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「ヤマトタケルと常陸国風土記」出版 地理学視点でひもとく

6/23(金) 7:00配信

茨城新聞クロスアイ

かすみがうら市下志筑の郷土史研究家で文殊院住職、黒沢彰哉(しょうさい)さん(64)が、常陸国風土記をテーマにした本「ヤマトタケルと常陸国風土記」(茨城新聞社刊)を出版した。風土記を考古学や地理学の視点からひもとき、風土記に描かれた地理を調べ、丹念に歩いて導き出した「新説」も披露。ヤマトタケルと常陸国風土記という県民に身近な主題を据えて、歴史の面白さを表している。

本は3章で構成。第1章「ヤマトタケルの東国巡幸」では、ヤマトタケルの常陸国での足跡などを追った。第2章「『常陸国風土記』を読み解く」では、風土記の成り立ちから当時の地方の郡の詳細までを示した。第3章では、風土記の現代語訳と解説を加えた。

黒沢さんは、風土記に関する評論の多くが古代史や国文学の視点から書かれており、実際の茨城の地理を基にした研究が少ないと感じ、調査研究に着手したという。

ヤマトタケルの県内での足跡は古事記や風土記に描かれており、黒沢さんはヤマトタケルのモデルとなった人物が実際に歩いたコースを調査して地図とともに復元した。定説や過去の評論にも疑問を持ち、新説も次々と打ち出している。

例えば、古事記に記されている地名「淡水門(あわのみなと)」は安房国(現千葉県)にあったとされる。しかし黒沢さんは詳細な調査の結果、稲敷市阿波にあったと推定。阿波が常陸国への入り口だったとみている。

また常陸国風土記は、中央から来た常陸国「国司」が自らまとめ中央に提出した記録だったという定説があるが、黒沢さんは、地域の地理に詳しい郡役人が手掛けたと考えている。

黒沢さんは社会科教員や県立歴史館の史科学芸部長も務めた。着想から4年をかけた本書は「実際に足を運んでみて定説の疑問点を解消していった」。資料収集や写真撮影にはこだわり、執筆は「楽しく、至福の時間だった」と振り返る。

黒沢さんは「新説には研究者の反論もあると思う。これを基に議論が深まれば」と期待を込める。

A5判350ページ、3500円(税別)。問い合わせは黒沢さん(電)0299(22)4501へ。

(綿引正雄)

茨城新聞社