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NYロンドン間の飛行時間40分? 実現するか

6/23(金) 17:32配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 超音速旅客機コンコルドの運航が停止されて10年余り。手軽に、しかも手の届く費用で宇宙へ行くための取り組みが進む中、そこからヒントを得た次世代の超高速旅客機についてさまざまな提案が出されている。1時間以内での大陸間移動を可能にする計画もある。

 宇宙船のデザインや推進システムが向上したことに加え、最近は再利用可能なブースターやカプセルの研究も進む。起業家イーロン・マスク氏の宇宙開発ベンチャー、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)や、リチャード・ブランソン氏が率いる宇宙旅行会社ヴァージンギャラクティック、そしてアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏によるブルー・オリジンなどの民間企業は、複数回の飛行が可能で、かつ多くの改修を必要としない宇宙船の開発を続ける。

 米国防総省(ペンタゴン)はこれら新技術を偵察機などに利用する狙いだ。一方でこれら新技術を旅客機に導入し、業界を一変させようとする動きもある。技術やコスト面では大きな挑戦となるが、その実現が可能だと考える起業家も登場している。

 旅客機として使われる「超音速宇宙船」は、革新的なエンジン設計、3Dプリンター技術、そして同じブースターを繰り返し使うという基本原則を組み合わせることによって、実現を目指している。エンジンは大気中の酸素を使って水素燃料を燃やすため、現在のロケットに欠かせないパーツの一部が不要だ。スピードは少なくとも音速の5倍にあたる時速約5600キロに達する。現在のジェット機は時速約800キロだ。

 超音速での商業飛行を推進する不動産デベロッパーで投資家のクリス・マイラム氏は、今後数年にわたって最大で2000万ドル(約22億円)を開発に投資すると話す。マイラム氏はペンタゴンでの勤務経験がある専門家のプレストン・カーター氏と共に、ロケットで打ち上げて切り離し、通常の飛行機のように着陸する旅客機の開発を狙う。

 「コンコルドの時代が幕を閉じてからも高速飛行機の話題はいくつも出たが、現実となったものは少ない」。マイラム氏はそう話すと、「こうしたシステムはとても高くつく、というのが現実だ」と続けた。

 この超音速宇宙船は100人ほどの搭乗者を乗せ、上空2万メートルから3万メートルを飛行することが想定されている。地球のどの場所へでも4時間以内で到着し、離陸重量は約230トン。これは最大限まで搭乗・積載したエアバスA380型機「スーパージャンボ」の半分以下の重量だ。

最大の課題は機体の過熱

 民間で開発されている超音速の飛行機は、コンコルドの延長線上にあるものだ。だが非公開企業のブーム・テクノロジーなどでは、45人乗りでエンジンを3基搭載し、音速の2倍にあたる時速約2400キロで飛ぶ飛行機の開発を想定する。

 今後数十年のうちに弾道飛行をする航空機が現実のものとなれば、ニューヨークとロンドン間はわずか40分程度で移動できるようになる。これは現在の飛行機の10倍のスピードだ。ペンタゴンはそれよりも速く飛行する無人の実験機XS1を開発しており、先月はその設計案が承認された。

 ただし、これほど速く飛行する超音速旅客機を実現させるためには、大きなハードルも残る。最大の課題は、機体の温度を下げる素材や方法の開発だ。米ボーイングや欧州エアバスはこの分野でまだほとんど成果を出しておらず、米防衛大手ロッキード・マーチンは最近になってようやく、軍用向けに規模を小さくした高速航空機の実験機開発に着手したところだ。

 政府機関で宇宙開発事業に関わっていたこともあるコンサルタントのジョエル・サーセル氏をはじめとする懐疑派は、温度の問題は特に大きいと指摘する。同氏は「このスピードで移動している機体が過熱してしまう問題は、解決することができない」とし、「以前から取り組まれてきた課題だ」と続けた。

 だが前向きな意見もある。エンジンを製造するエアロジェット・ロケットダインでバイスプレジデントを務めるジュリー・バン・クリーク氏は、3Dプリンターを使った特殊なパーツならば温度の上昇を抑えることができるとし、商業旅客機の機体にもいずれその技術を「適用することも可能になるだろう」と話す。

 マイラム氏も過熱問題については他の対処方法があるかもしれないと話し、米航空宇宙局(NASA)に資金を提供して解決に取り組んでいる。これまでの起業家たちはここまで速い飛行機を「設計しようと単純に思ってこなかっただけだ」と同氏は話す。

By Andy Pasztor