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満島ひかり、齋藤飛鳥(乃木坂46)、やくしまるえつこ…etc.個性豊かなボーカリストが紡ぐ『何度でも新しく生まれる』解説【インタビュー後編】

6/24(土) 12:08配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

大沢伸一のプロジェクト、MONDO GROSSOが14年ぶりのアルバム『何度でも新しく生まれる』リリース記念のロングインタビュー。前編では、MONDO GROSSOが14年という時を経て、動き出すまでの歩みを語ってもらったが、後編では本作『何度でも新しく生まれる』収録楽曲たちを解説していく。

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■01. TIME [Vocal:bird]

── 1曲目、盟友ともいえるbirdさんをゲストに迎えられています。歌詞で“何度でも新しく生まれる”というフレーズが印象的でした。

大沢伸一 アルバムタイトル『何度でも新しく生まれる』は、birdが書いた「TIME」の歌詞からとったんですよ。

── このシンプルなワードや歌詞に救われる人が多いんじゃないかなと思いました。

大沢 彼女にこの曲を投げてみて、どう返ってくるかが楽しみだったんですよ。結果、想像を超えていて驚かされましたね。時流の流れだとかいろんなものを超えて、音楽の存在感そのものに帰結しているんですね。

そもそも、難しい曲じゃないですか? テンポが途中で変わったりだとか。それを、時間という概念に置き換えて歌詞に昇華させているところが天才的だなと思いました。

── 音楽そのものを歌っている歌詞。鳥肌が立ちますね。リズムが変わるフレーズも鳥肌ものでした。

大沢 これも不思議なもので、実はこのアルバムのために書いた曲ではなかったんだけど、いろんな経緯があって残していた曲なんです。リズムが変わるところは、すごいアンチな発想なんですよ。EDMとかで、だんだんリズムが盛り上がっていくビルドアップする手法ってあるじゃないですか? いちばんクライマックスで、逆をやってやろうと思ったんですよ。

── ひねくれていますね(笑)。

大沢 テンポ下げちゃって、最後サビに来るところでドーンと重い感じにしようと作ったんです。良いでしょ?

■02. 春はトワに目覚める (Version2) [Vocal:UA]

── 2曲目、かつてタッグを組まれヒット曲を生み出してきたUAさんが参加という。歌声とサウンドが溶け合う感じが最高でした。

大沢 これはある意味いちばん「TIME」と遠い曲ですよね。音像もそうですし。アルバムの振れ幅を最初にみせようと思いました。本来はバージョン1があって、言葉でいうとオルタナ的なサウンドだったんですね。もっと間引かれた、骨太な。

でも、バージョン2はテクノになっているんです。ディープハウスをニーナ・シモンでやったみたいな。最終的にはバージョン1を収録予定だったんですけど、アルバム完成前の最後の2週間くらいで変えちゃったんです。寸前までバージョン1でした。

でも、何が正解とかないですからね。バージョン1はiTunes/AppleMusicアルバムのボーナストラックとして聴けるので、アルバムの中で曲を入れ替えて聴き比べてみてください。それはそれで、なかなか良い感じに聴こえると思いますよ。

── UAさんはいかがでした?

大沢 久しぶりでしたよね。僕の思っていることと同じことを考える人がいるんだなって印象でした。今回はあえて肩の力の抜けた歌い方ですよね。濃縮されたパワーというよりも、振り幅の自由さであったり、芳醇さが伝わる方が今の気分なんです。

近いようなことを彼女も話していて。あまりたくさんの音を重ねたり、たくさんの声を重ねることもしなかったんですけど、それが彼女のモードと重なった瞬間ですね。ミニマル的なディープハウス、テクノハウスというアプローチで共存できているんじゃないかと思います。

■03. ラビリンス [Vocal:満島ひかり]

── 現在は女優として大活躍の満島ひかりさんの参加がニュースで盛り上がりました。

大沢 「ラビリンス」が出来上がる前に、チームから“満島ひかりさんは?”と提案があって。当然、すごい人だっていうことは知っていたのですか、改めて作品も観させていただいて。すんなりとそこは通りましたね。

── 時間軸が折り重なっていく、突き抜けすぎることない儚げなバランス感が絶妙なナンバーですよね。

大沢 この曲のメロディは、それこそスタッフとのミーティングでご飯食べているときに思いついて、iPhoneでボイスメモで残したんですよ。この曲ってメロディはひとつだけなんです。

ほとんどの人がこれに言及していただけないんです。ブリッジでちょっと音階変わるんですけど、基本的にこのメロディだけ。

── ループですよね。まさに「ラビリンス」感。

大沢 金太郎飴みたいなものなんですけど。僕はそういうミニマルというか反復して繰り返して、世界が変わっていくというのが好きで。ほとんどの地球の事柄ってどんなサイクルであれループしているじゃないですか? 地球自体が回っていますからね。回りながら生まれて、死んでいくじゃないですか? そういうものと音楽ってリンクしていると思っていて。ぐるぐる廻りながら、どっかに進んでいるみたいなことが大好きなんですよ。

── ダンスミュージックの本質ですね。

大沢 なんかそういう象徴的な曲をようやく日本語で作れたかな。生活的にも、基本的にはずっと同じことをしているのが好きなんですよ。毎日同じところで、同じメニューを頼むのが全然苦ではなかったりね。

■04. 迷子のアストゥルナウタ [Vocal:INO hidefumi]

── 4曲目、不思議なニューウェーヴ感あるナンバーで。

大沢 3年ぐらい前かな、Kindnessとコラボしようっていう話があって。ふたつくらい作ったスケッチのうちのひとつですね。INOさんの声が良いですよね。きっかけは(藤原)ヒロシくんのライブでご一緒させてもらって、お願いさせてもらいました。

── 歌詞は元THE BOOMの宮沢和史さんなんですね。世界観により深みが出る日本語詞で。

大沢 以前、birdでもお願いしたことがあって。今回もお会いはできてはないんですけど、丁寧にやりとりさせていただきました。

■05. 惑星タントラ [Vocal:齋藤飛鳥(乃木坂 46)]

── 5曲目、楽曲のクールな世界観に、乃木坂46の齋藤飛鳥さんが参加という意外性あるコラボレーションで。

大沢 昔からの知人経由で面白い子がいると紹介してもらいました。曲の世界観そのままに、宇宙人みたいな不思議な雰囲気を持った女の子で面白かったですね。

── 声、すごくハマりましたね。しかもこれは、作詞はTica・α、いわゆる、やくしまるえつこさんなんですよね。

大沢 そうなんですよ。たたき台となる曲があったんですけど放置していて。すごくアッパーな曲だったんです。でも、話を聞いていると彼女は文学少女だそうで、アイドルの中でもクールな印象を受けたので、どんどん音を間引いていって、曲自体のムードを変えたんです。色で言うと、オレンジからブルーに変わったくらいテンションが変わりましたね。

■06. SOLITARY [Vocal:大和田 慧]

── 6曲目、僕は知らなかったのですが女性シンガーソングライターの方の参加で。

大沢 彼女は複数の人から勧められていたんですね。目的もないままに、デモテープや仮歌から手伝ってもらって。実は、ほとんどの曲の仮歌を歌ってもらっているんです。なので、1曲はオリジナルとして一緒に作りたいねと始めたんですけど、めちゃめちゃ暗い曲になってしまって。どうまとめていこうと思いつつも、最後のほうでアレンジを変えて質感が劇的に変わって良くなった曲ですね。

── 音がめちゃくちゃ良いですよね。アブストラクトなエディット感もあり、自由度が高い曲だなって。

大沢 すごい変なことやってるんですよ。メインで刻んでいるキーボードの音があるじゃないですか? レゲエっぽい感じで。あれって実はドラムのブレイクビーツなんです。ブレイクビーツを切ってレゲエの裏打ちのコードで音源化して。そこに、普通は人の声で入れるところをドラムの音で音階を与えているんですね。

── オリジナリティ高い深遠な世界観でした。

大沢 すごく複雑なことをやりました。それくらい苦労して何かをやると独特な音が生まれますよね。実験の賜物でしたが、結果オーライとなりました。

■07. ERASER [Vocal:二神アンヌ]

── 7曲目、こちらはバンド、touch my secretのボーカリスト・二神アンヌさん参加で、大沢さんのバンドAMPSとしてライブでも耳にしたことのあるナンバーですね。アレンジは大きく変わりましたが。

大沢 彼女の持っている声をMONDO GROSSOに引っ張ってきたいなって思っていたんです。バンドサウンドをもう少しMONDO GROSSOよりにするという。そんなに無茶はしてないんですけどね。わりと素直な作り方をしているというか。共通して言えるのが、僕がベースとギターを弾いているところです。

── 歌詞がエディット感あってユニークですが、曲の作り方は?

大沢 彼女の、歌詞の断片をもらって僕がぐちゃぐちゃに置き換えたんですよ。こことここって、丸付けてパズルのように引っ付けたりして。風変わりな歌詞でしょ? それに加筆したり、実験的な日本語歌詞となりました。結果、ものすごい現代感が生まれましたね。メロディ自体は、僕がベースで弾いたメロディを歌に作り変えました。

■08. SEE YOU AGAIN[Vocal:Kick a Show]

── 8曲目、シンガーのKick a Showをフックアップして、アルバムの中ではちょっと異彩なポップセンスを持つナンバー。

大沢 彼は、歌い始めて1年くらいしか経っていなくて。でも、世界をすでに持っているんですね。うん、これも不思議な曲で。最初、難航してたんですけど、ある小説の中の5章の中の1章の物語を彼に話をして、この世界を広げてほしいというお題を出したんですね。そこから出てきた歌詞がすごい好きですね。

── 日本語詞の魅力へコミットされている新しいMONDO GROSSOを感じました。2017年のセンスですよね。

大沢 それもあって「SEE YOU AGAIN」は「ERASER」と曲順で並べているんです。

■09. late night blue [Vocal:YUKA(moumoon)]

── 「late night blue」は、エレクトロニカ的なナンバーで、moumoonのYUKAさんが参加という。

大沢 実は違うプロジェクトで一緒にやろうとしていたものがお蔵入りになって。すごく良い曲でもったいないので復活しました。ほとんど変えてないんですね。

── YUKAさんの歌声の魅力を、どのように捉えられていますか?

大沢 あの子はアーティストですね。すごく感受性が強い。投げかけられたものに対する反応の仕方が繊細で、ある意味鋭利で。でも、なおかつ柔らかさがあるという。美しいものをきちんと表現できる人なんじゃないですかね。

■10. GOLD[Vocal:下重かおり]

── 10曲目、ボーカルの方のお名前が調べても出てこず。

大沢 今基本的に歌手活動してなくて主婦をされている方なんです。皆さんおっしゃるんですよ、誰ですかって。それこそ、Facebookで“トレイシー・ソーンみたいな声の歌手いません?”って書いたら、以前ご縁のあったエンジニアの方から、近いかもしれませんと紹介していただきました。

曲の順番的に言うと「ラビリンス」と同時期にできた曲なんです。日本語でやるとしたら思い描いていたのが、曲のタイプとしては違うんですけど、1999年に、ディープ・ディッシュとエブリシング・バット・ザ・ガールが一緒にやった「The Future of the Future (Stay Gold) (with Deep Dish)」という曲がイメージだったんです。タイトルに「GOLD」だけが残ってます(笑)。

── 楽曲的には、以前に大沢さんが代々木ヴィレッジでやられていた、クラシックなプロジェクトにも繋がりますよね。イントロのストリングスが印象的です。

大沢 そうですね、Thousand Tears Orchestraの皆さんにも参加してもらってます。

■11. 応答せよ[Vocal:やくしまるえつこ]

── 11曲目、やくしまるえつこさんが参加ということで。ウイスパーな声が特徴的なので、何をやってもあの人になりがちと思うんですけど。MONDO GROSSOとしての表現、どんなこだわりが?

大沢 最初、この曲には違うメロディが乗っていたんです。でも、彼女は彼女のスタイルが確立されているので、誰かのメロディを歌うっていうのが合わないんじゃないかなって。“一緒にスタジオ入りましょう”と話したら、あの曲の上であらたにできれば、ということでこんな形になりました。彼女が投げ返してきた歌に対して、僕が大幅にコードを増やしたところがあるんですね。だいぶ風変わりな、面白い曲になりましたね。

── やくしまるえつこさんとは何がきっかけで?

大沢 彼(隣で座っていたマネージャー)が提案してくれて。僕は、相対性理論自体もあまり知らなかったんです。でも、実際お会いして「惑星タントラ」では歌詞を書いていただき、歌入れにも付き合ってくれたんですね。そんな流れで今回、コラボレーションさせていただきました。素晴らしいクリエイターですよね。今後も、また何かご一緒できればと思っています。

INTERVIEW & TEXT BY ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

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【リリース情報】
2017.06.07 ON SALE
ALBUM『何度でも新しく生まれる』
cutting edge