更新:6/21(水) 17:20
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