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「一つになるための再編のはじまり」元山口組顧問弁護士が語る「三つ巴」の意味(上)

6/21(水) 9:51配信

弁護士ドットコム

「任侠団体山口組」が今年4月、「神戸山口組」から分裂したことによって、「山口組」を名乗る団体が3つになった。もともとは「六代目山口組」から「神戸」が割って出たことからはじまった分裂だが、大きな抗争への発展を危惧する声もある。一方で、30年にわたって山口組の顧問弁護士をつとめた元弁護士で、いずれにも太いパイプを持つ作家の山之内幸夫さんは「抗争の可能性はない」と否定する。今後どのような展開を予想するのか、山之内さんに聞いた。

●「報復も抗争もするゆとりがない」

――山口組が3つに分かれた状況をどう見ていますか?

僕は、3つに分かれて、混乱の度が増したというよりは、1つになるための再編のはじまりだと思っています。任侠団体山口組が出ていった理由を聞いてみますと、神戸山口組が六代目山口組を出ていった理由とほとんど重なっています。たとえば、金のとりすぎであるとか、えこひいきしすぎであるとか、親分が独断専行でまったく意見を聞かないなど、非常に似た側面があるんです。

神戸山口組も、任侠団体山口組も否定はしておりますけど、組織のために一生懸命働いたのに、それに見合うポストに就けなかったり、あるいはポストから外されてしまった人たちがいる。神戸山口組は、六代目山口組のために働いた執行部の人たちが、執行部から外されました。

織田さん(絆誠・任侠団体山口組代表)も先頭を立って、神戸山口組のために働いたけど、山健組(神戸山口組の中核組織)の次の代をとるポストに就けなかったことに対する失望感じゃないですかね。

ヤクザの世界には「信賞必罰」というものがありまして、働いた者には働いた分だけの手柄がもらえる。しかし、その通りの人事になっていないという不満があります。非常に似ています。結局、どこも一緒やということです。だから、僕は、一つにしたほうがいいと思っています。なんとか仲を取り持ちたいと思っています。

――任侠団体山口組は、六代目山口組へ報復のために、「偽装」した組織としてつくられたのではないかという説もありました。

あまりにもつまらない意見ですね。まったくありません。そんな小細工できるゆとりはありません。だいたい、報復も抗争もするゆとりがないんですから。抗争やろうと思ったら、やっぱり金がいりますからね。走った人間の一生の面倒を見るくらいの覚悟が必要です。走った人間がしゃべらんようにするためには、残された家族の生活の面倒を見てやらんといけない。そんなお金、今の暴力団にはないですよ。

――大きな抗争は起きていませんが、小競り合いは起きています。

もちろん突発的な小競り合いは起きますよ。しかし、組をあげての抗争なんて今はないです。できないです。そんな小細工なんか、おおよそ必要ない。武力で解決する状況、抗争する値打ちがまったくないからです。

今の世の中で「トップを殺せば、自分たちの天下が来る」なんてことは、ありえません。まったく無駄な懲役、無駄な犠牲になります。そして、誰も喜ばない。だから、「報復のための偽装部隊である」なんて、くだらないことは一切ありません。

●警察の力が強すぎて抗争できない

――金がなくても、攻めたりしないのでしょうか?

そもそも、相手がつぶれるほどまで攻めることができないんですよ。それよりも先に捕まっていってしまうから。今は警察の力が強すぎるんですよ。だから、できないですわ。

親分まで捕まるんなら、何のための抗争かわかりません。やる以上は、ヒットマンが走って、敵方の大将をとって、こっちの大将が残っていないといけない。それが根こそぎ検挙されるんなら、何をやっているのかわからない。

――金をとりすぎというのは、トップも逼迫しているということでしょうか?

付き合い費がいるんですよね。「義理がけ」といいまして、ヤクザの行事の際にプレゼントや祝儀を交換し合うという慣例があります。たとえば、誕生日のときに金を持っていくとか、代替わりのときの儀式や、親戚・付き合い団体の有力な人が出所したときには、祝い金を持っていくとか。お互いが安全保障して、運営されているんです。対外的な組織との付き合いのために金がかかりますね。

六代目山口組は、日本から暴力団抗争をなくすために、非常に付き合いを密にしたんですよ。「盃外交」というんですけど。親戚・友好団体をたくさんつくった。強いつながりをいろんな団体とつくって、そのための経費がかなり莫大にかかったということですね。

一方で、任侠団体山口組は、金ないから付き合いしないと言うてます。しかし、それではやっていけないと思いますけどね。

シノギをしようと思えば、どうしても他の組織とぶつかったり、シマ荒らしが常にあるわけです。そういうときに、交友関係がないとケンカになってしまいます。交流が密なところとはケンカにならず、お互いに話し合いで、利権を分けることができるんです。交流がなければ、強いところにどうしても圧されてしまいます。シノギをしていく場がなくなっていきます。

●「ヤクザに対する法律の運用がおかしい」

――「山口組」は1つに戻るのでしょうか?

みんな「合流したほうがいい」と思っているんですわ。分裂していることの不利益があまりにも大きいからです。警察が強権を行使して、片っ端からパクるようになっています。銀行口座を作ったり、ゴルフ場に行っただけでパクるは、レンタカー借りたらパクるは、携帯電話でパクるわ、本当に無茶苦茶ですからね。

こんなもん普通やと思っていたらダメですよ。完全に狂ってますから。完全に人権侵害、憲法違反も著しいですから。まったく狂っていますわ。ヤクザに対する法律の運用がおかしいですわ。まともな生活なんてできるわけないですからね。つい最近も、知人から「子どもの幼稚園から、やめてくれと言われた」と聞いたけどね。

ヤクザなんかやってられない。まだ盗人で食うてるほうがマシになりますよ。そういう状態ですから、1つにならないとダメなんですよ。分かれているということは、大変な不利益・不都合ですよ。合流できたら一番いいですよ。

――どれくらい時間かかると予想していますか?

僕は意外と早いと思います。「分裂から3年以内」というのが目安だと思うんですけど。任侠団体山口組が出たのは、まさに再編の動きやと思っているんですよ。要するに、神戸山口組が理想をかかげて出たけれど、うまくいかなかったということがはっきりして、みんな1つに戻りたがるということです。

(下)「ヤクザは絶滅危惧種だ」元山口組顧問弁護士が語る「暴力団」を取り巻く環境

弁護士ドットコムニュース編集部