ここから本文です

不機嫌なS・コネリーにボンドガールの自殺騒動…呪われた『007は二度死ぬ』公開50周年

6/24(土) 10:00配信

The Telegraph

【記者:Adam White】
 映画俳優が「撮影現場であやうく死にかけた」と語るときは大抵、少しばかりの誇張どころではなく、大ぼらを吹いていると考えていいだろう。「あの巨大なクマの死体のそばで寝たときは凍死寸前だった」「あの飛行機から振り落とされないように必死だった」──。

 しかし、1967年の公開から今月で50周年を迎えたボンド映画『007は二度死ぬ(You Only Live Twice)』の場合、撮影スタッフは文字通り「九死に一生を得た」。

 ロケ地を決めるために日本を訪れていたルイス・ギルバート(Lewis Gilbert)監督、プロデューサーのアルバート・ブロッコリ(Albert Broccoli)氏とハリー・サルツマン(Harry Saltzman)氏など多くのスタッフがロンドン(London)へ戻ろうとしていた日のことだ。日本を離れる直前、忍者の実演を見る機会があるとの連絡を受け、ぎりぎりで帰国便を変更。搭乗するはずだったボーイング911便は山に墜落して、乗員・乗客124人全員が犠牲になった。

 スタッフはすんでのところで死を免れたが、飛行機事故はそれから始まる悪夢のような撮影を暗示していたようだ。不機嫌な主演俳優からボンドガールの「自殺未遂」、カメラマンの足切断、異文化の摩擦まで、『007は二度死ぬ』の現場は災難続きだった。

不機嫌なショーン・コネリーと降ろされかけた浜美枝

 飛行機事故の影響は暗い影を落とし、主役のショーン・コネリー(Sean Connery)とブロッコリとの不和のせいで撮影現場には一層重苦しい雰囲気が漂っていた。ただでさえコネリーは、このシリーズ5作目への出演には不満を持っていた。これまで演じてきたジェームズ・ボンド(James Bond)という男に成長が見られず、つまらないキャラクターになっていると思っていたからだ。

 この頃までに国際的なスターになっていたコネリーは、過度な注目を浴びることにもいらついていた。日本のメディアに公衆トイレにまでカメラを持って追い掛けられたコネリーは激怒し、さらに、1人のストーカーに撮影中ずっと付きまとわれたこともいら立ちに輪をかけた。

 コネリーは出演料の低さについても声高に不満を漏らしていた。『二度死ぬ』のギャラは75万ドル(当時の為替レートで約2億7000万円)。それに加えて興行利益の25%を受け取る契約になっていた。コネリーは次のシリーズ6作目への出演条件として、100万ドル(当時の為替レートで約3億6000万円)、プラス興行総収入の1%を公に要求していた。だが制作会社のイオン・プロダクションズ(EON Productions)はこれを拒み、6作目『女王陛下の007(On Her Majesty’s Secret Service)』のボンド役はジョージ・レーゼンビー(George Lazenby)に。コネリーは1971年に7作目で復帰したが、その条件として自分が企画として温めていた映画2作品の制作費を出してもらった。

 制作陣はコネリーの問題に加え、ボンドガール2人のキャスティングにも苦労していた。映画の途中で殺害される日本人スパイのアキ役と、彼女の後任となるキャッシー鈴木役を誰にするか──。最終的に絞り込まれたのは、当時日本で注目されていた若手女優、浜美枝(Mie Hama)と若林映子(Akiko Wakabayashi)だった。数年前に日本国内でヒットした邦画『キングコング対ゴジラ(King Kong vs. Godzilla)』に出演していた2人だ。

 残念ながら2人とも英語が話せなかったため、制作陣はロンドンで半年間レッスンを受けさせたが、上達したのは若林だけだった。浜の英語力にいら立った監督のギルバートは、共演者の丹波哲郎(Tetsuro Tamba)に、彼女を降ろして他の女優を探すつもりだと打ち明けた。そして、その旨を、浜の友人でもある丹波の口から伝えてほしいと頼んだのだ。

 ギルバートはあるインタビューでこう明かしている。「丹波に頼んだ翌朝、『美枝の反応はどうだった?』と聞いた。すると丹波は言った。『美枝は、面目を失った、家族に合わせる顔がないから今夜ホテルの窓から飛び降りると言っていた』。『まさか』と言うと、丹波は『もちろん本当だ。彼女は100%本気だ。飛び降りるぞ』と言ったんだ」

「心底おびえたよ」と、ギルバートは続けている。「若い女性を死に追いやったなんて良心の呵責(かしゃく)に耐えられない。プロデューサーたちもそんな悲劇で注目を集める気はなかった。だから、丹波に彼女の降板はなしだと伝えてくれと言った」

 当初、浜がアキ役、若林がキャッシー鈴木役を演じる予定だったが、自殺騒動を受けたギルバートは2人の役を交代させた。キャッシー鈴木のせりふの量の方が断然少なかったからだ。

1/2ページ

最終更新:6/24(土) 10:00
The Telegraph