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村上氏VS黒田電気(上) 取締役派遣の成否は?

6/23(金) 15:00配信

ニュースソクラ

29日が株主総会、2年前には敗れたが

 6月29日に大阪市内で開催予定の電子部品商社黒田電気の定時株主総会がにわかに脚光を浴びている。村上世彰氏が率いる新生「村上ファンド」グループが同社株を大量保有し、再び社外取締役の選任を求める株主提案をしているためだ。

 同社と村上氏の対決はほぼ2年ぶり。2015年の臨時株主総会では会社側の「勝利」で終わったが、今回の対決は15年とは形勢がかなり違う。個人など他の株主が株主提案を支持すれば、株主提案が可決される可能性が現実味を帯びている。

 大阪の下町十三の町工場の1つだった黒田電気。実質的に村上氏が率いる投資会社レノが6月14日、関東財務局に提出した共同の大量保有株式の変更報告書が大手メディアに取り上げられた。

 それによると、村上氏が実質支配する投資会社レノなど関係先が共同保有する黒田電気株式の保有比率は37.18%となり、3月下旬の35.09%からさらに買い増ししていることが明らかになった。

 「さすがに37%もの大量保有はまずいのではないか」「黒田電気側は村上氏を甘くみて、わきが甘かったのではないか」等々の声が関係者から聞かれ始めている。5月末の招集通知の送付までの間、黒田電気と村上氏側が非公式のミーティングをしていく中で、村上氏側は5月2日、株主提案で1人の社外取締役選任を求めることにした。

 時計の針を2年前にいったん戻そう。15年、村上氏は長女であるC&Iホールディングス最高経営責任者の村上絢氏(現在は結婚して野村絢氏)を起用し、メディア工作などもしたうえで、臨時株主総会の開催を求め株主提案への賛成を呼び掛けていた。

 株主提案では大規模なM&Aや大幅な株主還元を求めて村上世彰氏ら4人を社外取締役に選任するよう求めるものだった。

 しかし、結果は、株主提案への賛成は約4割にとどまり、否決された。会社側の勝利だった。当時、機関投資家へ議案の賛否を助言する議決権行使助言会社のグラス・ルイス社が株主提案に反対する意見(現経営陣を支持)を表明していた。

 一方、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)社は株主提案に賛成する意見(村上氏側を支持)を表明していたが、黒田電気の関係者によれば「内外機関投資家の多くは株主提案に反対票を投じた」という。

 当時の黒田電気の公式発表によれば、議決権行使の結果は発行済み株式総数の約9割の議決権が行使され、村上氏の株主提案への反対割合は6割を超えた。

 鈴木俊秀氏38.52%、金田健氏38.5%、村上世彰氏37.38%、福島啓修氏38.49%と、村上氏側が社外取締役候補者とした4氏とも可決に必要な過半数には届かなかった。

 ただ、一部の機関投資家からは「まさか40%近くも賛成が集まるとは信じられない」と驚嘆の声も上がっていた。仮に、信託銀行など一部の大株主が棄権したり、賛成票を投じていた場合、村上氏側の株主提案が可決していた可能性があった。

 当時の村上氏側の共同保有割合は約16%(基準日15年7月16日)に過ぎなかったが、他の株主から実に20%超の賛成があった。

 生保などの機関投資家は通常会社のメーンバンクや取引先だったりする場合が多く、一般的には株主提案への賛成に回ることは考えにくい。賛成の多くは個人投資家による議決権行使だったとみられる。

 現に当時の黒田電気の個人株主の割合は株主全体の28.3%を占めていた。裏返すと、黒田電気は生保などの「物言わぬ」法人株主が多数を占め、それに救われていた。

 同社は臨時総会後、記者団に対して、「対話を続けてきた長期投資家の多くから、会社方針に理解が得られた結果」と勝利宣言した。一方の絢氏はISSから賛同も得ていたことから、勝利を確信していた様子だったが、結果を知るや無言で会場を後にした。

 その後、C&Iホールディングスは「株主として引き続き黒田電気のガバナンス(へのチェック)を行い、黒田電気の株主価値向上に取り組んでいく」との声明を出すにとどまった。
 
 村上サイドの惜敗だった。

(下に続く)

■谷川 年次(経済ジャーナリスト)
大手新聞記者などを経てフリーに。記者歴は約20年のベテラン。
企業不正や調査に関心。国会、金融庁、厚労省、年金、金融、資産運用などに詳しい。

最終更新:6/23(金) 15:00
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