ここから本文です

LGBT就活の乗り越え方「受け入れ企業を選ぶだけじゃなく、やりたいことを考えて」

6/23(金) 9:51配信

弁護士ドットコム

2018年春に卒業する大学生の採用面接が6月1日に解禁され、就職活動は山場を迎えている。そんな中、就職活動のスタート時から人知れず困難を感じ続けているのが、LGBTの学生だ。体の性と心の性が異なる「トランスジェンダー」の70%が、「求職時に困難を感じる」と回答した調査結果も出ている。(特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2016より)

LGBT学生の就職活動などの支援を行っているNPO法人「ReBit」の代表で、FtM(女性として生まれ心の性が男性)と呼ばれるトランスジェンダーの藥師実芳さん(27)に、LGBTの学生が就職活動をどう乗り越えたらいいのかを聞いた。

●就職活動で直面する「カミングアウトをするか、しないか」の問題

藥師さんはセクシュアリティ(性のあり方)について、「自分は面接でカミングアウトをせざるを得なかった」と振り返る。まず戸籍上の性別と見た目の性別が異なったこと、そして就職活動で必ず話す「学生時代に取り組んできたこと」「志望理由」において、藥師さんが学生時代に力を入れたことといえば、「ReBit」(当時は学生団体)の活動が一番にあった。「カミングアウトしないことで、話せないことが増えてしまう。そうなると私の場合は、カミングアウトするしかなかった」。一方で、「職場で理解がなく、ハラスメントを受けるのではないか」と明かさずにいる人も多いという。

さらに戸籍と見た目の性別が異なるトランスジェンダーの学生は、就職活動で「男女で分かれていること」に困ってしまう。「戸籍上は女性だけど、男性に丸をしたら履歴書を詐称したことになってしまい、内定切りされるのでは」、「普段使っている通称名を書いてもいいのか」ー。説明会や面接でのリクルートスーツ選びやエントリーシートに書き込む性別にも戸惑いが生じる。

また、国内で戸籍の性別を変えるためには数百万円かかる性別適合手術が必要要件となっている。将来的には戸籍の性別を変えたいと考えていたとしても、学生にはそんな大金を払える人は少ない。就職活動のタイミングでは、望む性で生活をして生きていても、多くの人は戸籍の性別は変わっていないのが現状だ。

●「今思うとどう働くべきかを優先していなかった」、藥師さんの就職活動

藥師さんは小学6年生のとき、ドラマ「3年B組金八先生」で女優の上戸彩さんが演じる性同一性障害の生徒を見て、トランスジェンダーという言葉を知った。周りにトランスジェンダーの大人がみあたらず、インターネットで「差別があるから、働けない」などと書かれていたのを当時は鵜呑みにしてしまった。

「トランスジェンダーであることを受け入れてくれる会社なら、なんでもいい」。2013年に行った就職活動では、男性として働くことを一番に重視していた。全社でカミングアウトをし、業界を絞らず50社ほど受けた。名前は実芳(みか)で、男性用のリクルートスーツを着た。「性同一性障害だったら帰って」と面接で帰されたり、面接官から「体はどうなっているの?」、「子ども産めるの?」などとハラスメントを受けたこともあった。

就職活動の結果2社に内定し、WEB広告代理店に入社を決めた。そこは性別に関係なく、営業として育ててくれるフラットな会社だった。それまで感じていた「性別の壁」は、理解ある職場のおかげで越えることができた。

そうして仕事に励み始めたものの、次第に迷いが生じるようになった。「自分が本当にしたい仕事ってなんだろう」。トランスジェンダーであることが障壁でなくなったからこそ、ようやくそこで「本当に自分がやりたいこと」について考え始めるようになった。1年弱で退社し、学生時代から取り組んでいた「ReBit」を代表理事として法人化し、LGBTの子ども若者のためにはたらくことを決めた。

●「セクシュアリティ以外のことを優先して働いて欲しい」

「面接官が差別偏見をもっていたら、落とされてしまう」。そんな思いから、とにかく「LGBTに理解がある企業」を探すLGBTの学生は多い。藥師さんは「どの企業もLGBTであってもなくても安全にはたらけ、セクシュアリティ以外のことを優先して職場を選べるようになってほしい」と願っている。

ただ一方で「自分が就職活動をしていた5~6年前と違い、状況は大きく変わってきている」と希望もある。経済同友会が2016年10~11月に行った、「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査」によると、LGBTに対応する施策を実施している企業は、回答があった131社中52社(39.7%)に上り、相談窓口の設置や社内研修・勉強会の実施などに取り組んでいるという結果が出ている。

「ReBit」でも人事担当者や社内相談窓口担当者を対象に、LGBTについての研修に取り組んでいる。「今人事担当者の中でもLGBTについての知識や意識が広がり始めています。公正な採用への意識は、数年前と比べて大きく変わっています」。もしも面接官の対応で不安があったら、面接の前後で学生の方から人事に相談することも一案だ。

「日本では約13人に1人はLGBTと言われている。企業とLGBTの代弁者となり、LGBTの学生が一人で悩み、諦めることのないようにしたい。この数年で状況は大きく変わり、LGBTに取り組む企業も増え、自分らしく働ける職場は増えてきている。だからこそ、セクシュアリティによりなにかを諦めるのではなく、自分がしたい仕事や働きたい職場を選んで欲しい」。

弁護士ドットコムニュース編集部