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過ち重ねる小池知事 築地は売り、豊洲民営化を

6/22(木) 14:00配信

ニュースソクラ

折衷案で都議選の争点化避ける

 民営化で国鉄はJRに、電電公社はNTTになった。その昔、i 国鉄や電電を取材して痛感した。お役所仕事で事業(商売と言い換えてもいい)をやると、ろくなことにならない。卸売市場にもあてはまる。

 2日投開票の都議選を控え小池百合子都知事が、市場の豊洲移転を打ち出した。遅きに失した感がある。築地再整備案は机上の空論で、ほかの選択はなかった。だが、余計なものがくっつく。築地の“有効活用”だ。跡地を貸し出し、賃料を豊洲の赤字補てんに回すという。

 (1)豊洲に移転し築地は売却(2)築地での再整備の2択のはずが、土壇場で急浮上した第3の案になった。豊洲に「待った」をかけた小池知事の面子を保つ折衷案では、と勘ぐりたくなる。

 都の市場問題プロジェクトチーム(PT)は、知事のブレーン小島敏郎青山大教授が座長になり、PTの議論を築地残留に誘導しようとしたふしがある。豊洲の安全性、使い勝手、採算性の欠陥を強調する一方、「築地ブランド」の価値を声高に語った。

 だが、小島氏が私案として示した築地再整備案は、工期も工費もおよそ現実味を欠いた。残留案は自滅した。メディアの世論調査でも、都民の豊洲移転支持が築地残留支持を上回る結果が出ていた。

 小池知事が4月に、都の幹部職員からなる「市場のあり方戦略本部」を発足させた時点で、再整備案は消え、豊洲移転の方向が定まっていたといえる。同本部が、「築地も活用」案を第1に推したのは、「築地ブランド」にこだわる知事への忖度ではなかったか。同案は、築地残留案の残滓(ざんし)を引きずる。

 PTは、よいことも言っていた。第1次報告書の冒頭の、卸売市場は斜陽産業であり(1)税金投入で延命の末、市場から退場するか(2)ビジネスモデルを変えて再生するか、の選択とした認識は正しい。

 だが、築地跡地の賃料で、予想される豊洲の赤字を埋めることのどこがビジネスモデルの転換なのか。赤字補てんを保証すれば、豊洲市場の経営規律が緩みかねず、税金投入による延命と変わらない。

 豊洲市場の検証作業に意義があったとすれば、お役所仕事のダメさ加減を知らしめたことだ。候補地選びに始まり、工期が遅れに遅れ、6000億円も費やし、完成してなお不評。都議会100条委員会で証言した歴代市場長の無責任さにあきれた人も多かろう。

 官の失敗の教訓こそ、築地と豊洲に生かすべきだ。築地跡地は、競争入札で最高値をつけた先に売却し、豊洲建設費の借金返済に充てればよい。都が跡地利用のマスタープランを示そうなどと思ってはならない。官主導だと、政治が関与し、種々の圧力団体が口を挟み、銀座の隣の一等地を台無しにしかねない。

 築地再開発は、コンセプト作りから、買い手の民間事業者に委ねるべきだ。大金を投じて失敗すれば倒産するかもしれない民間企業は、必死で有効活用を考える。「築地ブランド」も最大限活かすはずだ。

 豊洲は公設民営とし、運営を民間事業者に任せて収支改善を目指すべきだ。ビジネスモデルの転換は、官の能力を超え、リスクがとれる民間にしかできない。

 そのためには、卸売市場の運営に限定せず、豊洲の施設・用地を多用途に活用できるよう幅広い裁量権を民間事業者に与えることだ。豊洲に限らず、11ある都営の市場は順次、民営化すればよい。

 市場のことは、市場(民間)に委ねよ。

■土谷 英夫:けいざい温故知新(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:6/22(木) 14:00
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