ここから本文です

今もっともコスパの高い4K液晶テレビかもしれない――バズーカ搭載、地デジもきれいな“レグザ”「BZ710X」

6/22(木) 6:40配信

ITmedia LifeStyle

 東芝、LGエレ、ソニー、パナソニックの4社から相次いで発表された4K大画面有機ELテレビが6月に入って出そろい、家電量販店の店頭が大きなにぎわいを見せている。

「重低音BAZOOKA」ウーファー

 先月の本欄で視聴インプレをお伝えしたパナソニック「EZ950/EZ1000」をはじめ、4社の大画面有機ELテレビはどれも液晶タイプを大きく上回るすばらしい画質を達成しているのは間違いなく、値段が高くてもいいから、今いちばん画質のよいテレビで良質なコンテンツをじっくり見たいという方には、断然有機ELタイプをお勧めしたい。

 画素1つ1つの振る舞いを個別に制御できる自発光デバイスの有機ELは、コントラスト、動画応答性、視野角すべてにおいて液晶を大きくリードする魅力がある。とくに微妙な動きの映像がボケずに解像感が維持される点は、大画面テレビにおける液晶に対する大きなアドバンテージだと思う。

液晶に比べて画面が暗いのでは? と気にされる向きもあるかもしれないが、通常のリビングルームの照度環境であれば、すでに十分過ぎる明るさを大画面有機ELテレビは達成しているといっていい。家電量販店のテレビ売り場が明る過ぎるのである。あの蛍光灯が煌々と灯ったまぶしい環境で自宅のテレビを眺める人など、どこにもいないはず。

 などと言いながら、4K大画面有機ELテレビの価格は高く、まだまだこの値段では手が出ないという方もきっと多いことだろう。50~60型クラスでコストパフォーマンスを重視すれば、お勧めしたい4K液晶テレビがいくつか存在するのも事実だ。ここでは最近じっくり視聴して感心させられた1台、東芝「55BZ710X」について触れてみたい。

 発表された55型の本機の市場想定価格は税別30万円前後。同サイズの同社有機ELタイプのそれに比べれば、ほぼ半額ということになる。

 本機に採用された液晶パネルは視野角で有利なIPSタイプ。直下型LEDバックライトが採用され、ローカルディミング(部分減光)のエリア数は前作「BZ700X」の約2倍で、画面最大輝度もBZ700Xの500nitsから800nitsに向上したという。

 音声面で注目すべきは、背面に円筒状のバスレフ型ウーファーを搭載していること。同社はこの低音再生システムを「重低音BAZOOKA」(バズーカ)と呼んでいる。

 ベテランのAVファンにとってバズーカとは、とても懐かしい名前ではないだろうか。ブラウン管テレビ時代の1980年代末~1990年代初頭、東芝は低音再生に注力したモデルを「BAZOOKA」とネーミング、大きな話題を集めた。と同時に東芝は他社に先駆けて「映画」モードを提案、それまでテレビの画質思想に欠けていた「Hi-Fi思想=制作者の意図に忠実な画質」を提案したのである。ご存じの通り、その後各社がこの提案に追随し、「映画」モードの搭載はこんにちでも高級テレビの必須フィーチャーとなっているわけだ。

 BZ710Xはアンダースピーカー・タイプで、画面下両サイドに30×960mmのフルレンジ楕円(だえん)型スピーカーと30mmシルクドーム・ツィーターがバスレフ型エンクロージャーに収められ、オンキヨーと共同開発された60mmウーファーがビルトインされた円筒状のバズーカボックスが配置されて、左右のポートから低音が放射される仕組み。それぞれのドライバーはマルチアンプ駆動される(ウーファー20W、フルレンジが15W+15W、ツイーターが8W+8W)。

●派手な色合いのバラエティ番組などもすっきりと描写

 映像信号処理回路は、その高性能ぶりで定評のある同社製画質エンジンの最新版「レグザエンジンBeauty PRO」が搭載されている。このエンジン最大の特長は、地上デジタル放送のノイズを抑制し、見通しのよい画質を実現しようという「地デジビューティPRO」回路 の搭載だ。

 これは1440×1080ピクセル解像度の地デジの映像を4Kアップコンバートする際に、5パターンの超解像処理を加えるというたいへん凝った回路で、S/N向上と精細度のアップ、階調表現の改善を目指したものだ。この回路はHDMI接続された外部入力にも効くという。

 東芝製4Kテレビの地デジ画質の良さは以前から定評がある。フルHDとは言えない1440×1080ピクセル解像度の放送を見劣りしない画質で4K大画面に映し出す技術は、他社の一歩先を行っている印象を持っていたが、地デジビューティPRO回路を新たに搭載することで、その技にいっそうの磨きがかかったと言っていいだろう。

 事実、55BZ710Xをぼくの部屋に運び込んでもらっていちばん感心したのは、地デジとBSの放送画質の良さだった。画質モードを室内照度環境や再生コンテンツに合わせて最適画質を提供する「おまかせ」に設定してニュースやドラマ、バラエティ番組などを見てみたが、派手な色合いのゴチャゴチャした背景が目障りなバラエティ番組などもすっきりと描写し、その見通しのよさに驚かされた。この放送画質のよさは、他社の製品をしのぐ本機ならではの魅力だろう。

 ぼくたちAVの専門家は、4K大画面テレビを評価するときに、最先端の高画質メディアであるUltra HD Blu-rayを「映画」系映像モードで見たときの画質について言及することが多いわけだが、多くの人にとって、いちばん見る機会が多いであろう地デジの画質がよいということが購入同機の上位にくることは間違いない。その魅力と値段の安さを勘案すると、今もっともコストパフォーマンスの高い大画面4Kテレビは本機ということになるかもしれない。

●スキントーンの美しさに目を見張る

 部屋を暗くして、「映画プロ」モードでじっくりBlu-ray DiscやUltra HD Blu-rayの映画ソフトも見てみた。今年に入ってからずっとこの部屋で有機ELの東芝「65X910」を見続けてきた目からすると、ローカルディミングを採用しているとはいえ、やはりIPSパネル採用の本機のコントラスト表現は物足りない。黒浮きがどうしても気になるのである。

 しかし、考えてみれば映画館の黒と暗部の表現は、有機EL大画面テレビにまったく追いついておらず、APL(平均輝度レベル)の低い場面での本機の見せ方は、映画館並みのコントラスト表現といったと感じなのである。

 また、SDRのBlu-ray、HDRのUltra HD Blu-rayともに階調表現については、ダイナミックレンジそのものは狭いけれども、暗部、明部ともにスムーズで、ややぎこちない表現になりがちな有機EL最新テレビに対して見劣りしない。とくに中間調からハイライトにかけてのグラデーションはとても滑らかで、REGZA十数年の研鑽の成果がうかがえる。

 それからもう1つ感心させられたのが、スキントーンの美しさだ。ローライトからハイライトまで、ホワイトバランスがていねいに追い込まれていて、肌色が生々しく精妙に描き出されるのである。ぼくの肌色リファレンスソフト、映画Blu-ray Discの「鑑定士と顔のない依頼人」の主演女優のシルヴィア・ホークスをじつに美しく立体的に描写し、目を見張った。

 ユーロアーツが撮った4K&SDRという珍しいオペラ作品「フィガロの結婚」で伯爵夫人を歌うアネット・フリッチュの美しさにも陶然となった。イヤリングや胸元のネックレスの輝きなども、HDRコンテンツを観ているかのように輝かしい。AI(人工知能)技術を駆使したHDR復元効果が的確に働いていることが分かる。

●下から音が聞こえる違和感が少ない

 では、音質はどうか。バズーカの効果を強調するかのような低音過多の音質チューニングかと予想される向きもあるかもしれないが、これがじつに真っ当なエネルギーバランスに整えられていて、まずそこに感心させられた。

 メインのフルレンジドライバーとバズーカ・ウーファーとのクロスオーバー周波数は110Hzとかなり低く、声にウーファーがかぶらず明瞭度がきわめて高いのである。そして、アクション映画等のここぞという場面では、腰の座った低音がふっと軽く出てきて聞き応えがある。

 もう1つ感心したのは、画面下から音が聞こえてくる違和感が少ないこと。担当エンジニアによると、搭載された「レグザ・サウンドイコライザー・アドバンス」で放射された音響エネルギーを画面前方の四面でスキャニングすると同時に、音響心理的に音像を上へと持ち上げる効果を生み出すエレベーション処理を行うことで、映像と音像の一致を図っているという。アンダースピーカー・タイプのテレビの音はどうあるべきかを熟慮した音質設計の考え方に感心させられた次第だ。

 高級テレビにおける有機ELの躍進の裏に、手頃な価格の4K液晶大画面テレビの成熟がいっそう進んでいることを実感させられた55BZ710Xとの出会いだった。

最終更新:6/22(木) 16:11
ITmedia LifeStyle