ここから本文です

児童ポルノ法で罰金の講師、4年後にまた逮捕…なぜ教壇に立ち続けることができた?

6/22(木) 10:05配信

弁護士ドットコム

勤務している小学校の女子児童に対する強制わいせつ容疑で、5月30日に逮捕された愛知県知立市の臨時任用講師(29)。実は、埼玉県の公立小学校で教諭をしていた2013年にも、児童買春・ポルノ禁止法違反(提供)容疑で逮捕され、罰金の略式命令と教育委員会からの懲戒処分(停職6カ月)を受けていたという。

こうした過去がありながら、どうして再就職ができたのか。中日新聞によると、この講師は4年前の逮捕後、依願退職。2015年4月、知立市に採用された。その際、履歴書や教員免許状を提出したが、履歴書に過去の処分歴や教員としての職歴に関する記載はなかったそうだ。また、氏名のうち、名前の漢字が法律的に変わっていたという。

就職に当たって、過去の犯罪歴を申告しないことは法的に問題ないのだろうか。 また、事前に問題のある教師を見抜くシステムはないのだろうか。学校の問題にくわしい村木亨輔弁護士に聞いた。

●聞かれなかったら、答えなくても問題ないが…

犯罪歴の申告について、村木弁護士は、「前科・前歴は、基本的に聞かれたら答えなくてはいけませんが、聞かれなかったのなら答える必要まではないでしょう」と説明する。

「一般に、採用する側の指定する履歴書やエントリーシートに『賞罰』の欄があれば、前科を記載しないで空欄のまま提出してしまうと、採用希望者は、信義則上の真実を告知すべき義務に反することになります」

これは面接の場合も同様。質問自体がよほど合理性を欠くものでない場合は、誠実に回答することが求められるという。一方、「聞かれていないにも関わらず、過去の犯罪歴を申告する必要はありません。犯罪歴について話さなかったとしても、経歴詐称したとまでは言えないでしょう」。

なお、賞罰欄における「罰」とは、一般に「確定した有罪判決」を指すと考えられるという。村木弁護士によると、前歴(逮捕歴)に留まる場合や執行猶予期間がすでに経過したような場合には、そもそも書く必要はないそうだ。

「ただし、内定が決まれば、教員としての欠格事由が存在しない旨宣誓させた書面を提出させることが一般のようです。仮に宣誓書に虚偽の記載をすれば、教育職員免許法21条2項により刑事罰を課されるおそれがあります」

●教育委員会「免許状がある以上、性善説が前提になっていた」

いずれにしても、前科を書けば採用される確率は非常に低くなるし、バレるまではお咎めなし。本人の申告以外にチェック方法はないのだろうか。

「教職免許状(教員免許)に関する事務を司る教育委員会は、教員の採用を内定したら、内定者の本籍地の市区町村の戸籍係に前科の有無を照会することができます」(村木弁護士)

しかし、今回、教員が逮捕された知立市の教育委員会によると、こうしたチェックはなかったそうだ。担当者は次のように話す。

「現実的にはそこまでできていません。履歴書に前任校などがあれば、問い合わせはしますが、今回は記載がありませんでした。教員免許状をとったのが埼玉県なので、県をまたいだやりとりも難しい。

いずれにしても、大きな問題があれば、教員免許状は持てないので、免許状がある以上、『性善説』が前提になっていました。臨時任用講師の数が足りていなくて、人選が限られているという面もあります」(担当者)

教育職員免許法では、教員が禁固以上の刑に処せられたり、懲戒免職になったりすると、教員免許状は「失効」することになっている(同法10条)。また、度を超えた非行などに対しては「取り上げ」の処分もある(同法11条)。しかし、今回の教員の場合、免許状は生きたままだった。

「わいせつ事件を起こしたら『一発アウト』という運用なら、今回のような事態は起きなかったでしょう。ただし、本人の再チャレンジの問題もあって線引きは難しい。今回は、結果的に問題のある教員を採用し、市民に申し訳なく思っています。当面は面接を強化していく方針です」(担当者)

●免許「失効」になっても再取得は可能

実は、教員免許状は失効になっても、一定期間後、再取得できる場合がある。

「教員免許状の失効は、教員の欠格事由にあたります(学校教育法9条2号)。しかし、執行猶予期間が満了した場合や、刑の執行後10年が経過したような場合には、刑の言い渡しの効力が消滅(刑法27条、同法34条の2)し、もはや欠格事由に該当しなくなりますので、再取得が可能となります」(村木弁護士)

文科省のHPによると、学校で単位を取り直す必要はなく、更新講習を受講・修了し、免許管理者へ申請すれば良いようだ。

「教員免許が失効されると官報に掲載されますので、そこから前科の有無を確認できます。また、新聞報道やインターネットなどで氏名を検索することもできるでしょう。

他方、再度、教員免許を授与する際は官報に掲載されるわけではありません。失効後、家庭裁判所の許可を得た上で戸籍の氏名を変えれば、変更後の名前で再交付を受けること自体は可能です。こうなると学校側が前科を確認することは難しいのではないでしょうか」

こうした状況などから、自民党の文部科学部会は6月15日、教員免許を国家資格化し、都道府県の教育委員会ごとに管理している教員の処分履歴などの情報を一元管理すべきなどと提言。政府与党として、国家資格化に向け、早急に取り組むとしている。

「仮に、このような処分歴を一元管理できる制度が整えば、不適格者をチェックすることが容易になることは間違いないでしょう。他方、処分歴が永久に抹消されることなく残るとなると、教員としての再就職の道が事実上絶たれることとなりかねませんので、一定期間が経過した場合には処分歴を抹消するといった救済措置も必要ではないでしょうか」

【取材協力弁護士】
村木 亨輔(むらき・きょうすけ)弁護士
虎ノ門法律経済事務所神戸支店の支店長弁護士。東京本店を中心に、全国に25の支店があり、今後も各地に拡大する予定。本店支店間が相互に連携を取ることにより、充実したリーガルサービスの提供を可能とする。
事務所名:虎ノ門法律経済事務所 神戸支店
事務所URL:http://kobe.t-leo.com/

弁護士ドットコムニュース編集部