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[インタビュー]初恋の「再現」を表現 「冬ソナ」のユン・ソクホ監督 日本映画に初挑戦

6/21(水) 16:35配信

カナロコ by 神奈川新聞

 日本の韓流ブームの火付け役となった「冬のソナタ」をはじめ、数々のテレビドラマを手掛けてきたユン・ソクホ監督(60)が、初の長編映画に挑んだ。北海道を舞台に、偶然再会した恋人たちの2日間を描く「心に吹く風」。初恋を巡る大人のラブストーリーについて、監督に話を聞いた。

 「力ある監督が撮りたい映画を自由に撮る」などをテーマにした松竹ブロードキャスティングのプロジェクトで、日本の俳優、スタッフとのコラボレーションとなった。自ら執筆した脚本を翻訳し、せりふは全て日本語で撮影された。

 主題となるのは、ドラマでも繰り返し描いてきた初恋だ。「初恋を経験するときの純粋な気持ちには、とても価値があると思う」と監督。映画では、そんな初恋の「再現」を表現した。

 「中年になった二人がもう一度、当時の感情を取り戻していく。不倫という形にはなるが、いろいろな経験を経て、現実よりも純粋な気持ちにたどり着きたい二人の姿を描きたかった」

 主人公は、主婦の春香(真田麻垂美)とビデオアーティストのリョウスケ(真島秀和)。高校時代に愛し合った二人が23年ぶりに再会し、2日間を共に過ごす。北海道の美しい大自然の中、激しい風に揺れ動く木々が印象的に描かれる。風は登場人物たちの心の揺れに重なる。

 「風は自然現象の中でも最も偶然性を表すもの。偶然は、全体を通してこの作品のもう一つのテーマ」

 再会のきっかけは撮影に来たリョウスケの車が、春香が暮らす家の近くでたまたま故障したことだ。

 「実際の生活でも恋に落ちるのは偶然のきっかけが多い。恋に落ちよう、と思って恋しないでしょう? ただ、行き過ぎにならないよう、自分が共感できる設定かどうかに気をつけた」

 再会のぎこちなさを残す二人が、農家の物置で雨をやり過ごす場面は切なく美しい。映像美にこだわる監督ならではだ。

 一方で「現実がベースにあるからこそ、ファンタジーは輝ける。現実の悲しみとファンタジーの美しさは一体」と、現実感を努力して取り入れた。春香が義母とカレーを食べる食卓のわびしさは、現実の生活感を突きつける。

 春香を愛し続けてきたリョウスケ。春香は自分の夢も忘れた生活を続けるのか、リョウスケとの新しい道に進むのか。「いろんな見方ができるが、私の中では二人とも幸せな人生」とほほ笑む。

 「成長できることがたくさんあったので、機会があればまた映画を撮りたい。今度は初恋から離れようかと思っている」と次回作にも意欲を示した。

 「心に吹く風」は新宿武蔵野館で17日から上映。1時間47分。