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iPhone誕生10周年に見た「macOS」「watchOS」「tvOS」の進化

6/21(水) 20:04配信

ITmedia PC USER

 WWDC 2017の基調講演を振り返って最も印象的だったのは、Macの発表が充実した講演だったことだ。AppleはVRコンテンツ制作など新領域への対応を強化したほか、かなり意欲的な新技術を盛り込んだ新OS、「macOS High Sierra」を発表した。

【VR開発者向けの取り組み】

 それと同時に、iMac、MacBook、MacBook Proの全7モデルを第7世代Core(開発コード名:Kaby Lake)を搭載した新モデルに刷新。その上、年末に発売予定のプロフェッショナル向け新モデル、iMac Proの詳細も披露した。しかも、基調講演後には、このiMac Proとは別にMac Proの後継となるディスプレイセパレート型のプロ用デスクトップ製品も開発中であることを明かしており、iOS全盛の今でもコンテンツ制作の道具として高性能、大容量と圧倒的な操作性を誇るMacに本腰を入れていることを示してみせた。

 WWDC 2017基調講演レポート第3弾では、世界第2位のパソコンプラットフォームであるMacの進化とあわせて、Apple TV用のtvOSとwatchOSについても紹介したい。

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●watchOS 4:腕の中で進化するインテリジェンス

 あらゆる動画配信サービスを「アプリ」に変えてしまったAppleTVのtvOSについての発表はシンプルだった。Hulu、Netflixなど既に50以上ある動画配信アプリの1つとして人気が高く、オリジナル番組も多いAmazon Prime Videoが加わる。現時点では日本のPrime Videoがいつごろ対応するかなどは不明だが、とりあえず米国では秋にも対応する模様だ。

 世界で最も売れているスマートウォッチ「Apple Watch」のwatchOSは、これと比べるとかなり本格的に進化する。最新バージョンであるwatchOS 4の特徴は、Apple Watchの顔ともなる時計の盤面にいくつか新しいバリエーションが加わったことだ。

 最大の特徴はSiriフェース。Siriインテリジェンスが、ユーザーのスケジュールや、ユーザーの行動パターンから分析した利用しそうなアプリを、現在時刻や前後の行動などから類推して表示する。例えば、朝はその日の予定を表示するが、夕方になると日没時間やHomeKit対応の照明を操作するパネルなどが表示される、といった具合だ。

 盤面の左上にはSiriを呼び出すボタンも用意され、デジタルクラウンと呼ばれるリュウズを回せば、1年前の写真など他のオススメコンテンツも見ることができる。もっとビジュアル中心の盤面を楽しみたい人には、新たに万華鏡のようなアニメーションをする盤面も加えられる。

 最も子供たちから人気を得られそうなのはトイストーリーの盤面だろう。ウッディやバズ・ライトイヤー、ジェシーといったお馴染みのキャラクターがApple Watchの画面がつくたびに異なるアニメーションを楽しく演じてくれる。

 Apple Watchといえば、日々の生活の中での運動を意識させる「アクティビティ」機能が非常に人気が高いが、watchOS 4はユーザーの日々の生活習慣を見て、より達成しやすい目標を設定したり、良いタイミングを見計らってあと一息で目標が達成できることを知らせて背中を押したり、長期間に渡ってモチベーションを保てるように、前月の成果に基づいた、そのユーザーだけの達成しやすい月間目標を設定したりできるように進化し、目標を達成した際には、これまでよりも華やかなアニメーション表示で祝福してくれる。

 一方、日々、エクササイズをしている人のために「ワークアウト」のアプリも進化させた。すぐにエクササイズを計測できるように、開始までの操作が簡略化されたのに加え、水泳でプールの端までたどり着いて休憩をするたびに自動的にどれだけの距離泳いだかを泳法から算出して記録する機能、心拍数を測りながら激しい有酸素運動を行うエクササイズ法「高強度インターバルトレーニング」にも対応し、消費したカロリーをより正確に算出し記録する。水泳の後にサイクリングなど、続けて他のエクササイズをする場合も一連のエクササイズとして記録できるようになる。

 ちなみに夜間のランニングエクササイズ時に便利な機能として、Apple Watchの画面が定期的に点滅して、自動車などに自分の存在を分かりやすくする機能なども追加されている。

 エクササイズといえば、多くの人々はスポーツジムに通って、ジムに置かれたランニングマシーンなどの機器でエクササイズを行なっている。エクササイズ機器は、現在の走っている土台の傾斜具合など、Apple Watchが知り得ない情報を持っている一方で、Apple Watchはユーザーの心拍数などエクササイズ機器が持っていない情報を持っている。

 Appleは世界のエクササイズ機器の80%を占める7メーカーと提携して、将来のエクササイズ機器にApple Watchで軽くタッチをするだけで自動的に「ワークアウト」アプリが起動し、Wi-Fiを通して相互に必要データの通信が行われる仕組みを用意する。

 「ミュージック」アプリもSiriフェースや「ワークアウト」アプリ同様、カード状の情報パネルが縦に並び、それをデジタルクラウン(リュウズ)を回して選択する新しいデザインになった他、ユーザーが外出中に聞きそうな曲を自動的に同期してダウンロードする機能が追加されている。

 ハードウェア関係ではBluetooth通信機能が強化され、持続グルコースモニター(体に針を刺して血糖値の変化をリアルタイムで監視できる装置)やZeppのテニス、野球、ゴルフ用スウィングセンサー、サーフボード用のセンサーなど多彩な機器との連携が可能になる。

 watchOS 4は、この秋、Apple Watchに無料のアップデートとして提供される。

●新macOSはプライバシー保護でIT業界と対決姿勢

 新OS、macOS High SierraにはSafari、メール、写真といった基本アプリを大幅強化した上で、macの性能の基本に関わる根底部分にもメスを入れている。

 Safariとメール、写真はいずれも動作が大幅に高速化されており、Safariに関してはGoogleのChromeと比べて1.8倍ほどの動作速度「世界で最も高速なデスクトップ用Webブラウザ」をうたっているが、それ以上に話題になっているのが「インテリジェント・トラッキング・プリベンション」(インテリジェント追跡防止)だ。

 Appleは、ユーザーの趣向などの情報を集めて広告で利益を得るIT業界全体の流れに反して、以前から徹底したプライバシー保護を大々的に推し進めてきたIT企業だが、そんなAppleの姿勢を改めて強く感じさせたのがこの機能だ。

 最近では一度、どこかのWebサイトで気になる製品の情報を見ると、検索結果のページでも、ソーシャルメディアや、Web媒体の記事を読んでいるときも、その商品の広告があなたのことをしつこく追ってくる。これはインターネットの広告会社が常にあなたの行動を監視してターゲティングしているからだ。

 インテリジェント・トラッキング・プリベンションとは、Safariの側に組み込まれたインテリジェント機能が、こうした広告会社による監視を防いであなたがどんなWebページを見たかといった個人情報が一切漏れないようにする。

 もちろん、相変わらず検索結果のページやソーシャルメディアやWebの記事には広告が表示されるので、Web媒体の収益がなくなるわけではないが、広く一般に向けた広告が表示される。これによってAppleはプライバシーを漁っていたインターネット広告会社と対決姿勢に入ることになりそうだ。

 徹底してユーザーの側に立つAppleの姿勢が感じられるもう1つの改良は「オートプレイブロッキング」だ。Webページを開いた途端に勝手に動画の再生が始まり、大きな音が流れるようなWebページがあるが、この機能を有効にしておくと、どんなページでも、動画はユーザーが再生ボタンを押さない限り再生されなくなるという。

 メール機能は検索機能が改良され、目当てのメールが見つけやすくなるのに加え、使用容量を最大で35%ほど削減するように進化する。

 一方、「写真」は画面デザインが見直されたほか、認識した顔がMacだけでなくiPhoneやiPadといった別のデバイスとも同期されるようになった。また、登録された写真をPhotoshopなどほかのアプリで加工した後、「写真」ライブラリー内に保存する、つまり加工後の写真を保管できる機能が加わった。さらに「写真」アプリの(紙の)フォトアルバムを作る機能は、発注先を選べるようになり、今後さまざまな会社のフォトアルバムサービスに対応していく。

●最新技術にあわせて再設計されたmacOSの土台技術

 macOS High Sierraでは、土台技術も大きく進化した。なんといっても大きいのはApple File System(APFS)の採用だ。ファイルシステムというのはSSDやHDDに書類ファイルなどをどのように記録するかの方式。これまでのMacのファイルシステム、HFS+(Hierarchichal File System)は30年近く前、容量が800KBのフロッピーディスクの時代にできたHFSというファイルシステムをベースにしている。

 しかし、今のMacのストレージはHDDの時代を経て、SSDやFusion Driveに進化。Appleはこの機に、今のコンピューターにふさわしいファイルシステムを1から創造した。よりファイルの破損などが少なくて安全、それでいて標準で暗号化機能などを内蔵しているためマルウェアなどの心配も少なくなる。

 HDD同様にSSDにも寿命があるが、APFSではこれまでのファイルシステムよりもSSDの寿命を延命するような工夫もある。また、ディスクにアクセスする頻度を減らすことによってファイルの読み書きの速度を劇的に向上させている。

 例えば、数GBほどある動画ファイルの複製を作ろうとすると、数秒ほど時間がかかるが、macOS High Sierraでは一瞬で完了する。これまでのHFS+では、ファイル内のデータを最初から最後まで読みこんではディスクの別の場所に移すため、データ容量が大きいと時間がかかるのだ。

 これに対してAPFSでは、元になったファイルを読み込むことも、新しいファイルに何か書き込むこともない。ただ、ファイルの目録上の項目を増やしているだけだ(昔からMacを使っている人向けに書くと「エイリアス」に近い)。つまり、複製してできたファイルを開いたときも、複製元のファイルを開いたときも、ディスク上のまったく同じデータを参照する。

 ここで複製したファイルに編集を加えると、編集で加えられた変更部分だけがディスクに保存される。このようにディスクの読み書き部分が非常にインテリジェントに進化し、不要なアクセスを徹底して減らしたためにMac全体としての速度も向上することが期待されている。

 もう1つは(iOSの記事でも触れたが)動画や画像のファイルフォーマットの変化だ。高速なGPUをフル活用して高精細でハイコントラストな4K動画を従来(H.264という圧縮技術)より40%近く小さなサイズに圧縮できるH.265(通称、High Efficiency Video Coding。略してHEVC)を標準ファイル形式として採用する(同様に静止画はJPEGの代わりにHigh Efficiency Image Format、HEIFを採用する)。

 動画も写真も、カメラで撮ったそのままの情報はかなり巨大になる。そこで例えば、背景など同じ色が続く部分を簡略化して記録することで容量を小さくする圧縮という技術を行う。

 複雑な数式に基づく圧縮を使えばファイルサイズは小さくなるが、計算に時間がかかるためにファイルの書き込みや読み込みで待たされることがあり、一昔前はH.264の動画圧縮もものすごく時間がかかった。しかし、コンピューターの性能が進化し続けていることで、今はもっと複雑で圧縮効率の高い技術が使えるようになった。特にGPUというグラフィックス処理専用のプロセッサーの性能が劇的に上がったので、それにあわせたフォーマットに切り替えて、高精細さを保ったまま、ディスク上の容量もクラウドへのバックアップの容量もできるだけ小さく抑えようというのが仕様変更の意図だ。

 基盤技術の3つめの変更は、そのGPUの扱いだ。Macは機種やモデルによってIntelやAMDなど異なるメーカーの異なるGPUを採用しているが、ソフトウェアを作る人がいちいちすべてのGPUに対応しなくて済むように昔はOpenGLという技術を活用していた。

 その後、そのOpenGLよりもさらにうまくGPUを活用して、複雑な2Dや3Dのグラフィックスを10倍速く表示できるMetalという技術を開発したが、macOS High Sierraでは、そのMetalをさらに10倍ほど速くしたMetal 2を採用。対応したソフトではケタ外れのグラフィックスパフォーマンスを発揮できるようになる。その恩恵を常に感じられるように、Macでのウィンドウ表示などもすべてMetal 2を使って行われるようにOSを再設計したという。

 大きなデータを高速に扱うことに長けたGPUは、実はグラフィックスの処理に加えてもう1つ得意なことがある。AIブームで注目を集めている機械学習(Machine Learning)、つまりコンピューターに色々なものを認識させる技術への応用だ。Appleは今後、Macの開発者がそうしたMachine Learningを活用しやすいようにML Kitという開発用素材を用意し、主要な機械学習法を簡単に利用できるようにしている。

●VRコンテンツ制作の主力開発プラットフォームを目指すMetal for VR

 Mac用のMetal 2にはもう1つ特徴がある。macOSとして初めて外付けのGPUをサポートしたのだ。これによりThunderbolt 3ポートを搭載したMacであれば、たとえ本体側のGPUが古くなってからでも、GPU処理を高速化する外付けGPUをケーブルで接続して高速処理ができるようになる。

 この外付けGPUは市販品ではないものの、開発者向けに500ドルほどのDeveloper KitをAppleは提供する。AMD Radeon RX 580が入ったアルミ製のボックスでThuderbolt 3搭載のMacにケーブルで接続すると、それまでのMacではできなかったような高度なグラフィックス処理ができるようになる。

 そんな高度なグラフィックス処理の事例の1つとして、Appleが紹介したのがVRコンテンツの製作だ。同社はMetal for VRというOS内の基盤を用意し、HTC ViveなどのVRゴーグルの表示をOS側でサポート。また、ビデオ編集ソフト「Final Cut Pro X」でVR動画の編集に対応させる。

 これにあわせてVALVEが提供するVRコンテンツ配信プラットフォーム「Steam VR」のMac対応が発表されたほか、多くの開発者がゲーム開発などで利用しているUnityとUNREAL ENGINEのVR関連機能がMacに対応する。

 基調講演ではこのMetal for VRを使って開発されたIndsutrial Light&Magic(IL&M)のVRコンテンツのデモも行われた。IL&Mはスターウォーズの特殊映像制作で有名だが、デモで紹介されたのはVRゴーグルをつけてスターウォーズの世界に入り込めてしまうというもの。被ってしばらくすると近くを歩いていたダース・ベイダーがライトセーバーを取り出してこちらに斬りかかってくる。

 デモはiMacを使って行われており、実際に筆者も試してみた。足元で光るマグマやライトセーバーの光を反射するダース・ベイダーの面や手袋などの光の加減がリアルで、斬り込んでくる姿にもかなり生々しい迫力があった。

●iMac Pro:ワークステーション性能を一枚に凝縮した史上最強のMac

 WWDCでは、既にレビュー記事でも紹介したMac新製品7モデルも発表された。レビュー記事でも書いたが個人的に筆者はMacBookとiMacのお買い得感が大きく増したと感じているが、どのモデルも十分に魅力的なアップデートが行われている。

 そしてもう1つ忘れてはならないのが、2007年末に発売されるプロ用の新製品、iMac Proが発表されたことだ。

 本体の形状は27インチiMacと同じだが、本体、キーボード、マウスのすべてがApple製品でよく使われるマットな黒色、スペースグレイの仕上げになっており、キーボードはテンキー(数字入力キー)を備えた大型のものになっている(ちなみにこのテンキー付きキーボードは今回新発売となったiMacでも購入時オプションとして選択できるようになっている)。

 今年末に登場するiMac Proは、高性能なワークステーション級の性能を凝縮したApple史上最も高性能なMacとなる。高性能なプロセッサー類を27インチiMacと同じ形の本体におさめるために、内部の空気の流れを1から再設計し冷却性能を80%向上させたという。

 搭載するCPUには最大18コアのIntelのXeonプロセッサー、GPUにはAMDのRadeon Vega、処理性能は11テラフロップスで最高性能のMac Pro用GPUと比べてもさらに3倍ほど速い。また機械学習などでよく使われる精度を少し落としたHalf Precision処理にも対応し、その場合の性能は22テラフロップスとなる。搭載できるメモリはECCメモリで容量は最大128GBまで(iMacの2倍)、3GB/秒の高速なSSDを最大4TBまで搭載できる。4つのThunderbolt 3ポートを持ち、Macとしては初めて10Gbイーサネットのネットワークケーブルにも対応する。

 このシステムでどれだけの処理ができるかというと、本体に搭載した5Kディスプレイの他に、さらに2台の5Kディスプレイを接続可能で、合計4400万画素の表示環境に2台の高速RAIDドライブをつなげてビデオ編集作業が行える。Facetimeカメラも1080p画質だったり、UHS-II SDXCカードスロットの搭載など他にも数多くの最先端技術を搭載するiMac Proは、リアルタイムでの3Dレンダリング、高フレームレートのVR制作、複雑なシミュレーションや分析、機械学習、リアルタイム4Kビデオ編集、そしてソフトウェアの開発といった用途に向いているという。

 AppleはiMac Proに匹敵する性能を持つワークステーションは高精細な5Kディスプレイ抜きで7000ドル近い価格になるという。これに対して8コアXeonと32GBメモリ、1TB SSDを搭載したiMac Proのベースシステムは4999ドルだという。

 これは再びプロフェッショナルに目を向けたMacの第1弾製品に過ぎず、Appleは来年にはこれよりもさらに強力なディスプレイセパレート型のMac新製品も発表すべく準備中だという。

●WWDC 2017から見えてきた、Appleのこれから

 WWDC 2017からはこれからのAppleを占ういくつかの傾向が見えてきた。

 1つ目は「Siriインテリジェンス」。これからiOS、watchOS、そしてmacOSの標準機能や他社製アプリでもAI的なインテリジェンスが重要な役割を果たし始める。今、IT業界全体があらゆるものを機械学習させ、コンピューターに認識させ、操作をしなくてもプリエンプティブに(つまりユーザーの次の動きを予想して)提案してくるように進化しつつある。

 ただし、Appleが他社とは違うのは、この部分で非常にプライバシーに配慮をしていること。このため他社が提供しているコグニティブ系機能、インテリジェンス系機能と比べて提供している機能が少ない印象はある。だが、これは機械学習に限らずこれもそうだったと思う。

 なんでもやりすぎて、とにかく真っ先に作ればいいのではなく、万人のユーザーに役立つ形にブラッシュアップできるまで丁寧に社内で熟成させてから機能を出す。このしっかりとしたデザインのプロセスは、やたらと最初から高解像度に走らなかったiPhoneのデジタルカメラ機能や動画機能、極めてシンプルな形で誕生したiOSのメモ帳、ユーザーにしっかり定着するのを待って今回ようやくApple Pay以外への応用(Apple Watchとエクササイズ機器とのペアリング)を取り入れたNFCの活用など、ある意味、非常にAppleらしいやり方であって、他のメーカーとは違う部分だ。

 2つ目は、上にも重なるが徹底した「プライバシー」重視の姿勢で、Safariで新たに採用された「インテリジェント・トラッキング・プリベンション」で、現在の広告収入を頼りにしているITビジネス全部を敵に回すような発明にも思えるが、それでは実際に個人の日常を振り返ってみて、これまでのトラッキング広告が快適だったかといえば、むしろ不快な部分も多く、嫌う人も多かった。

 Safariという非常に大勢が使うWebブラウザの影響力をうまく活用し、AdobeのFlashの問題を訴え、徐々にその認識を業界全体に広めていったAppleらしいやり方で、この技術によって今後、より心地よく過ごせるWeb媒体が増えてくるかもしれない。ちなみにこれからの時代のWebメディアのあり方としては、新しいApp Storeがその1つの形を提示しているのではないかと思う。

 3つ目は、多様化するワークスタイル。今回のiPad Proの仕様変更はあきらかにプロフェッショナルユーザーの仕事での利用に焦点を絞っていた。現在、Adobeのツールが充実してきたこともあり、プロのクリエイターがiPad Proを使って最先端の創作をすることが可能になっている。

 Appleはその傾向がさらに進むように、ある意味、Macの領域に食い込むような形でiPad Proを進化させている。一方で同じクリエイターでも、マシンに性能やキャパシティーの大きさを求めるユーザーには、まだMacに分がある。Appleはその違いもきちんと理解した上で、Macのその魅力が際立つように進化させてきた。

 メディアでは、いずれはどちらかがなくなるのではないかという文脈で「iPad vs. Mac」といった対決構図を描くが、実は2010年の最初のiPad登場以来、Appleは両製品を健全な形で社内競合させながら、双方がより魅力的になるように進化させている。

 4つ目は、Macで製作する新しいコンテンツ領域、そしてiOSで楽しむ新しいコンテンツ領域としてのARとVRだ。今回、Mac用にはMetal for VRを提供し、一方、iOS用にはARKitを用意。このARKitも他のAR系エンジンと比べると標準で用意している機能は少なめだが、その分、提供している機能に関してはかなり精度が高く、安定しているようで、既に多くの開発者がインスピレーションを受け、試作したアプリの動画をYouTubeにアップしている。

 iPhoneの登場から10年目を迎え、Appleの4つのプラットフォームはそれぞれが次のステージに向け着実な一歩を踏み出したようだ。

最終更新:6/21(水) 20:04
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