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販売経験者がフォステクスのお手頃スピーカーを徹底比較!・2

6/24(土) 11:31配信

Stereo Sound ONLINE

家電量販店やAV機器専門店の店舗スタッフとして長年働いてきたライター渡部法之さんが、イチ押しの製品を紹介。今回取り上げたのは、フォステクスのハイレゾ対応小型スピーカー3機種だ。ここではその2・試聴編をお届する。(Stereo Sound ONLINE編集部)



 それでは3モデルを比較試聴しよう。今回はデスクトップでの使用が前提なので、音質はもちろんサイズも重視したい。

 プリメインアンプは、P804-Sと同時発売の「AP20d」(1万4800円、税別)を用意した。幅108×高さ42mm×奥行138mmとCDケースを数枚重ねた程度のコンパクトボディにデジタルパワーアンプを搭載し、最大出力は20W×2(4Ω)。入力端子は背面のアナログ音声入力1系統(RCA)に加え、前面に3.5mmステレオミニを備える。

 なお、3.5mmステレオミニにDAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)などをつなぐと、こちらが優先して再生される。また、プリアウト端子も装備しているのでサブウーファーを追加した2.1chシステムにも発展可能となっている。

 今回はPCを主な再生機器とするため、同じくフォステクスの「PC100USB-HR」(9800円、税別)をUSB DAC兼プリアンプとして使用する。つまり、PC100USB-HRでD/A変換とボリュウム操作を行ない、AP20dをパワーアンプとして扱っている。そのため、AP20dのボリュウムは最大で固定した。

 PC100USB-HRの対応ハイレゾフォーマットは最大でPCM 96kHz/24bitまで。Windows、Macともに標準のUSBオーディオドライバーで動作する。また、USBバスパワー駆動なので電源ケーブルは不要。将来的に上位フォーマットに対応したDACへのシステムアップも検討しやすい構成とした。

 試聴はもっともリーズナブルなP802-Sから始めよう。今回はハイレゾの再現性を確かめるべく試聴曲を選んでいる。

 愛聴曲のメタリカ「The Unforgiven」(96kHz/24bit/FLAC)を再生したところ、予想を越える本格的な音が飛び出してきて、思わず姿勢を正してしまった。1万円(ペア、税別)という価格なので正直甘く見ていたのだが、空気の動きまで感じさせる情報量はハイレゾ対応を謳うだけの説得力がある。

 聴きはじめこそわずかに周波数レンジが狭めかと感じられたものの、しばらく聴いていると、むしろ密度の高いエネルギッシュな中音域に魅力を感じるようになった。

 同時にコンパクトなスピーカーにありがちな高域のやかましさがなく、絶妙にバランスが取れているのにも感心した。低音も健闘しており、この曲の肝といえるバスドラムの“ドン”というキックが力強く響く。

 ダイアナ・クラールのジャジーなカバー「Let's Face The Music And Dance」(96kHz/24bit/FLAC)では各楽器の成分がきちんと分離し、ピンポイントに定位したピアノ、ベース、ギター、ドラムの周りをストリングスが囲むという位置関係も正確に再現されていた。それらをバックに従えたヴォーカルの口の湿り具合まで感じとれる生々しさが、ハイレゾならではの魅力を伝えてくれる。

 キース・ジャレットのケルンコンサートから「Koln, January 24, 1975, Part I」(96kHz/24bit/FLAC)を聴いてみると、広大な空間にピアノが響き渡るスケールの大きな音に驚いた。ハイレゾの高い解像力により観客のかすかな息遣いまでもが聴きとれるほどで、ライヴ演奏の緊張感を高めてくれる。

 「この性能で充分だな~」と思いつつスピーカーをP803-Sに変更し、同じ条件で「The Unforgiven」を再生すると、雰囲気が一変して重厚感のある音になった。

 エンクロージャー容量が大きくなったことで低音の量感が増えたからだろう。バスドラムにもズシリとした重みが加わった。ヴォーカルはやや引っ込んで落ち着いた印象になるが、今回の目的である“ながら聴き”には悪くない特性だといえる。

 「Let's Face The Music And Dance」でもリズム隊のベースとドラムがボトムを支えるので演奏に安定感が生まれる。分離のよさはそのままに各楽器がヴォーカルと同等の存在感を放つ。気だるげな曲調との相性もかなり好印象。

 ピアノのみで演奏される「Koln, January 24, 1975, Part I」にはそれほど低音成分が入っていないにもかかわらず、肩の力が抜け表現力の幅が広がったような変化があった。演奏の起伏がより明確になり、音に感情がこめられて聴こえる。音がほぐれ、音像が心地よく空間に浮かび上がるハイレゾの美点もうまく再現していた。いっぽう、暗騒音は目立たなくなり、緊張感は薄くなる傾向だ。

 ここまで2モデルのパフォーマンスに好感を持ちつつ、満を持して最新かつ上位機のP804-Sで再生をスタート。「The Unforgiven」は一聴して音の粒立ちがよく、ギターにメタリックな煌びやかさ加わった。低域がさらに厚くなるのに安定志向へ偏らないのは、中高域とのバランスが良いからだろう。

 「Let's Face The Music And Dance」ではヴォーカルがバックの演奏よりグッと前に出て実在感が増す。一段とリアルになった楽器の音色を通じて演奏者の姿が見えてくるようだ。ブックシェルフ型としては限界と思えるほどディープな低音は、タイトさを維持しつつ正確にリズムを刻む。

 「Koln, January 24, 1975, Part I」の再生は質感表現に磨きがかかっていて圧巻だった。観客が息を潜めるほど張り詰めた空間に、消え入るピアノの余韻が哀愁を漂わせる。物語を紡ぐように展開されるドラマティックで熱い演奏は、感動的ですらあった。

 P803-Sの癒し系サウンドにすっかり魅了されていたら、P804-Sは、P802-S/P803-S両モデルのいいとこ取りといえる絶妙な仕上げで驚かせてくれた。

 こうして直接3モデルを比較すると、サイズや構造による音の違いが実感できて興味深かった。同時に、今回のシステムが想像していたものより遥か上のクォリティであることが分かったのも収穫だ。


【マストバイ度】
★★★★★(P804-S)
※これまでは、クォリティ/使いやすさ/コストパフォーマンスの各視点で5つ星評価していたのを、今回からズバリ「マストバイ度」に統一することにする

 3モデルとも音のキャラクターに明確な違いがあり、それぞれに魅力があるのでどれか1台を選ぶのは迷った! が、やはりマストバイはP804-Sだ。

 「価格が一番高いのだからあたりまえだろう」と考えるのは早計というもの。高価なパーツを使い、大型化すれば音が良くなるというほど単純でないのがオーディオの難しさと奥深さ、そして楽しさだからである。重要なことは素材やパーツの良さをいかに引き出し、うまく組み合わせるか、ではないだろうか。

 P804-Sを聴き、P802-Sの元気の良さとP803-Sの落ち着きが高次元で融合していることに感心した。その高い実力はデスクトップでBGMの再生用として気軽に使うにはもったいない一級品レベル。1万9800円(ペア、税別)でこの音を出されたら、買わない理由を探す方が難しくなってしまう。恐れ入った。


<SPECIFICATIONS>
FOSTEX P802-S 1万円(ペア、税別)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:20mmドーム型トゥイーター、80mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:4.4kHz
●インピーダンス:8Ω
●出力音圧レベル:80dB/W/m
●再生周波数帯域:150Hz~40kHz
●寸法/質量:W100×H195×D120mm/1.1kg


<SPECIFICATIONS>
FOSTEX P803-S 1万5800円(ペア、税別)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:20mmドーム型トゥイーター、80mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:4.4kHz
●インピーダンス:8Ω
●出力音圧レベル:80dB/W/m
●再生周波数帯域:70Hz~40kHz
●寸法/質量:W140×H243×D172mm/1.84kg

<SPECIFICATIONS>
FOSTEX P804-S 1万9800円(ペア、税別)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:20mmドーム型トゥイーター、100mmコーン型ウーファー
●クロスオーバー周波数:2.8kHz
●インピーダンス:4Ω
●出力音圧レベル:80dB/W/m
●再生周波数帯域:60Hz~40kHz
●寸法/質量:W140×H264×D172mm/2.33kg


【渡部 法之(わたなべ のりゆき)】

家電量販店のクロモノ担当からオーディオ&ビジュアルの世界に足を踏み入れ、AV機器専門店の店舗スタッフとして10年以上在籍した。イベントの企画/運営や数多くのホームシアター導入相談に携わるなかで知識や経験を積み重ね、2000年以降のAV機器には誰よりも多く接していると自負している。

Stereo Sound ONLINE / 渡部法之

最終更新:6/24(土) 11:31
Stereo Sound ONLINE