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50万円のA&ultima SP1000は真のフラッグシッププレーヤーだ!・2

6/22(木) 12:30配信

Stereo Sound ONLINE

 音楽とオーディオをこよなく愛するライター・伊藤隆剛さんによる、アステル&ケルンのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)、A&ultima SP1000レビュー。このページではその2をお届けする。(Stereo Sound ONLINE編集部)



 シンガー・ソングライターの鈴木祥子が東京・銀座の音響ハウス第1スタジオに観客を招待してライヴ録音した11.2MHz DSD作品『しょうことスタインウェイのお正月』を聴くと、音の良さ以前に動作レスポンスの良さに嬉しくなってしまう。

 11.2MHzのDSD音源では、1曲の容量が軽く1Gバイトを超えたりするため、AK380では再生時にちょっとした遅延が感じられるのだが、SP1000ではDSDでもMP3でもストリーミングでも関係なく余裕でサクサク動く。

 音もDSDらしさが前面に出た素晴らしいもので、ハンブルグ・フルコンサートモデルDのスタインウェイから叩き出される一音一音は重く太く、かつ滑らか。ノイマンU67で録音されたヴォーカルは、ライヴならではの即興性を生々しく感じさせると同時にピアノとの距離感を一定に保ち、両者が混濁してしまうことはない。

 8基の演算コアで分散処理するオクタコアCPUの搭載が効いているのだろう。従来モデルでボリュウム調整や画面のスワイプ時などに時折感じられたぎこちなさがすっきりと解消された。

 全面的にリニューアルしたユーザーインターフェイスの動作もすこぶる軽快で、より直感的に各種設定を行なうことができるようになっている。AK380に比べてサイズも重量もアップしているが、使用感が悪くなったと感じることはない。

 従来の同社プレーヤーと同様に、イヤホン出力は3.5mmアンバランス端子と2.5mmバランス端子の2系統が用意されているが、ここでの印象はすべて後者の接続で聴いたもの。デュアル構成のAK4497EQの実力を十全に味わうなら、2.5mmバランス接続が断然おすすめだ。このクラスのモデルのユーザーや購入を考えている方からすれば「言われなくてもそうするよ」という感じかもしれないが、このSP1000ではこれまでのどのAKプレーヤーよりもアンバランス/バランスのクォリティの違いが大きい。

 圧倒的に低いノイズフロア、超明瞭なチャンネルセパレーションは、アンバランス接続ではいくらか後退し、サウンドステージも小ぶりになるように思えた。


■伊藤隆剛のおすすめ度【★★★★★】

 まさにアステル&ケルンの“新章”が刻まれた逸品。おいそれと手を出せる値段ではないし、コスパ云々の製品ではないので、「これはおすすめ!」なんて軽くは言えないが、税込49万9980円という価格は発売当時のAK380(ジュラルミンのレギュラーモデル)とまったく同じ。それを考えればこの価格設定は良心的と言っていいかもしれない。

 今後ジャケット型アンプがラインナップされるかどうかは現在のところ明らかにされていないものの、AK380と同じような背面のネジ穴や底面のバランス接続端子を装備していることから、自社/他社を問わずそういったオプション・ギアが出てくる可能性は十分にあるだろう。

 従来のラインナップのどこにも属さないスピンオフ的なモデル、KANN(カン)の発売で話題をさらったばかりのアステル&ケルンによる、羅針盤のような一台。そろそろAK380クラスのハイエンドDAPを……と考えている人から、これからちゃんとハイレゾを聴いてみようという人まで、まずは一度、愛用のヘッドホンやイヤホンを持参のうえ、専門店や各種イベントに足を運び、S1000の音を体感してみてはいかがだろうか。

 繰り返しになるが、“世界最高峰のハイエンドポータブルプレーヤー”の謳い文句は伊達ではない。

【今回レビューしたアイテム】
Astell & Kern
A&ultima SP1000 Stainless Steel
49万9980円(税込、直販価格)

●対応ファイル:384kHz/32bit(PCM)、11.2MHz/1bit(DSD)
●搭載メモリー容量:256GB
●搭載拡張スロット:microSDXC×1(最大256GB)
●接続端子:ヘッドホン2系統(3.5mmステレオミニ/光デジタル兼用、2.5mm4極バランス)
●無線機能:Wi-Fi、Bluetooth(SBC、aptX、aptX HD)
●寸法/質量:W75.8×H132×D16.2mm/約386.6g
●備考:ボディが銅製のA&ultima SP1000 Copperが近日登場予定

●問合せ先:アイリバーサポートセンター 0570-002-220

【伊藤隆剛(いとうりゅうごう)】
広く深い音楽の知識だけでなく、オーディオ面でのこだわりにも定評のあるマルチライター。月刊『HiVi』編集者時代に多くの経験を積み、オーディオの魔力に開眼

Stereo Sound ONLINE / 伊藤隆剛

最終更新:6/22(木) 12:30
Stereo Sound ONLINE