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だからミニストップの「ハロハロ」は売れている、知られざる“実験力”

6/21(水) 8:18配信

ITmedia ビジネスオンライン

 そろそろ「ハロハロ前線」が北上しそうである――。

 「な、なんだよ。『ハロハロ前線』っておかしいでしょ」と思われたかもしれないが、こちらは大真面目である。ミニストップが発売しているスイーツ「ハロハロ」に前線があることをご存じだろうか。毎年4月下旬に販売して、気温上昇とともに売り上げが伸びていき、30度を超えるとピークを迎えるのだ。

【今年の新フレーバーは?】

 桜前線は「3月下旬に九州南部に上陸。その後北上して、5月上旬に北海道に」と言われているが、ハロハロ前線はちょっと違う。桜前線と同じように、西の店舗から売れ始めるが、気温が低くなる北の店舗から終売が始まるのだ。例えば、首都圏の店舗では8月に入ると「さあ、ジャンジャンバリバリ売っていくぞー!」と書き入れ時になるわけだが、東北の店舗は違う。「そろそろ氷の季節は終わりだね。次は肉まんだね」と機械の入れ替えが始まるのだ。

 ハロハロを食べたことがないという人に、ここで簡単にご紹介しよう。「ハロハロ」とはフィリピン版の“カキ氷”のことで、ミニストップが1995年に日本人向けにアレンジして発売したところ、たちまち大ヒット。その後も順調にファンを増やし、2015年は過去最高の売り上げに。発売してから22年が経つ、ロングセラー商品なのである。

 ミニストップにはエースで4番のソフトクリームが存在しているので、ハロハロは少し目立たないかもしれない。しかし、期間限定商品としてしっかり結果を残していることから、“代打の神様”といった存在なのだ。そんなハロハロは、どのようにして開発しているのか。発売当初のフレーバーは2種類だったが、2017年は7種類に。開発の舞台裏について、同社で広報を務めている山盛雅美さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

●ハロハロの特徴は「ハーモニー」

土肥: ハロハロの特徴といえば、なんといっても「ハーモニー」ですよね。24時間以上かけてゆっくり凍らせた「純氷」を使っている。なぜこの氷を使っているかというと、家庭の冷蔵庫でつくる氷よりも溶けにくいからなんですよね。しかも、不純物を取り除いていて、食感はシャリシャリしている。氷の上に、フルーツが入ったゼリー、わらびもち、みたらし団子などがトッピングされていて、てっぺんにソフトクリームがどーんとのっている。

 1995年に発売したところ、すぐにばーんと売れた。その後、毎年期間限定で発売しているのですが、そもそもどういったきっかけで商品化されたのでしょうか?

山盛: ミニストップが創業したのは1980年。90年代に入ってからソフトクリームが徐々に売れていったのですが、そのソフトクリームを使って新しいデザートをつくることができないか、といった話になりました。いろいろ調査して、フィリピンにある「ハロハロ」というスイーツに注目しました。アイスクリーム、フルーツ、氷などが入っていて、現地のタガログ語で「まぜこぜ」を意味するんです。

 下の写真を見ていただけますか。どちらもハロハロのラムネ味ですが、左は95年に発売したモノ、右は翌96年に発売したモノになります。

土肥: あれ、なにか違いますね。

山盛: 96年に発売したラムネをみると、下に氷が入っていて、その上に、ゼリー、ソフトクリームをトッピングしています。でも、最初に発売した95年のモノは違う。下にゼリーが入っていて、その上に、氷、ソフトクリームをトッピングしています。この形だと、まぜこぜにすることができません。お客さまからも「ひと口目にゼリーを食べたい」といった声が多かったので、翌年に変更しまして。その形がいまも続いているんです。

土肥: なるほど。過去のフレーバーをみていると、最初の年はラムネとイチゴだけ。その後、宇治金時、桃、巨峰などさまざまな種類が登場していますが、気になったことがひとつ。ラムネだけはずーっと発売していますよね。それはなぜ?

●ラムネをずーっと発売している理由

山盛: もちろん売れていることが理由にあるのですが、ラムネを購入しているのは7割が男性なんですよね。しかも女性と比べて男性は、同じモノを何度も食べる傾向がある。こうした背景があって、20年以上も販売しているんです。またハロハロはカキ氷が入っているので、食べると「懐かしさ」を感じる人が多いのではないでしょうか。

土肥: ラムネのシロップは懐かしいですねえ。子どものころ、夏祭りでよく食べました。

山盛: いや、ちょっと待ってください。よーく、思い出してください。カキ氷でラムネ味ってありましたか?

土肥: い、言われてみると、なかったかも。イチゴ、メロン、レモンなどをかけて食べたことはあるけれど、なぜラムネを食べたことがあると思ったんだろう?

山盛: ビー玉が入ったラムネのジュースを飲まれたからではないでしょうか。だから、カキ氷でもラムネを食べたことがあると勘違いしたのかもしれません。でも、ドイさんのようにハロハロを食べながら「昔、カキ氷でラムネ味を食べたなあ」という人が多いんですよね。

土肥: 「ハロハロのソーダを食べたよ~」という人も多そう。き、記憶って恐ろしい。その後、売れ行きはどうだったのでしょうか?

山盛: 順調に伸びていきました。フレーバーも増やしていったのですが、課題がひとつありました。それは、女性ファンを増やすこと。先ほども申し上げましたが、ハロハロは男性ファンが多い。なぜ女性ファンが増えないのかなあと思って調べてたところ、「カキ氷は子どもが食べるモノ」といったイメージが強いので、「ワタシはちょっと……」と思っている人が多いことが分かってきました。

土肥: やはり、「夏祭りに食べる」といったイメージが強いのかもしれません。

山盛: 年を重ねて、会社で働くようになると、女性はオシャレな商品にどうしても目がいってしまう。また、新しいモノが好きなので、どうしても新商品に目がいってしまう。こうした傾向があるのに、ハロハロには華やかさが不足しているのではないか。見た目でも楽しめるようにしてはどうか。このようなことを考え、2014年に「白くま」というフレーバーを発売しました。

 ラムネの場合、カキ氷、ゼリー、ソフトクリームという形ですが、白くまでは見た目の華やかさをアピールするために、フルーツなどの盛り付けにチカラを入れました。パインやみかんなどのほかに、小豆も入れました。それだけでは物足りなかったので、彩りとして赤いゼリーを加えました。また、それまでのカップは縦長タイプだったのですが、白くまではフルーツなどを盛り付けができるようにフラワー型を採用しました。130万食の限定商品だったのですが、あっという間に完売。

 白くまがヒットしたことによって、その後、女性を意識したフレーバーを増やすことに。例えば、2015年に「黒蜜きなこ」を発売したところ、爆発的に売れました。当初、多くの女性に食べていただければと思っていたのですが、「和」のイメージが強かったことからシニア層にも広がりまして。この年、ハロハロの売り上げが過去最高になりました(2011年を100とした場合、2015年は150)。ちなみに、2017年は過去最高の7種類を発売します! 2015年の売り上げを超えることを狙っています! 過去最高です!

土肥: 鼻息荒いです!(笑)

●ハロハロは実験販売しなければいけない

土肥: ハロハロは毎年4月下旬に発売して、終売は9月ごろ。開発期間はどのくらいかけているのでしょうか?

山盛: どのくらいだと思いますか?

土肥: ハロハロの販売が終わって、「やれやれ、今年もオレたちがんばったね」と言って、体を休める。もみじが色づき始めたころから、「じゃ、そろそろ来年の商品を考えるか」と企画がスタートするのでは?

山盛: 残念、違います。商品によって違いますが、だいたい2年かけています。

土肥: え、そんなに? ちょっと長くないですか? 「来年はマンゴーでいくぞー!」と決まったら、マンゴーのほかにトッピングするのはコレとコレね。はい、発注。はい、完了。あとは、発売のタイミングを待つだけなのでは?

山盛: いえいえいえ、話はそんなに単純ではありません。なぜ開発期間に2年もかけるのか。新商品については「実験」をしなければいけないからなんです。

土肥: 実験? なんですかそれは?

山盛: 今年発売する商品は、昨年の春から夏にかけて実験販売をしているんです。ということもあって、企画はその前年に始めなければいけません。

土肥: 今年発売している「ドデカミン」とか「フルーツ杏仁」などは、昨年どこかの店で実験販売をしていたということですか?

山盛: はい。毎年、7~9種類ほど実験を行っています。その中から、スコアのよかったフレーバーを翌年に発売するといった形ですね。

土肥: 実験はどこで行っているのですか?

山盛: 商品によって違います。同じ店ですべての商品を実験しているわけではありません。A店はこの商品で、B店はこの商品で、C店はこの商品で、といった感じ。ミニストップに行くと「当店限定の取り扱い」などと書かれた紙が貼っていて、それが実験をしている商品ですね。

土肥: どういったところを評価しているのですか?

●味を追求して、オペレーションを簡素化

山盛: 最も注目するのは、やはり「売り上げ」ですね。ただ、売り上げがよかったからといって、すべての商品を販売しているわけではありません。例えば、オペレーションがとても難しい場合があるんです。「トッピングがやりづらい。これじゃあ、店でつくることができない」という声が多ければ、商品化は難しい。なぜか。店には10代から80代の人まで働いていて、全員がハロハロをつくらなければいけません。また、アルバイトも多い。仕事に慣れてきたら、ハロハロをきちんとつくることができなければいけません。

 お客さまから「ハロハロでこうした味をつくってほしい」「もっと複雑な味をつくってほしい」といったご意見をいただくことがあります。開発担当者はそうした商品をつくろうと思えばつくれるのですが、やらない。なぜなら、全店でつくれるモノでなければいけないから。味を追求しながら、オペレーションをできるだけ簡素化する。開発担当者は、この2つを両立させなければいけません。

土肥: オペレーションが複雑だったので、商品化が難しかった商品はありますか?

山盛: 残念ながら、あります。例えば、2015年にヒットした「黒蜜きなこ」もさまざまな問題があったのですが、それをクリアしたので販売することができました。この商品はきな粉を使っている……つまり大豆が入っているんですよね。大豆はアレルゲンに該当するので、取り扱いには注意が必要になります。しかし、実験してみると問題が出てきました。きな粉は大きな袋に入っていて、そのまま商品にかけてみたところ、周囲に飛び散ってしまうことが分かってきました。

 きな粉は細かいので、どうしても飛び散ってしまう。使うときに、飛び散らないようにするにはどうすればいいのか。当初の袋は四角形だったので、その形に注目しました。袋の形を細長くして、口元を小さくすれば、飛び散ることを防ぐことができるのではないか。このように考え、試作品をつくりましたが、うまくいきませんでした。口元が小さいので機械がきな粉を入れることが難しくなったんです。ただ、メーカーさんに無理を言って、対応していただけることになりました。

 また袋を細長くすることで、新たな問題が出てきました。形状を変えたことで、きな粉の塊がどうしてもできてしまう。これではいけないということで、細長い袋に入れてもきな粉らしさがきちんと残るきな粉を見つけて、それを使うことにしました。このようにオペレーションの問題をクリアして、やっと発売することができました。

●ハロハロが売れている店の共通点

土肥: この取材前に、ハロハロの「みたらし団子」を食べてきました。きざみのりの香りと、あられのカリッとした食感を楽しめましたが、この商品の開発はいかがでしたか?

山盛: 苦労しました。きざみのりの長さひとつとっても、すぐに決まりませんでした。一般的に販売しているきざみのりの長さは、10ミリと20ミリが多い。しかし、みたらし団子に使っているのは15ミリなんです。

土肥: たった5ミリの差ですよね。どちらでもいいのでは?

山盛: いえ、そーいうわけにはいきません。10ミリをのせたところ存在感がイマイチだった。一方、20ミリだと存在感がありすぎる。そこで、ハロハロの器のサイズに合うように、15ミリのきざみのりをつくってもらいました。

 あと、あられときざみのりは別々の袋に入れていたので、手間がかかっていました。あられの次はきざみのり……といった具合に。現場での負荷を減らすために、あられときざみのりをひとつの袋に入れました。また、一緒にかけやすいように、間口が広めの小袋にしました。

土肥: いやはや、ハロハロのフレーバーひとつとっても、苦労がいろいろあるんですね。

山盛: ちなみに、売れている店というのは、キレイにつくっている傾向があるんですよ。オーナーや店長がスタッフにこのような説明をしているんです。「もし自分が購入して、崩れているハロハロが出てきたらどう思う? 嫌でしょ。お客さまに嫌な思いをさせてはいけないから、キレイにつくろうね」と。

土肥: なるほど。取材前に食べた「みたらし団子」もキレイにつくられていました。ちなみに、ミニストップの社員はソフトクリームをつくる研修があるんですよね。ハロハロもソフトクリームを使っていますよね。当然、山盛さんも研修を受けているので、キレイにつくれるはず(キラーン)。

山盛: あ、そろそろ時間ですね(汗)。本日はありがとうございました。

(終わり)