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ジョブHUD誕生秘話を激白! 『FFXIV』開発者インタビュー第3弾【完全版】

6/23(金) 19:32配信

ファミ通.com

●“紅蓮”の象徴、ジョブHUD制作秘話に迫る
 クロスホットバーに代表される『FFXIV』の優れたユーザーインターフェース(以下、UI)は、『紅蓮のリベレータ―』発売を機に、新たな機能が多数追加された。しかし、それらがどういう経緯で開発されることになったのかは、ほとんど明らかになっていない。そこで、『FFXIV』のUIセクションを統括するふたりのスタッフにご登場いただき、ジョブHUD(戦闘中に表示されるジョブ専用のゲージ)制作の流れから4.XシリーズにおけるUIのアップデートの基本スタンスまで、幅広くお話をおうかがいした。

 なお、本インタビューは、2017年5月23日の第36回プロデューサーレターLIVEが放送される以前に取材が行われている。取材陣に事前情報がなかったため、ジョブHUDの仕様に関するやり取りなどに若干かみ合わない部分があるのでご容赦願いたい。

●村澤氏はUIセクションの番頭的存在
──おふたりが所属しておられる部署は、ゲームのどの部分を担当されているのでしょうか?

皆川裕史氏(以下、皆川) 『FFXIV』ではUIの部分を担当しています。最近では、おもにデザイナーセクションのアートチームの管理や、ゲーム全体の絵作りに関する調整、ウェブ制作チームのスタッフ編成みたいなことも行っています。

──スタッフ編成のお仕事は、いつごろから始められたんですか?

皆川 『新生エオルゼア』くらいのころからです。アートチームの管理は、『蒼天のイシュガルド』が発売される直前ごろからでしょうか。「人員が足りない!」という声を受けて「スタッフを引っ張ってきます!」みたいなやり取りをしています(笑)。

──いまでも(パッチなどの)ロゴは作られているんですか?

皆川 今回の『紅蓮のリベレーター』のロゴも、僕のほうで作りました。天野さん(天野喜孝氏。イラストレーター)からイラストを直接受け取りに行く……といった感じで携わっています(笑)。

──村澤さんはいかがでしょう?

村澤裕一氏(以下、村澤) 自分は皆川のもとで、UIセクションのセクションリーダーを担当しています。

──皆川さんと同様、部門を管理されるお立場ですね。

村澤 自分自身はプランナーですが、デザイナーやプログラマーの統括も行っています。UIセクションは、ほかの部署からさまざまな発注を受けたりする性格のため、(プランナー/デザイナー/プログラマーが)三位一体で動く必要があります。その部分を円滑化するため動いている感じです。

皆川 (村澤は)番頭さんみたいな感じですね。実質的には部門を仕切っています。彼がいるおかげで、僕は好き勝手ができます。

──そういうときに村澤さんは何と?

皆川 「そんなの間に合わないですよ」と(笑)。村澤とは、そんな関係です。

──ともにお仕事をするようになったのは、いつからですか?

皆川 ふたりでいっしょに仕事している期間は『FFXIV』よりもずっと長くて、『FFXII』から同じチームの所属です。

村澤 その前は『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』のディレクターを担当していました。そこからさらにさかのぼると……(かつて存在した)株式会社クエストのもと同窓です(笑)。

──そうだったんですか! ということは、本作に携わることになったきっかけも、おふたりはほぼ同じなんですか?

皆川 そうですね。僕が、吉田(吉田直樹氏。プロデューサー兼ディレクター)や?井(?井浩氏。デザインセクションマネージャー)といっしょに新しいプロジェクトを立ち上げようとしていた矢先に、「ちょっとたいへんなことになっているので、見てくれないか」みたいな感じで『旧FFXIV』チームに呼ばれたのが、そもそもの話です。そこから、現在の体制が発足した時点で正式合流となりました。

──当時のいきさつは、吉田さんのコラム本『吉田の日々赤裸々。『ファイナルファンタジーXIV』はなぜ新生できたのか』でお話されていましたね。ということは、皆川さんが現体制に合流した時点で、村澤さんも参加されたのですか?

皆川 多少のずれはありますが、ほぼ同時期です。今後(開発の)手が回らなくなることがわかっていたので、長年いっしょにやってきた村澤にカバーしてもらえる部分を担ってもらおうと。

──村澤さんは、『旧FFXIV』にも携わっていたのですか?

皆川 村澤は『新生エオルゼア』の側をうまく進行するための要件定義や、必要な機能を制作するためのタスク(業務)の分解作業に注力してもらいました。その一方で、僕は当時まだサービス中だった『旧FFXIV』のほうを、できる限り改修していました。

──『旧FFXIV』の制作とは別に、皆川さんはクロスホットバーのアイデアも練られていたんですよね。

皆川 『新生エオルゼア』側の仕様の概要までは、「だいたいこんな感じで作りたい」と僕が書きました。大まかな部分だけ村澤に伝えて、「あとはこれを機能別に分解してほしい」とお願いした感じです。

●スタッフのローテーションが風通しのいい仕様を生む
──『紅蓮のリベレーター』を制作するに当たり、『蒼天のイシュガルド』との違いを感じた部分はどのあたりですか?

皆川 今回、長期のサービスのためのセクション体制が確立した、と感じます。『FFXIV』はMMORPGなので、サービスが続く限り開発も続きます。そのため、我々のように長く在籍している者も含めて、『蒼天のイシュガルド』のときよりも多くの現場スタッフをできるだけローテーションするようにしています。

──といいますと?

皆川 MMORPGは長期間基本のスペックが変わらないので、現場の担当者としては(同じ仕事を)長く続けられるぶん、新しい技術など未体験の仕事に触れるチャンスが失われていきます。これを防ぐために、担当スタッフのローテーションを意識的に行っています。『新生エオルゼア』当時は(失敗が許されない状況だったため)、絶対にこの人ならやれるという陣容で臨みました。しかし現在の長期運用に入った状況では、スタッフがつぎに試したいこととプロジェクトの求める業務がマッチしないケースが出てきます。

──そのためにローテーションを行っているんですね。

皆川 『蒼天のイシュガルド』まではベテランのスタッフで固めてきましたが、『紅蓮のリベレーター』は比較的新顔のスタッフに新しいことをやってもらうよう意識しました。当然一時的とはいえ、マンパワーの低下といったリスクがあるのでマネージメントを担うスタッフ層はドキドキしていましたが、UIセクションにも『FFXIV』をプレイしている者が多いので、高いモチベーションでこだわりを持って開発を進めてもらえました。

──開発の現場でいちばんドキドキされたのは、村澤さんではないでしょうか(笑)。

村澤 『蒼天のイシュガルド』は初の拡張パッケージだったこともあり、ある意味手探りで制作した面もありました。『紅蓮のリベレーター』はその部分を1回経験しているので、大まかな段取りは付けやすかったです。とはいえ、いま皆川が話した通り、新しいメンバーや体制で進められたので……(苦笑)。

──やはりドキドキされたと。

村澤 『蒼天のイシュガルド』当時と同じ作業であれば楽なんですが、当然ながら吉田のほうから(前回にはなかった)要求がいろいろ来るわけです。それを組み込んだうえで、時間が読めない部分をうまくコントロールしながら、何とかギリギリ間に合いそうなところまで来ている……それがいまの状況です。マネージメント役としては、ドキドキする期間が今後1~2週間くらい続くのではないでしょうか。そういうところも含めて、チーム運用のおもしろさみたいな部分はありますね。

──現在のご苦労が、今後さらに活きてくるわけですね。

村澤 どうなるかわかりませんが、この先の発売があるかもしれない(拡張パッケージの)5.0に向けて、継続的に開発を行う体制ができつつあると思います。

──ということは、5.0の制作に着手される際は、また人員のローテーションが行われるのですか?

皆川 これからもUIセクションに限らず、担当のローテーションはほかのセクションでも行われていきます。ちゃんと引き継げていないと「あれ? これは前はこういう取り決めだったよね?」と打ち合わせることになりますが……(笑)。

──村澤さんとしては、スタッフが代わるたびに「またここからか」という感じになるのではありませんか?

村澤 それがあることは当然わかっているので、事前準備みたいなことはしています。いちばん怖いのは、スタンドアローンの家庭用ゲームソフトを開発する際によくあることですが、仕様や書類もなしに「とにかく作ってしまえ!」となることです。これを(長期の開発が前提の)『FFXIV』でやってしまうと、たいへんなことになります。

──それは怖いですね。

村澤 『FFXIV』では通常の開発工程の中に、仕様の整理や変更点をまとめる作業が含まれます。引き継ぎが行われることを前提に、「あなた以外のスタッフに代わっても作業できるように作ってね」と担当者に説き続けているところです。こうした部分はなかなか表に出にくいですが、それがプレイヤーの皆さんから「またおかしな状態になってる!」という思いをさせることを防いでいます。

──担当の方が代わることで、それがゲームの目新しさにつながることもあるんですか?

皆川 『FFXIV』のUIセクションだと、「目新しさよりも伝統を継承していくぜ」という意識がより強く働くように思います。個々の技術に関していえば、広く知られている方法と、我々が蓄積してきたノウハウをどれくらいのサジ加減で混ぜていくのかが重要になります。長期運用に耐えうる安全性や拡張性を確保するための配分を考える……みたいなところを、担当を交代して理解している人を広げていくことが変える目的です。

──なるほど。

皆川 さきほども村澤が話していた通り、従来のオフライン系のゲームは発売後をさほど考えなくてもいいため、いろんな意味で走り切れてしまう面がありました。ですが、僕たちの場合はいまでも『紅蓮のリベレーター』の最終チェックと並行して、パッチ4.1の仕様の相談も行っているところです。このため、つねに先々を考えた仕様にしておかないと、あとで自分たちが苦しむ結果を招きます……マラソンに近いですね(苦笑)。

──いまはよくても、あとで苦しむと。

皆川 ひとつひとつの作業は、他社さんでもふつうに行われていることです。それらをまとめたときに、土壇場で破たんが起きないようどう組み合わせていくか……このあとで苦しまないためのノウハウは、かなり積み上がってきた実感があります。

●ジョブHUDは担当デザイナーのこだわりの結晶
──ジョブHUDが採用された経緯を、改めてお聞かせください。

皆川 『蒼天のイシュガルド』の発売にともないレベル上限が開放されたことで、新しいアクションが増えました。そこから『紅蓮のリベレーター』で、さらに新規アクションを増やしてしまうと、さすがに多くの方がついてこられなくなってしまいます。そこで、バトルシステムの今後のアクション設計を含めて、このタイミングで一度整理を行うことなりました。

──戦闘システムの拡張や進化を行うというよりも、いったん整頓をしたわけですか?

皆川 はい。まずは整理して、わかりやすい形にしようと。従来のバフ/デバフアイコンやホットバーを見ながら戦うスタイルを、もっとジョブごとにわかりやすい形にするのが基本です。ただ、それだけではゲームに必要な要素をプレイヤーに押し付けた感じになりかねません。そこで、「このジョブのアイデンティティはここにあるんだ!」みたいなところをUIで感じられる作りを心掛けました。

──そういう経緯だったんですね。

皆川 UIは日々のプレイの中でもっとも見る機会の多い場所ですが、そこにも「遊びのあるデザインを考えてほしい」と吉田から頼まれました。

──たしかに、UIを見るだけで何のジョブでプレイしているのか判断できます。

皆川 そうですね。じつは、(ジョブHUDは)自分が苦手とするタイプのデザインなんです。

──そうなんですか?

皆川 僕は、情報を絞り込むタイプのデザインを多く担当してきました。そのせいか、装飾的なものをどれくらい増やすべきかという部分について、自分自身の中でも手探りで作業を進めた面があります。

──ジョブHUDは、すべて皆川さんの発案によるものなんですか?

皆川 今回は、デザイナーに「担当したいジョブの候補を挙げてほしい」とお願いして、割り振りを決めました。それぞれのスタッフが、実際にそのジョブでプレイしながらデザインされたものです。なかには、バトルチームのスタッフや、ときには吉田と直接何度も打ち合わせしたうえで作られたものもあります。こうした制作の流れは、いままでにはなかったものです。

──従来はどのような感じで作られていたんですか?

皆川 僕が基本のパーツをデザインして、量産が必要な部分をスタッフに振り分けていく流れでした。今回のジョブHUDは、担当者自身のジョブを割り当ててモチベーションが上がることを重視して、プレイヤー目線でデザイナーが仕上げています。

村澤 ジョブHUDは吉田自身がものすごく思い入れがあるせいか、現場のデザイナーと頻繁に1対1でミーティングルームにこもって話し合っていました。1時間ほどの相談を、3~4回くらいくり返していたはずです。

──アイデアの段階から吉田さんと相談を重ねたんですか?

村澤 そうです。

皆川 多忙な吉田のスケジュールを1時間単位で、しかも数回も確保するのは、かなり難しかったりします。とくに開発終盤は、スタッフが行列を作っている状況ですので。

村澤 そこに割り込んで、かなりの時間を割いて詳細を詰めました。ジョブの魅力をUIの見た目にどう反映させるのかという部分が課題だったんですが、「ここまでこだわるか!」という感じで……番頭の自分からすると「もういい加減にしてくれ!」と言いたくなるほどでした(笑)。

──吉田さんはどちらかといえばゲーム性の向上に気を配る方というイメージなんですが、それと同じくらいデザインにもこだわられるんですね。

村澤 デザインにもすごくうるさいです(笑)。

皆川 たとえば、特定の状況下で(ジョブHUDを)光って目立たせる場合、光りすぎて目障りになることも考えられます。その“光りかた”ひとつを取っても、吉田は「それは光らせすぎだ!」みたいなやり取りをかなりしていました。指摘された部分を夜中まで修正して、出来上がったものを翌朝に吉田が30分だけプレイ。それが終わるとすぐにフィードバックが寄せられるので、そこからまた手直しをして……開発終盤は、そんなギリギリの作業の連続でした。

──しかもそれが15ジョブぶんですよね……。

村澤 15ジョブぶんです。

皆川 なかでも(吉田氏のメインジョブである)黒魔道士のジョブHUDは、指摘を受ける回数が多かった気がします(笑)。

村澤 多かったですね。

●世界設定班と相談して作られたジョブHUDも
──たとえば黒魔道士のUIについて、どんなやり取りがあったんですか?

村澤 じつはいくつかのジョブに関して、UIがふたつの要素に分かれているものがあります。

皆川 ゲージとシグナルランプ的な感じです。

村澤 HUDレイアウトで双方を別々に管理できるジョブHUDもありまして、(黒魔道士向けのものも)最初はそういう扱いでした。ですがテストプレイをくり返すうちに「要素をバラバラにするとわかりづらいよね」という話があったので、再度ひとつに合体したレイアウトに修正したのです。こうしたやり直し作業は、3回くらい行われました。

──ほかのジョブに関して、吉田さんからどのような指摘が?

村澤 確か、召喚士はHUD内にバハムートそのものが描かれるのですが、横から見たバハムートの姿勢にかなり調整指示が出ていましたね。「鳩胸すぎるからもう少し頭部の角度を変えて、前掲姿勢で勢いを出して」みたいなデザイン的な指摘もありました。

皆川 装飾のシルエットが気になるみたいでした。

村澤 最終的に、すべてのジョブHUDが魅力あふれるものに仕上がったと思います。

──とくに村澤さんが印象に残っているジョブHUDは何ですか?

村澤 特定のジョブに思い入れがある、という感じではありません。あえて挙げるとすれば、メインジョブとして使っているわけではないんですが、吟遊詩人のジョブHUDです。やろうとしていることと、実際にそれが表現されている部分が、トータル的によくできているなと思います。

皆川 いままでこれがバフアイコンひとつで表現されていたのかと思うと、ずいぶん変わったなという感じです。担当デザイナーが、ギリギリまで作業したがってたいへんでした(笑)。今回は企画の初期段階で、ゲージやランプのどちらを選択するのかといったところから、装飾に用いるモチーフをジョブクエストで語られた設定をデザインにどう取り込むのか、といったところまで関わったので、思い入れが半端ではないようで。

──ジョブクエストの展開も意識されているんですね。

皆川 はい。「その部分も考えてほしい」みたいな方針を吉田から伝えられていましたので。世界設定班に話を聞きに行ったスタッフもいます。

──ものすごいこだわりです。

皆川 そのぶん担当スタッフの思い入れがかなり強くて……「もうこっちのアイコンを描かないとスケジュールが間に合わないぞ!」と言いたくなるほどに(笑)。

──ほかの作業の進捗が遅れてしまうと(笑)。

皆川 むしろ逆で、1週間で終えるべきほかの作業を半分の期間で終えて、ジョブHUDの調整作業に戻るぞ……みたいな感じでした。そんなにやりたいのかと(笑)。

──ジョブHUDの制作は、何人の方に割り振られたんですか?

皆川 3人のUIデザイナーに振り分けました。

──お三方で担当されるということは、それぞれのジョブHUDをデザイン的に統一する作業も必要になってきそうです。

皆川 初期の段階でそこを気にすると作業が苦しくなるので、「まずはプランナーのスタッフと協力して自分がいいと思う方向に作ってほしい。(デザインの)タッチ合わせは最後に考えればいいよ」と伝えました。

──開発の最後の段階で、イメージを統一するわけですね。

皆川 とはいえ、これまでいっしょに作業してきたスタッフなので、統一を指示しなくても、開発が終盤に入ったころには自分たちでタッチを合わせてくれました。ですので、マネジメント側で苦労した部分はぜんぜんなかったです。

──吉田さんはオーダーがどれくらいの難度なのかをわかったうえで、スタッフの方々に仕事を割り振っているイメージがあります。これは実際のところどうなんでしょうか?

村澤 もちろん最終的なコストを見て判断しているわけなんですが、要求に関しては妥協や遠慮を一切しません。その姿勢は本当にすごいと思います。自分もディレクター経験者なのでよくわかるんですが、相手の表情や状況から遠慮して“そこまで言わない”ことが本当にあるんです。ですが吉田は、商品としてプレイヤーに楽しんでもらうために絶対必要な部分は、決して引きません。

●8Kテレビ時代の到来に向けて……?
──プレイステーション3版のサービスが終了したことで、開発の面で変わった部分はありますか?

皆川 できなかったことができるようになった部分は、確かにあります。たとえば、画面上に同時に表示できる絵の枚数を、これまでよりも増やせるようになりました。また、これまであきらめていた情報表示が実現可能になったりもしています。ただ、全体的に大きく緩和されたかというと、それほどでもありません。当然ながら、いまでも縛りは存在するわけですので。

──そうですよね。

皆川 また情報表示をこれ以上増やすと、画面がうるさくなってしまう懸念もあります。新たにゲームを始めてくださるプレイヤーが多いので、そうした方々に最初から情報を浴びせすぎると、敬遠を招く原因にもなります。

──プレイステーション3版の場合は、画面の占有率の問題もあったのではないでしょうか。

皆川 プレイステーション3版は、最初にプレイヤーに見せる情報をあえて必要最小限に留めるレギュレーションにしていました。(プレイステーション3版のサービスが終了するからといって)今後そこを大きく増やそうという思いはありません。あくまでも、ある程度ゲームに慣れてきた方が、オプション設定で表示できる余地をもう少し増やしてみた、くらいの感じです。いろんな方に『FFXIV』を手に取っていただいたうえで、気に入ってもらえたらいろんな表示が選べる作りにする……この基本方針はいまも変わっていません。

──プレイステーション4版は大型テレビを使っている人もいるため、遠くの位置からでもプレイできるようUIが大きめに表示されます。この部分について、開発に苦労した点はありますか?

皆川 プレイステーション3版やプレイステーション4版のリリースに合わせて、UI全体を拡大縮小する機能を順次追加していきました。これにより、現時点でいろんなケースがほぼカバーできるようになっています。『紅蓮のリベレータ―』の発売に向けて、表示系で特殊なサイズ調整を行ったりですとか、新しい機能を追加したかといえば、そうでもありません。せいぜい、これまでの機能を整理した程度です。

村澤 プレイステーション4 Proの4K表示機能に『FFXIV』が完全対応するのに合わせて、始めてプレイされる方が細かい調整をせずに楽しめるよう、初期設定の時点でそれに適したUIのサイズになっています。通常の解像度のモニターでいえば150~200%くらいの大きさですが、4K対応型テレビにプレイステーション4 Proを接続したときに、それが自動的に適用されるようになっています。

皆川 この先、8K(の時代)が来てしまったらどうしよう……(笑)。いよいよキツくなるかもしれません。

──UIが米粒よりもさらに小さく……(笑)。

村澤 さすがにそれを拡大すると、(ドットの)粗が目立っちゃいますからね(笑)。

皆川 ちょうど今年で、『FFXI』が15周年を迎えます。『FFXIV』がそれくらい年を重ねたら、ひょっとしたら一般家庭に8Kテレビが普及しているかもしれない……そう考えると、いまから準備したほうがいいのかなと思うこともあります。

──さすがに8Kはまだ想像もつきません。

皆川 「またドットを打つの!?」みたいな感じで(苦笑)。さすがにそのあたりは若い者に託したいです。

●UIの今後のテーマは煩雑さの解消
──UIでたくさんのことが実現できるようになったぶん、代償としてコンフィグが煩雑になってきていると思います。初期設定ではオフになっている便利機能もたくさんあるのに、それらが気づかれなかったりしています。この現状について、今後何か対応を考えておられますか?

皆川 じつはまったく同じことを、セクション全体の宿題として吉田から与えられていまして(笑)。さきほども話ましたが、この期間運営してきたMMORPGとしては幸せなことに、新しく入ってきてくださる方がすごくたくさんいます。我々作り手側としても、そうした新規の方々に現在の『FFXIV』のコンフィグ群はどう見えるのか……という部分をとかく忘れがちです。

──具体的にどんな解決策が考えられますか?

皆川 即効性のある解決法から、時間を掛けてわかりづらい部分を改修する方法まで、いくつかの試案みたいなものを検討しています。いちばんシンプルなのは、たとえば“やりたいこと”から逆引きできる資料的な機能を、Webサイトや書籍などで配布する方法です。

──たとえばLodestoneの入力欄に疑問を打ち込むと、その答えが表示されるみたいな感じですか?

皆川 「そうしたい場合はこの設定をこう変えよう」みたいな答えが表示されるイメージです。この方法であれば技術的にも難しくありませんし、Webサイトや冊子で公開することでも十分対応可能です。もちろんこれを実行に移す際は、運営部門との調整が必要になるでしょう。

──ほかにはどんな解決策が考えられますか?

皆川 技術的にどこまで実現可能かという部分に関わってくるんですが、たとえばゲーム内にNPCを立たせて、そのキャラクターにチャットで質問すると、適した答えを返してくれる機能が考えられます。いわゆるAI系というか、チャットBotの変形みたいな形です。

──それは便利そうです!

皆川 スマートフォンのチャットインターフェースに質問を入力すると、Botが適切な答えを返してくれる……そういう機能をインゲームのキャラクターに代行してもらうのもありなのかなと。ただ、その際のNPCの返答が世界観に合わないメタな発言になってしまうので、それが嫌な方もいらっしゃると思うので悩ましいです。

──楽しみになってきました(笑)。

皆川 現時点では、そもそもそれが実現可能なのかというところから検討するレベルなので……皆川の妄想レベルのアイデアとお考え下さい。こんな話をすると、「いつ実装されるんですか?」と今後聞かれ続けることになりそうな気もしますが(苦笑)。

村澤 自分としては(仕事量が増えそうなので)、いまの発言をすべてオフレコにしていただきたいです(笑)。

──素人考えですが、たとえばUIのプリセット機能を追加するのはいかがですか?

皆川 ゲームを始めたときに押すプリセットや、『蒼天のイシュガルド』のシナリオに入ったあたりで選択するプリセットは、ありかもしれません。バトルに慣れてきた段階でこの設定に変えると、パーティプレイ中の画面がちょっとだけ見やすくなる……みたいな感じです。現状では初期化ボタンしかありませんが、それとは別に、ゲームの進行度に合わせた“オススメ設定”みたいなものがあってもいいのかなと思っています。

──実現性の高さでいえば、AIのNPCを立たせる案よりも……?

皆川 いまお話した案のほうが、遥かに現実的です(笑)。

村澤 わかりやすいところでいうと、キャラクターコンフィグにゲームパッドとマウス&キーボード操作が切り換えられるスイッチがありますよね。あれは、内部的にはいくつかのコンフィグをまとめて変更している機能です。

──言われてみれば。

村澤 いま皆川が話したように、初期設定の状態はそのままにしておいて、たとえば天然要害 サスタシャ浸食洞で始めてパーティプレイをするようなときに、専用のボタンを入力。そうすると、みんなでインスタンスダンジョンを楽しむ際に適した設定に切り換わる感じです。ヒーラー向けやタンク向けなど、ロールごとに設定が選べてもいいかもしれません。

──それを選択すると、各種コンフィグだけでなくHUDレイアウトまで変わるイメージですか?

村澤 そうです。ただしその場合は、画面の見えかたが突然大きく変わるので、それに対してのガイダンスも必要になってくるはずです。そうしたフォローも含めて充実させていくのは、わりと現実的なところかなと思っています。

──なるほど。

村澤 くり返しますが、さきほどのAIのアイデアは、その遥か先を行くお話しです(笑)。

──わかりました(笑)。実現性の高さを順番に並べると、まずはLodestoneや書籍でのサポートがあって、そのつぎにコンフィグのプリセット機能がある。そしてそのさらに先に、AI的な機能を搭載したNPCの配置案がある……という感じですか?

村澤 そうですね。

皆川 遥か先の未来に、僕らではない誰か別の人にAIのUIコンシェルジュさんを作ってほしいなと(笑)。

●ホットバーの“オススメ配列”機能を考案中
──『紅蓮のリベレータ―』の発売を機にUI関連の新要素がいくつも追加されますが、それを受けて、4.Xシリーズのアップデートはどのように進んでいくとお考えですか?

皆川 これまでは機能の追加を連続して行ってきたので、それらの全体像が、新規の方だけでなく現役プレイヤーにもわかりづらくなってきていると思います。新しい機能の追加ももちろん行いますが、それと並行して“わかりやすさ”を高めるべく、各種要素の整理にも努めていきたいです。

──たとえばどのような感じですか?

皆川 今回は所持品の上限も増えますが、これによって「あのアイテムをどのリテイナーに預けたんだっけ?」といった事態がいままで以上に増えるでしょう。これまでは、所持品枠の増大を求めるお声がいちばん大きかったと思いますが、それが実現した後は「増えたからには把握しやすくしてほしい」というご要望が高まるはずです。どこまでできるのかはまだわかりませんが、今後生じるニーズを想定した話をプログラマーと詰めているところです。

──マイキャラクターの装備切り換えボタンにも、何らかの整理が行われますか?

皆川 たとえばギアセットに登録しているアイテムを丸ごと預けたり引き出したりできたらいいな、とは思っています。ですがそれを実現させる場合は、サーバー負荷を考慮しなければなりません。しかも、現在はギアセットの情報はクライアントのローカル側に保存されているので、そのあたりの整合性を取る必要も出てきます。解決しなければならないことがすごく多いのが現状です。

──実装まで少し時間がかかりそうですか?

皆川 そうしたほかの部署からの依頼ではなく、UIセクション独自の課題を解決するために使える期間は、ひとつのパッチごとにだいたい1週間です。そのあいだで消化できなかった部分は、またつぎのパッチに少しずつ先送りされていきます。

──1週間……授業と授業のあいだの休み時間みたいですね(笑)。

皆川 そうですね。準備自体はコツコツ進めているんですが、「いつ?」と聞かれると、なかなか答えるのが難しいところです。

──ですがレベル50、レベル60、レベル70の最強装備をひとまとめにして預けられたら、すごく便利だと思います。

皆川 実際は、ギアセットに登録されたアイテムの受け渡しを、“内部的に人間がひとつずつ預ける動作を機械が代行する形”に収めて実装する必要があります。さもないと、(受け渡しの)途中でたとえばサーバーダウンが発生した場合、データの破壊が起きてしまいます。これを防ぐために、たとえば“3個目まで受け渡しが完了している”みたいに途中で止められる仕組みが必要になってきます。裏側ではバッチ処理(大型データの逐次処理)として行っていることを、プレイヤーにわかりやすくラッピングした機能で提供する……このやりかたがいいのかなと思っています。

──そのほかに、皆川さんが思い描いている構想のようなものはありますか?

皆川 “さいきょう”ボタンに類する、ホットバーのオススメのセッティングが、ボタンひとつで切り換えられる機能がほしいな……とは思っていますが、今回は入っていません(苦笑)。ゲームを開始した直後は、テレポなどのメインコマンドの一部がクロスホットバーに登録されていますよね。レベル20を過ぎたころになると、どうしてもそれらがジャマになってきます。

──そこからディープダンジョン 死者の宮殿(以下、死者の宮殿)に挑んだりすると、さらにアクションアイコンが予備のホットバーに並んだりします。

村澤 そうですね。

皆川 ゲームを終盤まで進めていく過程で、オススメの配置は当然変わっていきます。ごく序盤の展開に必要なコマンドとして、現在はあの初期配置になっているのです。この部分を(ゲーム進行に自動的に合わせてくれる)オススメ機能みたいなものを、ひとつずつ積み上げていきたいなと。

●より初心者に目を向けたUI作りを目指して
──たとえばですが、死者の宮殿限定で、いわゆる3連コンボに該当するアクションが自動的にクロスホットバーにセットされるというのはどうでしょう?

皆川 それとは違いますが、コンボをひとつのボタンで実行できる機能がいよいよPvPに入ります。PvEのほうは、コンボルートが複雑なので今後の検討課題です。

──PvPに限り、コンボがひとつのボタンでくり出せるようになるんですね。

皆川 はい。バトル班が、コンボをひとつのボタンで使えるようにPvPのアクションを調整しています。

──皆川さんから見て、その機能を死者の宮殿に入れるのはアリだと思いますか?

皆川 死者の宮殿ならば、アリだと思っています。「単一のコンボルートしか使えなくてもいいからひとつのボタンだけで戦いたい」という方は、その機能を利用してくれればいいのかなと。(そのパーティのDPSトップの方の)5~10%くらいの差しかないのであれば問題ないと思います。その差にこだわる方は、(従来通り)戦ってくれるはずですので。

村澤 ですが、それに慣れ過ぎてしまったプレイヤーがエンドコンテンツに行くと、問題が発生する危険性が高まります。

──そこなんですよね。

皆川 そうであったとしても、ひとまずボタンを押していればカジュアルなコンテンツの進行に十分な火力が出せるようになる点は重要かなと。しかし、方向指定コンボボーナスを覚えなくなる弊害はありますので、吉田はまだ懸念しているようです。便利すぎる機能はゲームの本質を損ないますし、このあたりはディレクターとしてかなりこだわります。確かに、(プレイヤースキル醸成の面で)悩ましいところではありますよね。

──ゲームにまったく不慣れな知人が『FFXIV』をはじめて、ソロで戦士をプレイしているところを見たんですが、コンボを使用せずにひたすら初弾の技だけを出し続けていて。「アイコンが光ってるじゃないか!」と指摘すると、「これはそういう意味だったのか」と返されて、ちょっと唖然としました(笑)。

皆川 何かピカピカしているなと(笑)。

──そういう人たちが死者の宮殿に行くと、火力面でかなり厳しくなります。とすれば、基本コンボだけはワンコマンドでくり出せてもいいのかなと。

皆川 我々がなんとなく見聞きしてきた初心者のイメージと、実際に『FFXIV』に入ってきてくれたプレイヤーのなかで“進められない”方たちとのあいだに、かなりギャップがあることは認識しています。それこそ、スマートフォン向けゲームなみの親切さを取り入れていかないと、(新規プレイヤーを)取りこぼしてしまうことにもなりかねません。かといって、ゲームの隅々までカバーするのは不可能なので、どの段階までフォローすべきなのか難しいところです。

──初心者の館の、さらに初心者向けの要素が必要になりそうです。

皆川 知識のムラを平坦にするためには、そういった対策も必要でしょう。

──初心者だけでなく、知識のムラはあらゆるプレイヤーに存在しそうです。

皆川 たとえばほかのゲームを経験されてきた方は、『FFXIV』の初心者でもすんなりなじめるはずです。その一方で、『FFXIV』を長く遊んでいる方であったとしても、特定の部分だけが知識から抜け落ちている場合もあります。そうした際にも、人知れず誰かが助けてくれたりもするので、それに気づかないままゲームが進んだりします。そうした部分をフォローする機能を、どこまで入れ込むべきかという優先度みたいなところに、すごく頭を悩ませているところです。

●『FFXIV』のUIが生み出された秘密
──『FFXIV』のUIは、完成度、利便性ともに高いレベルにあると思いますが、『新生エオルゼア』の開発時から現在にいたるまで、それが実現できている理由はどのへんにあるとお考えですか?

村澤 基本設計にものすごく気を配ったからではないでしょうか。いろいろな設計のパターンがある中で、『新生エオルゼア』の制作時に「ここまでストイックに突き詰めるか」と言いたくなるほど、何度もクラッシュ&ビルドをくり返しました。皆川がちょうどいいバランスで方針を定めてくれたこともあり、発売後も十分な対応を行える下地ができたのだと思います。

──ベースの設計はすごく重要なんですね。

村澤 わかりやすい例でいうと、そもそもクロスホットバーの発明がなかったら、その後の拡張は実現できません。こうした重要な部分を初期段階で定められたのが、(各種機能を)継続的に追加できている大きな要因ではないのかなと。

──ローンチ時のご苦労が、その後のアップデートを進めるうえでの財産になっていると。

村澤 まさにそうだと思います。初期の段階で方向を間違っていたら、とても作り続けることはできなかったはずです。

──確か、『新生エオルゼア』のテスト段階で、UI全体を丸ごと作り変えたんでしたよね。

村澤 ミドルウェアを利用してベースを設計した後、(UIを)作り始めたんですが……その矢先に、地獄の作り直しが始まりました。

皆川 (初期バージョンでは)ミドルウェアを使ってベースを作っていたんですが、プレイステーション3版とロースペックのPCの双方で、どうしても必要とするパフォーマンスが出ませんでした。ミドルウェアのメーカーにもご協力いただいたんですが……。けっきょく(ミドルウェアの使用を)断念して、新たに作り直すことになりました。

──そうだったんですね。

皆川 Web用のグラフィック作成ツールにフラッシュがありますが、当初はそれをベースとしたミドルウェアを使っていました。フラッシュは機能の幅が広い規格なので、最終的に必要なスピードが確保できなかったんです。

村澤 そこで、これまでミドルウェアに任せていた部分を簡易化したものと、新たに制作した部分とを組み合わせて、新しい独自ツールを完成させることにしました。

──その決断が、現在のUIの作りやすさにどれくらい反映されているのでしょうか?

村澤 相当あると思います。

皆川 ミドルウェアは、いろんなゲームジャンルで使えるように開発された汎用性の高いものです。作り直しの時間を短縮するために、そのなかから本当に必要な機能だけをピックアップして移植作業を行いました。その過程で、さまざまな部分が整理できたなと思っています。

村澤 そこが大きかったです。

皆川 すごくしんどい作業でしたが、結果的にはそれをやってよかったと思っています。

──地獄の作り直しを行っていなかったら、たとえばどんな機能が実現できませんでしたか?

皆川 そもそもプレイステーション3版が発売できなかったはずです。開発の終盤で「いまよりもパフォーマンスを10倍以上高めないとだめだ」ということがわかり、ミドルウェアメーカーの方にも協力を仰いだ結果、2倍くらいまで高速化が図れました。ですが現実は、そこからさらにひとケタ以上、パフォーマンスを向上させなければなりません。その時点で「これはさすがにムリだな」と。プレイステーション3版のリリースは皆さんとの約束ですし、これからゲームに参加してくださる方を一気に増やすためにも発売は避けて通れません。何とかするしかない……という感じで決断しました。

●アドオンの現状を皆川氏に聞いた
──何度となくお聞きしていますが、アドオン開発の進捗はいかがですか?

皆川 当初アナウンスさせていただいたアドオンの実装についてですが、申し訳ありませんが吉田とも相談のうえで、現時点ではいったん開発を停止しています。理由としては、大きくふたつあり、ひとつは『新生エオルゼア』を発表した当時は、「これから売り出しますよ」という新作MMORPGがたくさんありましたし、当時は『World of Warcraft』や『Rift』などに見られるようなアドオン環境をふつうに用意するのも一般的な時代だったからです。

──その流れが近年変わってきたと。

皆川 ここ最近はMMORPGそのものが全体的に低調気味で、オンラインゲームの比率としては、競技性の高いe-sports系のタイトルが増えてきています。そのため「MMORPGのプレイ環境は自分たちで整備するものだ」というMMORPG発祥の考えかたと、「PvPの競技性を担保するために外部ツールはそもそも使用してはいけないもの」というe-sports発祥の考え方が『FFXIV』の中で混在している状況です。

──なるほど。

皆川 この現状を解きほぐすのは、根本的に難しいのかなと。いまの時期にアドオン的な要素を入れると「この機能は運営的に(プレイヤー側の環境整備とPvPの競技性担保の)どちらを重視したものなんですか?」という疑問を突きつけられてしまいます。僕たちとしては「ご自身の判断で好きに使っていただきたい」とお答えしたいところではありますが、この価値観は相反しているため、導入が難しくなってきているなと。

──双方が混ざり合ったように見えて、じつはそうではなかったんですね。

皆川 アドオンやMODに対する考えかたは、プレイヤー個々のゲームプレイ遍歴によって大きく考えかたや印象が異なりますし、その感覚はなかなか変えることができません。日本と海外のコミュニティーによっても異なりますし、世代の違いもあります。いろんな価値観が混ざっているので、あまり適切な言いかたではありませんが、運営としてそこに踏み込みづらくなってしまっている感じです。

──とくに日本では繊細な問題として扱われますよね。

皆川 僕たちがもともと想定していたアドオンは、『World of Warcraft』などで実現していた“あくまで自己責任の世界”のもので、(当初は)それをそのまま持ってこようとしていました。

──それが、いつの間にか時代的になじまなくなってきたと。

皆川 アドオンを利用する手順をわかりやすくするのは我々の領域だと思いますが、アドオン自体の品質担保を開発に求められる方が旧来のMMO世代と比較して多くなるという懸念もあります。いうまでもありませんが、それを我々が保証することは不可能です。そしてもうひとつの理由が、吉田も何度かお話している“DPSチェッカーを望む声”です。この機能の有無は、形成されたコミュニティーを激変させてしまうと考えています。アドオンによってDPSチェッカーを入れている人、入れていない人のゲーム体験差がより生じる恐れがあり、これを危惧しているからです。

──ということは、スキン(ウインドウやゲージ類の模様変更など)の実装も難しくなっているのでしょうか?

皆川 まだ実現性は見えていませんが、スキンの変更機能は実装したいと思っています。

村澤 スキン変更機能そのものは(技術的に)低レベルのものではあるので、プレイヤーの自己責任で「この部分のテクスチャー(模様)を変えたい」程度であれば楽に実現できます。ある意味アドオンは、開発ツールを一般に公開して好きに使ってもらう系統のものですので。たとえばスクリーンショットのグループポーズ機能は、開発内の機能を外部に出しているようなものです。

──撮影時にカメラの位置を中心からずらしたりといった部分はそんな感じがします。

村澤 あれはもうほとんど開発ツールに近い状態です。ですがそうであっても、UIの面でグループポーズ機能レベルまでフォローしないと、プレイヤーが活用できる要素として成立しませんません。

皆川 開発内部で使っているツールは、いわゆるデバッグ用コマンドで簡易インターフェースを呼び出して、任意の撮影を行う流れです。それをゲームの正規のUIに組み直したものが、グループポーズ機能になります。『FFXIV』は家庭用ゲーム機を含むタイトルなので、その部分をちゃんと包装してお出しする必要があると考えています。

村澤 スキンの変更機能についても同様で、要素だけを公開するだけなら簡単ですが、それをプレイヤーの方々がゲームらしく操作できるところまで持っていかなければなりません。じつはその部分が重い課題だったりします。

●ワールド間パーティ募集はタバコ部屋が発端
──スタッフの方が持ってこられた独自の企画で、これはすごいと思われた要素はありますか?

皆川 さきほどお話した、スクリーンショットの機能はまさにそれですね。あとはタバコをよく吸うプランナーがいて、いわゆるタバコ部屋で吉田から「こんなことがやりたいんだけど」と相談を持ち掛けれ、そこで話したことをプログラマーに持ち込んだ結果、パーティ間ワールド募集が実現しました(笑)。

──そうだったんですか(笑)。

村澤 タバコ部屋でいろいろ新しい企画が進んだりします(笑)。自分もタバコを吸うので、人知れず耳をそばだてていると、いろんな情報が聞けたりします。

──村澤さんご自身は、タバコ部屋で吉田さんから何か伝えられることはあるんですか?

村澤 吉田と目が合ったりしたときに、「これって何とかならない?」と(笑)。それがすぐにできるものであれば「サクッとやっちゃいましょう」と応じて、トントン拍子でことが進む場合もあります。もちろん逆に、「考えさせてください。ちょっと皆川と相談します」みたいなときもあります(苦笑)。

──そういう案件も出てきそうですよね(笑)。

村澤 UIセクションは、いろんな部署からさまざまな情報が入ります。それらを受けて、我々の側で思いついた小さな機能を比較的積み込みやすい面はあります。ほかの部署が正式に依頼するのは若干はばかられるような案件であっても、それを受ける側としては「あったほうが便利だよね」と言って(自発的に)動いたりできるのです。

皆川 パッチごとの合間の時間に試験的に実装して、動作確認だけを済ませた状態でしばらく寝かせている機能もいくつかあったりします。(パッチ3.4で追加された)ダブルクロスホットバーも、その中のひとつです。早い段階で、機能そのものはテスト実装を終えていたんですが、これは使う人を選ぶなと判断してしばらく置いていました。

──そうだったんですか。

皆川 新しいPvPが導入されてアクションが増えたときに、「ホットバーを増やさないとどうにもならない!」という話が来たので、寝かせておいたダブルクロスホットバーを公式の機能に格上げすることにしたわけです。ただ、その時点で『紅蓮のリベレータ―』でアクションの整理が行われることも聞いていたので、本当に過渡的な措置といいますか、“使う人を選ぶ機能”と割り切ってダブルクロスホットバーを入れました。

──確か、ダブルクロスホットバーが実装される前に、皆川さんはフォーラムにそういう趣旨の投稿をされていましたよね。

皆川 クロスホットバーの切り換え機能がもともと用意されているわけですし、L2とR2ボタンの同時押しもかなり使いやすかったりします。そのため、「使いこなせるなら使ってみてください」みたいな挑戦状的な文面になってしまいました(笑)。

●UIをあまり気にせず純粋に楽しんでほしい
──『紅蓮のリベレータ―』の発売を機に、ほかにも初心者向けの要素が入っていますか?

村澤 さまざまなクエストを進めているところでインスタンスダンジョンに参加したりすると、そこから戻ってきたときに何をすればいいのかわからなくなってしまいますよね。そこで「ストーリーを進めるだけならこれだけやればいいよ」という部分を見つけやすくするためのメインクエストガイドという機能を追加しました。これを受けて、リージョンマップも大幅に手直しされています。

──ワールドマップとエリアマップのあいだの、町と町が線で結ばれている地図ですね。

村澤 そうです。新しいリージョンマップを開くと、エリアマップが実際の形で並んでいて、目的地と現在地が地域を横断してダイレクトにわかるようになっています。

皆川 ふだん開いているエリアマップをそのまま大きくして、物理的に隣のマップも並べて表示した状態が、今後はリージョンマップになります。

村澤 『紅蓮のリベレータ―』を機にPC(Windows)版の下限スペックが変更となったことで、いろいろ使える部分が増えたために実現できました。個人的にも、ゲームの導線の面で格段にプレイしやすくなったと思います。

皆川 ザナラーンやラノシアといった初期エリアのあいだのつながりもわかりやすくなるので、新しく入ってこられた方へのメリットは大きいと思います。「低地ラノシアはどの出口だっけ?」みたいなことはなくなるはずです。

村澤 もちろん今回は新しいエリアがたくさん増えるわけですが、それらのつながりをマップで確認しながら冒険できます。エリアや国どうしの地理的な位置関係も、頭の中で描きやすくなるはずです。

──それでは、最後に読者にメッセージをお願いします。

皆川 今回の拡張パッケージでは、バトルアクションが大きく改修されたので、物語だけでなくバトル面も新鮮な気持ちで遊べるはずです。どの技をどう使ったら効率的なのか、みたいな部分をワイワイ議論していただきたいです。MMORPGというジャンルは、発売直後や大規模拡張が行われた際に、お祭りのようになります。この醍醐味を、ぜひご堪能いただければと思います。

村澤 ゲームとしてのシステムが大きく変わるタイミングでもあるので、新しく始められた方と現役プレイヤーが比較的横一線に近い状態でスタートできます。PvPも大きく変わるので、これまで手を付けてこられなかった方にとっても、いまがチャンスだと思います。新システムにスムーズになじめたということは、UIの制作が成功したということでもありますので、我々としてはUIをあまり意識せずにプレイされることを望みます。本当に、ゲームを純粋に楽しんでいただけるとうれしいです。

最終更新:6/23(金) 19:32
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