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町のパン工房“定年”迎え幕 思い出の味、30日まで 横浜

6/23(金) 22:52配信

カナロコ by 神奈川新聞

 創業69年の横浜市中区山元町のパン・洋菓子店「マルイベーカリー・ボヌール」が今月末に閉店する。親子、兄弟で支え合い、地元に愛された町の店だった。

 1948年創業。当時は客から配給された小麦粉を預かって窯でパンを焼き、加工賃をもらっていたという。親子2代にわたり、誕生日ケーキを注文する客もいる。30歳で両親から店を引き継いだ2代目店主の井上龍太郎さん(65)は「うちのケーキでなければと言ってくれる。本当にありがたいこと」と話す。

 龍太郎さんがケーキや焼き菓子などを、弟の健二郎さん(63)がパン製造を担当した。主に二人三脚で店を支えてきたが、健二郎さんが先に引退。「店の経営と、地元高齢者の思いに応えるためにもパンは欠かせない」と龍太郎さん。還暦を過ぎていたがパン作りに挑戦する決意をし、弟からレシピを引き継いだ。

 一時は客足が遠のいたが、「客の助言も受け、改良を重ねた。手探りの中だったが、毎日が新鮮で充実していた」。10種類ほどだったパン商品は30種類に。「洋菓子作りのノウハウを生かしたマフィンなどが好評」。新たなファンも増えた。

 昨年末には、地元の小学生が地域学習で店を訪問。チョコチップ入りのマフィン、焼きそばパンといった児童考案の商品を作った。「子どもたちの思い出づくりに役立てればと思った。パンの人気は予想以上だった」。商品が目立つようにと児童が飾り付けに訪れ、家族連れも多くなった。

 閉店の理由は窯が間もなく寿命を迎えることに加え、定年は65歳と決めていたから。「仕事の面白さを最後に味わえた。夢のような幸せな時間」と、しみじみと語る。

 営業は30日まで。午前9時~午後6時。水、日曜休み。問い合わせは、同店電話045(641)4521。