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離島防衛のカナメ“日本版海兵隊”

6/23(金) 8:01配信

ニュースイッチ

「敵前上陸」能力、適切な運用を

 18日に閉会した国会で「改正自衛隊法」が成立した。全国の陸上自衛隊の部隊を一元的に指揮する「陸上総隊」を創設し、陸上総隊の直轄組織として“日本版海兵隊”といわれる「水陸機動団」を2018年3月までに新設するのが目玉だ。国内に点在する離島などが不法に占拠された場合、離島に上陸して奪還を目指す専門部隊である。

 水陸機動団は陸上自衛隊の相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に駐屯する西部方面普通科連隊をベースに組織される。同連隊は上陸作戦を行える部隊を目指して2002年3月に創設。

 隊員の多くがレンジャー資格を持つ精鋭部隊で、これまでに日本国内や米国で米海兵隊と共同演習も行っている。現在は660人規模で、水陸機動団が発足すれば2000人以上の規模に膨れあがる。

 先日、その相浦駐屯地を訪れた。海に面した92万平方メートルの広大な敷地に、さまざまな建物が点在し、水泳や射撃訓練はもちろん、カラビナやハーネスなどを使った山岳登攀訓練、ゴムボートなどを用いた水路潜入訓練など、多彩な訓練が行える。

 屋内プールでは完全武装した隊員が平泳ぎで泳いでいた。装備は20キロから30キログラム以上に上り、着衣のまま、靴を履いたまま100メートルを泳ぎ切る。かなりの体力がなければ、泳ぎ切ることはできないだろう。

 隣のコースでは、ヘリコプターが墜落し、海上に着水した際の脱出訓練を行う。コクピットに見立てた鉄枠をプールに浮かべ、枠の中に隊員が座り、枠を逆さまにする。

 隊員は逆さまになったまま、水中で安全ベルトを外し、水上に脱出する。この間、1分以上は呼吸するのを我慢しなければならない。相当きつい訓練だ。

 次に建設中の脱出専用プールを見学した。プールの上10メートル程度の位置に横移動ができるクレーンを配置。そこに隊員たちが乗り込んだ実物大のヘリコプターや水陸両用車の模型を吊した上で、水中に落下させ、乗車している隊員たちが順序よく脱出できるように訓練する。

 これにより、実際に海上に落下した際、一カ所の入り口に隊員が殺到してパニックになる事態を回避し、無事に生還する術を学ぶ。

 水陸機動団には水陸両用車の専門部隊も新設される。水陸両用車部隊は、相浦駐屯地から佐世保市中心部を挟んで12キロメートルほど離れた崎辺地区に崎辺分屯地(仮称)を建設して本拠地とする。

 実際に現地に行ってみると、まだ地盤改良と造成工事を行っている段階だった。今秋以降には隊庁舎や食堂・厚生施設・体育館、整備工場などを着工し、完成は2018年度にずれ込む見通しだという。

 配属される水陸両用車は「AAV7」型と呼ばれる米国製車両で、地上ではクローラー走行し、水上ではウォータージェット推進により浮上航行する。乗員3人以外に兵員25人を運ぶことができ、離島への上陸強襲作戦などに威力を発揮する。

 ところで、実際に離島が占拠された場合の奪還作戦のイメージはどうなのか。海上自衛隊の艦船で島まで数キロメートルの沿岸まで接近し、そこから水陸両用車やボート、ヘリコプターなどを使って上陸するというのが基本だ。

 ただ、その前にやらねばならないことがある。航空自衛隊の戦闘機や海自の護衛艦を使って攻撃し、敵を制圧することである。

 陸自幹部は「敵がガッチリ構えている場所にそのまま入って行くことは難しい。敵をほとんど叩いた後に我々が行く」と話し、人命第一をアピールする。

 離島が無人島なら良いが、有人島の場合は空や海からの攻撃は難しく、その場合はどうするのか。また離島奪回作戦は陸海空の3自衛隊の連携が不可欠だが、その辺りはどうなのか。

 さまざまな課題はあるだろうが、水陸機動団の誕生は、日本の離島を不法に占拠しようとする組織への「抑止力」につながるはずだ。とはいえ、水陸機動団が実際に戦闘する場面は見たくない。

 “海兵隊”は、専守防衛の自衛隊にとって長らくタブーだった。「かが」はじめ4隻のヘリ空母の就航に続き、「水陸機動団」を創設することで、自衛隊は小規模ながら映画『史上最大の作戦』のような「敵前上陸」の能力を持つことになる。

 批判もあるだろう。しかし現在の自衛隊の弱みのひとつが離島防衛であることも事実。戦力均衡の考え方からすれば、弱点を放置しておくことは紛争を招く恐れがある。

 「水陸機動団」は決してアジア諸国の脅威となるような規模ではないが、適切な運用を内外にアピールしてもらう必要がある。

日刊工業新聞社・根本英幸、加藤正史

最終更新:6/23(金) 8:01
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