ここから本文です

「究極の卵かけご飯」が食べられるタクシーに乗ってみた 熊本県が観光客向けに試験運行

6/21(水) 11:06配信

qBiz 西日本新聞経済電子版

 そのタクシーに乗れば、「究極の卵かけご飯」が食べられるという。旅人の心をつかむには胃袋から―ということで、熊本県が観光振興事業として4月末に試験運行を開始した「くまもとグルメタクシー」。朝食を我慢して、日帰り旅に出掛けてみた。

⇒【画像】タクシー車内の炊飯器。こぼれないのだろうか? 湯気は? いろんな疑問が湧いてくる

研ぎ方指南

 JR熊本駅の新幹線口。県の人気PRキャラクター「くまモン」を車上に乗せた特製タクシーが現れた。

 さっそく乗り込もうとすると、運転手の池田重幸さん(54)に「待って」と止められた。「まずはご飯を炊くための水を調達しましょう」と水筒を手渡され、駅の水飲み場へ。

 熊本市は人口約74万人ののどを潤す水道水を全て地下水で賄う。阿蘇山系がもたらす恵みの水を水筒に注ぎ、今度こそ出発だ。

 タクシーは、旧城下町の風情を残す同市中央区新町の米販売店「ふじき本店」に到着。米の専門家の称号「五ツ星お米マイスター」の店主藤木明さん(40)から、人吉地域のヒノヒカリなど複数種を独自ブレンドした最高の米を受け取り、研ぎ方の指南を受ける。

車内で炊飯

 「米を傷つけないよう、理想はささっと3分以内」。優しく指先でかき回し、5~6回水を替える。米と水筒の地下水を注いだ炊飯器を車内に設置して準備完了。期待感から腹の虫が鳴り始めた。

 次の目的地まで20分超。細い路地の先に白壁と漆黒の屋根瓦が趣深い「浜田醤油(しょうゆ)」(同市西区小島)の蔵が見えた。1818年創業。蔵や倉庫は国の登録有形文化財に指定されている。

 熊本地震で白壁が一部剥がれ落ちたが、木の樽(たる)やこうじ菌は無事だった。7代目の妻浜田香織さん(45)に地域の歴史や復旧状況を聞きながら蔵を見学した。

 聞けば、卵かけご飯のため開発した専用のしょうゆがあるという。小さく刻んだだし昆布が容器に詰められていて、かつおだしも効いた甘い香りがする。

 残る素材は、主役の卵だ。有明海を望む金峰山の麓を縫うように走るタクシーの車内では、炊飯器から白い湯気が立ち上る。

 観光農園「優峰園フルーツランド」(同市西区河内町)。湧水を飲んで育っているニワトリの新鮮な卵を自分で採ることができる。卵に触れると、まだ温かく、命の恵みへ感謝の気持ちがこみ上げる。

地元の食材

 炊きたてのご飯の中央にくぼみを作って卵を割り入れると、ぷるんと揺れた。とろみがあるしょうゆを掛け回す。つややかに輝く米と卵。思わず頬が緩む。黄身に箸を入れ、軽くかき回す。いただきます。一気にかき込む。甘くて、濃厚。素材それぞれの味が舌にしっかり伝わってきた。

 約4時間をかけ、地元が誇る食材とプロの技、美しい景観との出合いを詰め込んだ卵かけご飯。料金はタクシーの貸し切りが4時間で1万6千円、食材費が約1400円。決して安くはないが、このぜいたく感と満足感は何ものにも代え難い。ごちそうさまでした。

西日本新聞社