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熊本地震 地割れそのまま、雑草一面に 戻らぬ農地 業者不足 工事後回し

6/23(金) 7:01配信

日本農業新聞

 2016年4月に発生した熊本地震で被災した農地の復旧が進まず、農家が焦りを募らせている。来年も作付けできない恐れが強まる水田もあり、震災の発生年を含め3年連続で営農できない農家が出そうだ。熊本県によると、工事を担う業者の不足が響き、昨年度末までに復旧した農地はわずか4・2%。19年3月までに復旧を終える考えだが、未収益期間の長期化に伴い、農家からは「生活に支障が出かねない」との声が上がる。

3年続き営農不能も

 「地震が起きた時のまま、手付かずになっている」。農地に深刻な被害が出た阿蘇市の一画。亀裂が走り、雑草に覆われた水田を前に、高藤俊輔さん(44)が眉間にしわを寄せる。約32ヘクタールで水稲などを栽培するが、うち1割で何も作付けできない状態だ。収入もその分減った。

 地割れなど激しい被害が出た場所は自己復旧が難しく、大豆などを栽培することもできない。工事が不可欠だが、業者が不足しており着工の時期は見通せない。「来春の作付けに間に合えばいいが……」。作付けできない期間が延びれば生活にも支障が出ると、不安を訴える。

 市内の水田5ヘクタールで水稲を栽培していた山本九州男さん(66)も、危機感を募らせる。昨年はほぼ全ての水田で作付けできず、収入を断たれた。体調を崩し、母も倒れ、年金収入は入院費などで消えるという。

 今年は30アールで水稲、10アールで稲発酵粗飼料(WCS)、その他わずかな面積で牧草の栽培を計画するが、大半の農地は今なお何も作付けできないままだ。「利益はほとんど見込めず、生活はボロボロ。首をくくれと言われているようだ」。山本さんはこぼす。

完了 わずか4.2% 16年度末熊本県調べ

 熊本県の調査によると、県内の災害復旧事業1万516件のうち、16年度末までに完了したのはわずか12.5%。農地は4.2%で、漁港施設の28%や公共土木施設の19.4%などを大きく下回る。発注が済んだ件数も農地では12%にとどまり、漁港施設の96%や林道施設の59.1%などと比べ、際立って少ない。

 県は「人手が限られる中、どうしてもインフラや住宅を優先せざるを得ない」(農地整備課)と説明。19年3月までに県内の100%の農地で営農再開することを目標に掲げ業者の確保に奔走するが、「来年の田植えに間に合わない水田もあり得る」と認める。

 阿蘇市地域農業再生協議会によると、現時点で何も作付けできない農地は管内の117ヘクタールに上る。人員や資材の逼迫(ひっぱく)を訴える声は根強く、業者の確保は今後も難航しそうだ。

 こうした状況を受け、県は救済策として、何も作付けできない農地を抱える農家を対象に(1)代替農地の借地料などの助成(上限=10アール2万2000円)(2)被災農家を雇用するJAや農業法人への労賃の半額助成(上限=月9万7000円)――を講じる考え。だが、阿蘇市の農家は「ありがたいが、抜本的な解決策ではない」と、複雑な表情を浮かべる。 (松本大輔)

日本農業新聞

最終更新:6/23(金) 7:01
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